黒猫ときんぎょ
第四期:祭り囃子が聞こえる
天野とアズヴィス、ふたりでお祭りを楽しみます。
クレープ屋台に漂う甘い香り。
大小、黒い着物の影がふたつ。
天野が、アズヴィスさんと共にやってきた。
おお、孤児院の皆か。精が出るな。
天野、お疲れ様、大変だったろ、浴衣の着付け。
俺達は一応イズレーンの知りあいから教わったし、おばさんも着付けが出来るから世話にはならなかったけど。
ちょっと寄ってみたかったよな?アノチェ?
横でうんうん頷いているアノチェがいる。
着付けの方は、試着するだけでも構わんから、是非来てくれたまえよ? いつもと違う色や雰囲気が、楽しめるやもしれぬよ。
クレープが作られていく行程を興味深げに眺めている。
ほぉ、こんなに薄く焼くのか。面白いな。
学生時代、女子がよく食っていたのを知っているぞ。
あず殿のお勧めである、つな? とやらを、いただきたい。
メニューを見ながら、内容を確認している。
ほう、甘味では無いのだな。これは食事にもってこいである。
お、レタスツナマヨチーズか。 いいのか?確かイズレーン風の方が好みなんじゃないの? あ、なるほどな、食事代わりか。口直しに抹茶アイスあずき黒蜜もってくか? そんなことを言いながら珍しくアルバが普通メニューを作っている
れたすつなまよね 正式名称は噛みそうだな。間違ってるよ!
うむ、あず殿のお勧めなのだよ。これは是非食わねばならないと思ってな。
自分ハ………コレ
(再度レタスツナマヨチーズか新メニューにも迷いつつも、指差したのは……)
(ダイスころころランダム注文)
くれーぷ、女子 ノ 食ベ、物……?(初耳のそれに、困惑した様子で天野の方を見たりして)
おらんぜっとちょこれえと品物掛け……
ちょこれえとは知ってる! みたいな顔をしている。
くれーぷ、……あれは女子の領域であるぞ。
くれーぷだけでは無い。ぱんけえき、ちょこれえとふぉんづ、すいーつ食べ放題…、あれらは男子の踏み入ることの許されぬ世界であった。女子高生特有の波動、声、目線。全てが男子が其処に存在する事を否定する物であった。…ように感じる。(きのせいだよ…!)
ああ、いや、これは己(おれ)の国の話であるから、あまり気にするな。
ここでは堂々としていられるから、非常に良いな。
慣れぬ洋食であるが…あず殿のお勧めならば間違いないだろう。
お恥ずかしい話、この年になってまだまだ苦手な食い物が多くてな。
万一、食うのに抵抗があったら、少し手伝っていただけるか。
と、アズヴィスさんの方を向いて。
あず殿は、何か苦手なものはあるか?
苦手だと指さされたメニューを見ながら。 ですそーす。あれはおそらく大抵の人間が苦手だぞ。
己(おれ)の場合、苦手なものよりも、食えるものを言ったほうが早いかもしれぬな。
和食と、中華…イズレーン方面の食い物は好きなのだが、こちらのはほとんど苦手なのだ。
つな も、食えるが、握り飯に入っておるのは苦手だ。
ぱん は、克服して食えるようになったぞ。昔はあれら全て駄目だった。
偏食、というより、食わず嫌いであったから、いざ思い切ってみれば美味いと思うものも多い。
おそらく一生苦手であろう、と思っているのは はんばーがーだ…。
あれだけは、どうも、抵抗があってな。 すごく わがままだぞ!
和食、中華…(こくこく、頷き聞いて)
おにぎり つな、苦手…ナン ダ…(入れなくて良かった、と思いながら)
食ワズ、嫌イ… 分カル、大丈夫、天野ダケ、違ウ (コルトの料理を思い浮かべて遠い目)
ハンバーガー、魚 ふらい ノ 美味シイ…思ウ 抵抗、何故?
パン、克服 シタ ノニ?
