新妻のごあいさつ
第四期:巡る季節に終わりが見えて
今治産タオルみたいなあれ!
あ、あの…!こ、こんにちは!
穀潰しどもの寄合所クランの扉をコンコン、とノックして。
そこそこの荷物をもっているようで、片付けの進んでいるクランにそれを持ち込むのは申し訳ないと思いながら
え、えっとね、フェリクス、クレメンティ、神父様、け、結婚式、来てくれて本当にありがとう。
よ、ようやくね、新居も落ち着いたから、お、お礼の挨拶に来たの。
そ、それでね、お祝い返し、持ってきたんだ。
く、クラン解散しちゃうって聞いたから、そ、それぞれがもっていけるもの、持ってきたの。
そういって荷物から取り出したのはイズレーン産高級タオルだ
そ、その、6人分、もってきたよ。
て、テレジアも、ジェーンも、さ、サムもね、よければもらって。
こ、これは、日頃の感謝の気持ちでも、あるから。
…か、解散しちゃっても、あ、あえるよね!
よ、よかったら、新居にも遊びに来てね。わ、私いっぱいもてなすよ!
そ、それじゃあ…、えと…また、ね!
彼女はお礼だけいうとその場を後にした。
こんにちは、アノチェセルさん。
新しい生活には慣れました?素敵な式に参加させてくださってありがとう。
お祝い返しまで頂いて…皆さん喜ぶわ。しっかり渡しておきますよ。
あら、遊びに行ったりして新婚さんのお邪魔にはなりませんか?
いいというのならお言葉に甘えようかしら。今度はゆっくり惚気話を聞かせてほしいわあ。
時間なら今はいっぱいありますので、頃合いを見て伺います。
ああそうそう、
急に解散だなんてお知らせしてしまってすみませんね。びっくりされたでしょう?
もちろん冒険者をやめてもまた逢えますし、ずっとわたしたちお友達よ。
うふふ、それではまた、ね。
クランの人数分のタオルを抱えたまま、去っていく背中を見送った
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クラン ジョブチェンジャーズの扉をたたく。
こ、こんにちは!えっと、えっと、お式のときは、きてくれて本当にありがとう!
よ、ようやくね、新居落ち着いたんだ…!
だ、だから、お礼の挨拶に来たの。
こ、これね、イズレーンのいい綿花でつくったタオル…!
よ、よかったらつかって。わ、私も自分用に買ったけど、す、すごくよかったよ!
あ、あとね、アルバから伝言だよ。
「酔ってオルゴーに絡んでごめん」だって。
わ、私もアルバがあんなにお酒弱いの、初めて知ったよ。ふ、双子でも違う事、あんなところで気付いちゃって。えへへ…。
ほ、他にもお礼まわりしないとだから、も、もういくけど…よ、よかったら、新居に遊びに来てね。そ、それじゃあ!
そういって地図を渡して、手短に挨拶をすると去っていった。
やあ、アノチェセル!こちらこそ、心に残る良い式に参加させて貰って感謝してるんだよ。
…目を閉じると想い出すなあ…晴れ姿の2人と素晴らしい歌声を…、あ、また泣きそう…。
そうか、孤児院を出てテルプとの暮らしに移ったんだね。アルバは寂しがっていることだろうなあ…と苦笑しつつ。
ああ、あの時のアルバはもの凄く酔っ払っていたっけ。…酒の弱さと酒癖については俺も同じようなものだから、全く気にしてはいないさ。
タオルもありがとう!ああ…イズレーンの綿花のタオル。評判がいいって聞いていたんだ。
いいタオルってなかなか自分では買わないんだよなあ…ふわふわ♪
お邪魔じゃなければ是非新居に遊びに行かせてもらうよ、奥さん。地図を受け取って嬉しそうに見送った
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ここはクラン一突き隊の拠点。
こ、こんにちは…!
ら、ライノも、カチュアも、鈴木、さんも元気?
えと、えとね、お式、みんな来てくれてありがとう…!
今日はね、お祝いのお礼に来たの。
い、イズレーンのいい綿花で作ったタオルだよ。
つ、使い心地は私が保証するよ!