(何かトラウマでもあるのだろうか…と思いつつ尋ねてみる)
……はんばーがーには、使ってはいけない肉が使ってあると聞いた。
※大昔の都市伝説を信じている様だ。
以前いた世界では、いつまでも腐らずどこからともなく湧いて出てくる。
あれは次元の違う食べ物であるに違いないのだ。(謎発言)
……いやまぁ、あまり気にするな。
使ってはいけない。…そう、使ってはいけない。こくりと頷き返す。ふたり、都市伝説で真面目な顔で頷き合っている姿は周囲から見てどうなのか。
命の危機に瀕すれば…、勿論何だって食える。ぱんもそれで克服した。食い物のない場所ではあれらは確かにご馳走ではあった。
しかしな、あるば殿。仮に飢えた時に革靴を煮て食ったとして。それが苦手でなくなる訳でではあるまい? 己(おれ)にとって洋食とはその様な位置づけの物なのだ。
熱く語る。
…革靴…。
昔昔の、ひもじい頃を思い出して。
確かにな!!
納得しおった!!
でも革靴と洋食が同義か…。ちょっと洋食屋可哀想だな…。
そんな天野の口に合うかわかんねーけど…どうかな。
アノチェがクレープを作ったタイミングでアルバも天野の注文を作り終えて。二人に渡す
ほい、できたぜ。お待たせさん!
うむ。いただこう。
受け取ったレタスツナマヨチーズにかじりつく。もぐもぐ。
……おお、ほう、うむ、なかなか、良いのではないか? (もぐもぐ)
うん、美味い。流石、あず殿の見立て。あるば殿も料理が上手いのだな。
洋食が苦手という天野が普通に食べてくれているのを嬉しそうに
美味いか?よかった!
俺か?まあ、そこそこだよ、ふつーふつー。
包丁を持つだけで問題児扱いの天野の前では誰もが料理上手になるのではないかと思いつつ。
いつまでもアノチェに甘えてられないからな。
何というかな、身体が、慣れ親しんだ和食、という安心感を求めるのだ。
馴染みの無いものに対しては、それだけで体力を使うというか…。……すとれす?
だからな、信頼出来る者が勧めてくれるものは、それだけで、苦手意識は少なくなるのだが。
要は気が小さいのだ。と言って笑う。
そうか。最近の男子は料理も出来ねばならぬ、そんな時代になって来ておるのだな。
時の流れるのは本当に、早いものだ…。
あー、なるほどなー。
だったらここのクレープ、闇以外おススメするよ。
なんせアノチェとローラが主に作ってるからな。
兄の俺が言うのもなんだけど妹の作ったもので信頼できないものはない!
何度目だよお前のシスコン発言、という突込みがどこからか聞こえるかもしれない。
時代も何も孤児院のみんなは上手い下手あっても大抵家事はできるぞ。そう教えられたからな。
…なんかジジくさいな、天野。
俺と大して年変わんないくせに…。
(美味しそうに つなまよねを食べる天野を見て。嬉しそうに)
(受け取ったオランジェットチョコレート。食べにくいので、お面を取る。ひとつ、つまんで食べ。食べたことない味だったようだ)
不思議 味…デモ、おれんじ ちょこれーと…美味シイ
お面を取ったアズさんを見て
お、いつもと雰囲気が違うな。似合っておる。
…なるほどおらんぜっとは、おれんじか。 また知ってるぞ! っていう顔。
おれんじとちょこれーと。
黒に橙が映えて、何だか我々みたいであるな。
ん? 己(おれ)が ぽえまーか。吟遊詩人の素質があるやもしれぬな。 ただし歌は下手だ。やめておこう!
……ふむ、ひとくち、いただいてみようか。明らかに警戒しつつ、だが。
つなの方も、よかったらひとくち、交換しよう。
ひょいとクレープを差し出して。
大人味、って感じだろ?
チョコレートもちょっとビターなんだぜ。
生クリーム足しても美味いぞ?
どうする?
にゅる、と絞り袋を取り出して
ご要望なら「オランジェットチョコ生クリーム」になるぞ!
美味シク、ナル? 生くりーむ …!(足して欲しそうな目でアルバにクレープを向けて)
(そして…オランジェットチョコ生クリームになった! それを天野に味見どうぞと、きらきらした目で差し出す)
差し出されたオランジェットチョコ生クリーム! 表情に、警戒心が増す。
しかしこの期待の眼差しを無下に退ける事の出来る大人が居ようか、いや居まい(反語)
おずおずとすみっこをかじってみる。
……。(もぐもぐ) 目を閉じてしばらく味わって。
甘い。小学生並み感想か。
……己(おれ)は良いから、あず殿がたくさん食べるといい。有難うな。
! (警戒心の増した表情に、甘いのが苦手という事を漸く察し、でも同じ釜?のクレープを食べれたのが、嬉しい、気持ちが尻尾をゆらりんと)
了解、自分 沢山 食ベル
(生クリームが大人な味を和らげて。 それを美味しいと思う自分はまだ子供なのかもしれない…と複雑に思いつつも、美味しく頂いた)
アルバと一緒ににこにこと、アズさんがクレープを頬張る姿を眺めている。 食い終わったら、金魚すくいに参ろうか。
(こくりと頷いて、残りのクレープを最後までもぐもぐと。)
完了 …金魚 参ル
(アルバ達の方を向いて)くれーぷ 生くりーむ 美味シ カッタ トテモ、アリガトウ
(再度、天野と手を繋ぎ直して先導しようとしつつ。 出店を後にした)
-------------
小さな手に引かれてやってきたのは、金魚以外にも色々すくえる、楽しげなお店。 エビや亀、スーパーボールなど、色とりどりの水槽が並んでいた。 その中のひとつ、青く大きな水槽に、 赤や黒の金魚たちが、尻尾をゆらゆらさせながら泳いでいる。
(天野と連れ立ってやって来て、金魚がゆらゆら泳ぐ いけすをじっと眺めた後、店員にガッツを支払い)
金魚 1回 ズツ
(ポイを持ち、天野の方を向き)
天野、勝負 …! 金魚 沢山 獲レタ、方 勝チ
(アズは 天野 に 勝負を しかけた!)
ほほう、勝負、とな。……後悔、するなよ。闘争本能に火が付いたのか、不敵に笑う。
(◆金魚を 2匹すくった! ポイの耐久度が 残り2になった!)
…… ナカナカ 強イ …金魚
(続けて5回すくいにかかる!今度は鼠を捕らえる猫の如く、素早く!)
(ダイスころころ)
(金魚を 1匹すくった! が、途中でポイの耐久度が0になった…)
……3匹…
(我がポイの耐久度をすり減らしのうのうと泳いでいる 太めのでめきんを やや恨みがましそうな目で見て)
よし、己(おれ)の番だ。
店員さんからポイを受け取ると、大きく掲げるように構えて……!
不器用そうにおずおずと。そうっと。すくいにかかる。
■そうっと、5回 (ダイスころころ)
(◆金魚を 1匹すくった! ポイの耐久度が 残り1になった!)
ふっ 己(おれ)にこんなに苦戦させたのは、貴様が初めてだ…っ!
金魚に向かって何か言ってる。
震える手で、破れそうなポイを水に浸けて。
なんだか みるからに ぶきようだ!
■ふるふる、5回
(◆金魚を 2匹すくった! 途中でポイの耐久度が 0になった!)
破れそうな、ぎりぎりのところで、…ふるふるした動きが却って良かったのか…?!
ふぅ〜〜〜〜〜。汗を拭う。
己(おれ)も3匹だ。ははは、互角か!
いや、なかなか、難しいものだな。楽しそうに笑う。
店員が金魚を袋に入れてくれる。 「大事に育ててね」という言葉と共に。
ああ、有難う店員殿。
……育てる。そうか、そうだな…、育てる、か…。
そういえばそういう遊びだった。失念していた。
あず殿は、出目金狙いだったのか?