よ、よかったら、し、新居にも遊びに来てね。
よ、ようやく落ち着いたんだ。テルプも喜んでくれると思う。
えへへ、す、鈴木、さんお手伝いしてくれるんだっけ…。
お願い、しちゃおうかなあ。いつか。
今は、全部、なんでも楽しいから、大丈夫だけど…。
えと、短い挨拶でごめんね、他も回ってるから、私、そろそろいくね!
そういって去っていった。
よく来たな、アノチェセル。
こっちは全員変わりないさ、…たぶん。
そっちこそ大丈夫か?生活が変わって苦労してないか?
…まぁ、言うほど心配はしてないが。
お祝い返し、ありがとうな。大事に使わせていただこう。
鈴木が必要ならいつでも頼ってやってくれ。
ちょっと騒がしいのがキズだが、なんでもやるぞ、あれは。そんでなんでもできるからな…。
俺も近くに行ったら寄るとするかな……。
おうおう気をつけろよ、お嬢さん。
なんて早々と去っていく背に声をかけて
…じゃないか。
とぽつり
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ミセイコジンの民草の拠点へと。
こ、こんにちは!
あ、あのね、おばさんからきいたよ、孤児院に来たって。
わ、私に用があったみたいだったって、いってたから、えと、えと、私から来ちゃった。
え、えと…式、きてくれて本当にありがとう。
お花…届いてるかなあ…。
えっとね!挨拶の品、もってきたの!よければもらって。
イズレーン産の高級タオルをそっと差し出して。
…いつか、テルプと一緒に、里にいけるといいな。
ううん!なんでも!
えと、これからもよろしくね!
そういうと挨拶だけして去っていった。
あら。アノチェセルさんでしたっけ、いらっしゃーい。
様子見に行っただけなんで用というほどのものは無かったんですけど、
わざわざ来て頂いてどうもすみませんねー。
ふーん、あのワタシが征伐されかけたおっかないシスターって
おばさんって歳だったんですか……おっと、
女性の年齢には触れるべきじゃないですよねー、この話題はここまでで。
まあ、ご挨拶の品ですか? これはまたありがとうございます。
今のところワタシら飯食うだけ食ったりお花やタオルを頂いたりしてるだけで
何もお返しできてない感すごいですね、ははは。
お花は押し花にした後ガラス張りのちっちゃい額縁に飾らせて貰ってます。
皆気に入ってるみたいですよ。
今は皆息を潜めてますけど、いずれ機会があれば
こちらでも歓待させて頂きたいですねー。視覚的なあれに精神が持てば。
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と、広場からある程度の距離を置いた場所に並んでいる質素なテント群を見やった。
集落は静まり返っているが、テントの中から時折視線を感じる気もする。
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また新居の方にもお邪魔させて貰う気満々ですんで、
その時はどうぞよろしくお願いしますねー。
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こちらはクラン 翡翠のあずまや の拠点。
こ、こんにちは…!
えと、えと、お式、みんな来てくれてありがとう…!
と、特にね!ネフライトの、オルガン、わ、私今でも目を閉じると、お、思い出せるよ…!
…あ!そ、そうだった、用件、忘れちゃう所だった!えへへ…。
し、新居落ち着いたから、お礼の挨拶に回ってるの。
こ、これよかったらどうぞ。
イズレーン産高級タオルを3枚、渡す。
わ、私結婚してもまだ、し、暫くは冒険してるから、ま、また一緒に行こうね!
あ、あとね、今度は、私と、テルプが伴奏するから…家に来て歌ってほしいな。
えへへ…!そ、それじゃあ…!
そういうと去っていった。
続けて、すぐに奥からぱたぱたと足音をさせながら
わあ! アノチェセルさん、いらっしゃい!