あの大きいのには及ばぬが、己のを、どうだ。
すいすい、小さめの黒でめきんだ。
あー、と、言うのもだな。
己(おれ)は…。
己(おれ)が、別の世界から来たというのは話をしたことがあったろうか。
己(おれ)がな、元の世界に戻る時期が、近付いて来ているのだ。
そこは、……こいつらが生きていける環境では無くてな…。
己(おれ)のくらんに、置いていく事となりそうなのだ。
そうなったなら、恐らくてるぷ殿か赤坂殿が、大切にしてくれるとは思うが。
もしも、欲しいなら、貰って行ってくれるか。
──歩きながらで構わんから、考えておいてくれ給え。
答える声の小さな震えに気づかぬ振りで。
……次は…、そうだな、是非君たちの海鮮屋台にお邪魔したいぞ。
店長さんに会釈をして、歩き出した。
透明な水の中で、赤と黒のしっぽがひらひらと、涼しげに。
(しばらく歩いた後、アズは黒い、でめきんを欲しいと。伝えるだろう。…でも、お祭りの一緒に居られる間だけでも、同じ数の金魚の袋をぶら下げていられれば。
そんな風に考えながら、一緒に出店を後にした)
------
イラスト:まふら〜と猫 さま
アズヴィスさんの手を引いて、祭りの賑わいを楽しみながらやってきた。 おお、皆頑張っておるな。お疲れ様。
やぁ、浴衣貸出所の! お疲れさん! おやアズも。どこに遊びに行ってるかと思ったら…兄さん、アズの面倒を見てくれてたのかい! ありがとうよ! 頼りになる人が一緒ならわしが心配する必要はなさそうだな。
うむ、共に居る間は任せてくれたまえ。そこらの相手には指一本触れさせぬよ。
……そうだ、互いに守り合えば、敵無しだ。己(おれ)は攻める方は不得手であるからな…。 攻撃は、お任せするよ、あず殿。頼らせていただこう。
ふたりで頷き合って。
うむ。──しかし戦うにしても、腹が減っては何とやら、だ。
目の前の美味そうな海鮮焼きへと視線を移す。
……ああ、よい香りだな。祭といえば、これだな。焼きイカ。
ひとついただけるか。
…あとは、何にしようか。
うむ、ますたあのお任せにしてみよう。
マスター以外の料理が入ってくるとは思わずに、ガッツを支払って。
(ダイスころころ)
お、分かってるねぇ。 祭りには焼きイカだよな! お任せか…じゃあ、ちくわでいいかね…?無料で構わんよ。売れ残りそうでな… (ガッツを受け取り、先に出来上がった ちくわ を渡す)
……ちくわ。無料、で、良いのか? それは有り難いが……不人気なのか? うーむ、海の町の竹輪はひと味もふた味も違うというのに… この美味さをあまり知られていないのであろうなぁ(もぐもぐ)
ああ、無料で構わんよ。 いや、どちらかというと注文は多いほう、かね。
…単に、仕入れ過ぎてしまってな。
……うちの赤い猫に任せたのが間違いだった。30000ガッツ分、買って来よった…
そうなんだよ!海の町のちくわは 魚も新鮮なやつを厳選したりするから、旨いんだがなぁ。
30000……! それは、困ったな。 せとれっと殿がたっぷり食べてくれるだろうが。それでも追いつかんだろうなぁ。 可笑しそうに大笑いしている。
受け取ったイカを早速かじる。
うむうむ。やはりイカだな。これの香りは食欲が増進されて、たまらなくなるな。
しかも普通の店とは違い、新鮮な食材を使っているとなれば…。(もぐもぐ)
うん…美味い。
屋台巡りの唯一いただけぬ所は、白飯が欲しくなるところだな。
茶碗を持って歩くわけにもいかぬしな…。
白ご飯屋台! なるほど。各所で購入したおかずを持ち寄って、ご飯を注文する訳だな。
其れは良いな。しかしそうなると、生卵も用意して卵かけご飯なども出来ると、なお良い…。
想像してにんまりしている。
おぉ、いいな。白飯・卵かけご飯・そして握り飯か。美味い物ばかりだな! (ごはん ばかりだ) 先程は全部食ってしまったから、今度は一緒に分けられると楽しいかもな。
改めてメニュー表を見上げながら
元気いっぱいのメニュー表だな。皆で協力して書いたのか?
…………あず殿の書いたものは…あの「牛乳」というやつかな?
……何故海鮮屋に牛乳…。(他の人にも突っ込まれたであろう件を気にしている。)
そういえば…牛乳は、己(おれ)は苦手だったなぁ。好き嫌い多いな!
骨が丈夫になるらしいな。うむ、きっとあず殿は、強くなるぞ。
メニュー表を見上げて
ああ、なるほど、では、あのはみ出した方の字が、せとれっと殿だな?
あず殿の字が無いと、何だか分からぬではないか。まぁ元気で宜しい。はははと笑う。
牛乳、嫌イ、デモ 強ク、ナレル…ンダ …勉強、ナッタ
ソウ… せと…… 自分 ノ字、小サイ 言ウ ノデ、牛乳 本気 出シタ…
天野 ハ 字 達筆 ?(字は上手?と聞いているようだ)
……己(おれ)の字か? 己(おれ)は……うーむ、ごく普通だと、思うぞ?
そう言って、食べ終えたイカ焼きの串で地面に自分の名前を書くが、非常に整った字だ。
お手本通り、そういう言葉が似合いそうな。
うん? ……上手か? 有難う。
しかし周りの者が、非常に達筆揃いであったから、どうも普通、という印象であるな。
本当に上手い人間の字はすごいぞ。芸術品の美しさだ。真似できる気がしない。
…せとれっと殿は、何だかそちらの才能があるかもしれぬ、と思わせる字ではあるな。
ほめている、のか?
…エ……(才能があるとは思えない…と思いながら、はしゃぐセトを見て)
……(アズも、地面の名前をお手本に、書いてみる。立派なお手本の隣に、たどたどしい字体で 天野輝樹、の文字が並んだ)
天野、全部 漢字、良イ 名前 …コッチ、(輝樹の部分を指差して) ガ みどる、ねーむ ?
アズヴィスさんの書いてくれた自分の名前を眺めて
──人に名前を呼んでもらったり、書いてもらったり。そういうのは、嬉しいものだな…。
えーっと、みどるねーむ…、とは、何だったかな。カタカナ語に弱い
何と言えば良いのだ。天野、が、家の名。輝樹、が、己(おれ)の名。両親が付けてくれた名だ。
『輝』は、己(おれ)の国では『黄』の意味もある。己(おれ)の持って生まれた「ちから」の色でな。
このちからを持ち、大樹の様に強く真っ直ぐ天を目指すようにと。願いが込められた名だ。
みどるねーむ、エエト… 名前 ジャナイ、方 …?
! …天野、ハ 家ノ…名前 …?…!(家の名、の方を名前だと思っていたようだ)
輝、黄、樹…真ッ直グ 天……
(そろりと微笑んで) 良イ、名前、願イ トテモ
……黄色、ハ … 朝、太陽、ノ色 朝 目ニ 入ルト 嬉シイ 色、思ウ
…天野、ト、輝樹、ドチラ 呼ブ 嬉シイ ? 両方 ? 全部?(小首を傾けて訊ね)
名を呼ばれるのは、好きだ。姓でも名でも。
その相手が、自分の事を想ってくれているのを感じる。
……嗚呼、しかし、「てるくん」は、どうも、
婆様に呼ばれている様で、少々むず痒い気持ちになるので避けて欲しいな。
着物の下のお守りを手で押さえて。贈り主の顔を思い浮かべて、苦笑する。
良い名を頂いたと、自分でも思う。
一生の宝であるからな、名前というものは。
て、て… ?!
(名前で呼ぼうと思ったが、何だか急に変えるのも気恥ずかしく、お面をガッと被りごまかす!)