お師匠も居ますから、ちょっと待ってくださいね。
嬉しそうにそう言うと、上階へと弾んだ声で呼びかける
お師匠! 孤児院のアノチェセルさんがいらっしゃいましたよ。
玄関の賑やかさがもう伝わっていた様子で、間を置かずに階段をおりてくる
やあ、これはアノチェセルさん! ようこそいらっしゃいました。
こちらこそ、素晴らしい結婚式に祝福を差し上げる事が出来まして、感謝していますよ。
おや! これは随分と結構な品を……どうもありがとうございます。
受け取った際の手触りでその質の良さを感じ取って、笑顔を返しつつ
……アノチェセルさん、もうご立派に新しいご家庭の奥様ぶりですねえ。
お幸せそうなお顔が改めてこうして拝見出来て、とても嬉しいですよ。
歌って欲しい、と新居へと招かれて
おや、まだご結婚されて間もないというのに……ふふっ、お邪魔ではないのですか?
気遣い半分、揶揄い半分で悪戯っぽく声を立てて笑って
ですが、そうですね。お式でテルプさんにも歌をお誘い頂きました事ですし。
吟遊詩人さんと共に歌わせて頂く機会というのもなかなか無い事ですから、お邪魔でなければ今度ぜひお伺いさせて頂きますよ。
ああ、もうお帰りですか。そうですね、お忙しい所をお引き止めする訳にもゆきません。
どうぞ、帰り道はお気をつけてくださいね、奥様!
見送る言葉の最後をちょっと強調して、笑顔で手を振った
イラスト:かげつき
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失礼、赤坂君はいるかな…?
ああ、そんな畏まらないでほしい。
本来ならアノチェセルが直接ここに行く予定だったのを、私が礼を言いたくて代わりに来たんだ。
アノチェセルの式の進行、ほとんど君がしてくれていたこと、本当にありがとう。
これは式のお礼として参列者みなに配っているタオルだそうだ。
アノチェセルが直接選んできているから、きっと間違いないだろう。
箱の感じからして高級感が伝わってくる。イズレーン産のタオルだ。
このクランにはもう一人いたと…そう、天野君だったかな? 彼にも渡しておいてもらえると嬉しい。
それからこれは赤坂君、君に。
アルバから君の好みを聞いている。
妻も珈琲好きなんだ。…ふふ、珈琲豆の山に顔を埋めていたいとか、若いころは言っていたな…。
クスリ、思い出して微笑む。
珈琲豆の入った袋のラベルに「ゴッドマウンテン」などと書かれている。たぶん高級品だ。
それでは、あまり長居しても迷惑なってしまうな…。
どうか、アルバとアノチェセルをこれからもよろしく頼む。
では、な…。
は、はぅ!
思ってもみない人物の来訪に、飛び上がるほどに驚いて。
あ、いや、その、いえ、式の方は、僕が何かあのふたりと、アルバさんのお手伝いが出来ればって思って、好きでした事で、…むしろ拙い進行でご迷惑をおかけしたのではないかと、その点が心配であったのですけれど、その、……どうも、少しでも、お役に立てたのなら、……大変、嬉しいです。あ、あぁ、タオル、とても助かります。
恥ずかしそうにうつむいて、ぺこりぺこりと何度も頭を下げつつ、タオルと……、珈琲豆を受け取って。
わ! あ、ありがとうございます!
これ、飲んでみたかったやつですよ! わぁ、ありがとうございます。
テンションが高い。
あー、珈琲豆に埋まりたい、それすごく分かります。
僕、お墓に入ることになったら、
土のかわりに珈琲豆で埋めて欲しいなってずっと思ってて…。
あぁいえすみません縁起でもないですよね。…でもきっと幸せでしょうね…。
ふふ、と、よくわからない想像に頬を緩めている。
あ、あの、天野の方はちょっと最近ばたばたしているみたいで、すみません。
こちら、しっかり渡しておきますね。
受け取ったタオルをしっかりとテーブルに置いて。
よろしく頼む、の言葉に、苦笑する。
……残念ながら、非常に頼りない僕ですが、…僕に出来る限り。
おふたりのピンチには、駆けつけたいと思ってます。
そうしたいと、思わせる、……素敵な人ですね。ふたりとも。
微笑みながら、その瞳はしっかりとした決意に満ちて。
遠くまで、わざわざありがとうございます! お気をつけて。
大きく手を振って見送った。