了解、天野 「てるくん」呼ビ 避ケル (避けるどころか難易度も高いだろう)
祖母 イル 良イ ネ 優シ、ソウ
婆様か。とても優しい人だったよ。過去形。 厳しい父に内緒で、と、よく金平糖をくれりしたな…。
あず殿の名は、……誰が付けてくれたのだったか?
自分ノ、名前ハ……(まふら〜に しまいこんでいた 黒い布の首輪を見せ。その裏側には、ブリアティルトの文字で アズヴィス、と刺繍されている)
……… 主 ガ… エエト… 猫 ダッタ時 ノ 飼イ主……
君の主も、大切に、たいせつに考えて、その名を下さったのだろうな。 ──主殿とは、今は離れて暮らしているのか?
主 ハ………せと、こると ハ、ソウ…ダケド
…自分 ノ 主 ハ…モウ、居ナイ ……火事
……意味 聞ケナイ、ケド…
ソウ、大切ニ 考エ テ クレタ ナラ…良イ 思ウ
(暗い話を断ち切ろうと、虚勢をはるようにして見上げて)
エエト…次、かふぇ食ベ 行ク ?
こると、せと、かふぇ美味シイ、言ッテタ
自分、未ダ 食ベテ ナイ
もういない、という言葉を聞いて。
……嗚呼、そうだ。
名付けられた、というのは、…見つけ、認められた証だ。一生、共に在るものだ。
道に迷った時も、道を違えた時も、…君が君である事を示す羅針盤の様なものだ。
大切であった筈だよ。その首輪の、文字を見れば分かる。
手作りらしいそれを。アズヴィスさんがずっと大切にしているそれを見れば。
意味は知らぬとも。良い名だ。己(おれ)も、好きだぞ。良い響きだ。
うまく発音出来てないのではあるが。
……カフェ、か。地図で見たが、確かワスレモノくらん殿のところだったな。
己も是非寄りたいと思っていたのだ。
羅針、盤……(天野の言葉をじっと、聞いて。 やがて、頷き)
… ウン……
(首輪の刺繍のでこぼこを、大切にするように、そっとなぞって、目の前に居る天野を見て)
…アリガトウ
(もう居ない主にも、今気付かせて貰った気持ちが伝われば、良い、な。と思いながら)
よし、行こうか。
手を、心持ちしっかりと、握って。
-------------
コーヒーの香ばしい香り、そして甘いカステラの香り…。
邪魔をするぞ。
アズヴィスさんとふたり連れ立ってやってくる。
おお、皆浴衣姿で働いているのが、非常に華やかで、うむ、眼福だ。
おお、女性浴衣の店員も珍しいが、男性はより希少かもしれぬな。新鮮で、うむ、大変嬉しい。
メニューを眺めて
ふぅむ、食べ放題、とな。景品一覧に目を留める
お、あず殿、猫だ。猫がいるぞ。
あず殿は、……よく食う方か? 食べた量に応じて何かもらえるらしい。
ふたりで挑戦してみぬか。……先ほどの、勝負も引き分けであった事であるし…。
多く食った方が、勝ちということで、どうだ。挑戦的な目だ!
ふむ…アップベビーカステラ食べ放題二つを頼むんだね。
かしこまりました…少々お待ちください。
(そういってリョウは注文を通し、しばらくして品物を二人の前へ)
アップルベビーカステラ、お待たせしました。
傍にあるミルクセーキ(アズヴィス君)と玉露(天野君)のは、ナオミからのサービスだそうだ。
ナオミ曰く『綺麗な浴衣を貸してくれたお礼』との事だ。
…まぁ、ナオミの普段見れない姿を見れた点では私も君に感謝をしている。 …ありがとう。
こちらこそ、眼福だ。感謝である。 玉露のさあびすまで、有難う。甘いものにはやはり、茶が合うな……。 ずず、と、玉露をすする。うむ、とか満足そうな声を出しつつ。
みるくせーき … ! (美味しそうなそれに、思わず目が きらりと)
アリガトウ、なおみ、 ニモ…(サービスのお礼に、にぼし2匹をリョウに渡そうと)
(ミルクセーキをちびちびと飲み)
美味シイ… 牛乳、ヨリ 甘イ
(煮干しを差し出され、にこりとほほえみ)
にぼし…私とナオミにくれるのかな?
ありがとう。…後でナオミと一緒にありがたくいただくよ。
(煮干しを受け取り、大事そうにしまうと)
(ミルクセーキをこくこく飲んでるアズヴィス君をナオミが調理場から見守っている。表情こそ変わらないが、彼女の周りにキラキラが飛んでるような…そんな気がした)
リョウの合図と共に、ふたりともアップルベビーカステラを頬張って。
-------------
【19個!】
ふぅ…。美味くてついつい手が出るな。
これは、大食い挑戦でなくとも、いつの間にか数を食ってるやつだぞ。
それぞれの個数を聞いて、アズさんに向け大人げないドヤ顔だ! ……どうだ!
すとらっぷ。……槍に付けられるだろうか。汚れてしまうかな。
是非、黒猫をいただけるかな?
そうか。 …それは良かった。
気に入ってくれるかどうか心配だったが…どうやら杞憂だったみたいだな。
(天野君にやよいとナオミの料理の腕を褒められ、リョウも若干嬉しそうだ)
槍につける…か。
布に通してそれを槍に括り付ければつけれると思うが…
先端に近い部分につけた場合攻撃した時、返り血で汚れてしまうな…。
…かといって後ろの方で攻撃する可能性もあるから後ろに括り付けても…うーむ…。
(天野君の槍に括り付ける場所について真面目に考え)
…いや、ここら辺は第三者がうんうんと唸って考えるべきじゃないな。
どこにつけるかは…君次第だ。
(そう言ってリョウは、天野君に黒猫エクレアのストラップを差し出した)
そうなのだよ。汚れたり…ましてや敵に奪われたりしては大変だ。 しかし、相手への威嚇になるやもしれぬぞ。 可愛らしすぎて攻撃出来ぬ、とか。つい目で追ってしまって集中力を奪うとか。 大真面目だ。
うーむ…威嚇か…その発想はなかったな…。
確かに…目立つ物がそばにあるとそちらに気を取られて要点が分かりにくくなると聞くし…そう考えると案外ありかもしれない。
(天野君の返答にリョウもまじめに考えている)
だが…やはり汚れるのがネックだな…。
…ふむ。 アズヴィス君も黒猫だな。
(黒猫のストラップをアズヴィス君に差し出し)
ストラップをお揃いにするなんて…君達は本当に仲がいいんだな。
(ほほえましい二人に向かってにこりと微笑んで見せた)
お揃いだ。 ふふ、仲良しで、良いだろう。アズさんの持っている黒猫と、並べる様に見せびらかす。
うむ。勝負の方も良い勝負であったし。
甘いかすてらと苦い茶、という取り合わせに食欲をそそられた。
これが無ければ負けておったかもしれぬな。良い勝負であった!
己(おれ)のために、か。それは、本当に有難いな。
己(おれ)の場合食べ物に、こだわりというか、……我侭というか。自分で苦笑する。
実際、あまり甘いものは好まないのだが、これはとても良い。
林檎の酸味のせいかな、上品な味だと感じる。
…若い者には紅茶などと共に頂くのを好まれそうだ。
己(おれ)もまぁ、よく食う方だが、基本的に白い飯があれば問題ないからな…。
むぅ、リョウ殿も好き嫌いが多かったとは、意外であった。
しかし「幼少時は」ということは…、今は克服しているのだろう?
うぅむ、見習わねばならんな…。眉間にしわ寄せ、苦い顔。
克服の原因は……美味い料理を作る人が、居てくれたお陰、かな?
(誤魔化すように咳払いをして)
ま、まぁ…そんな所だな…。
好き嫌いを克服する手伝いをしてくれたナオミは感謝してもし足りないな…。
き、君も…その、料理が上手な伴侶に出会えることができれば…案外簡単に好き嫌いが克服されるかも…しれないな。
(そう言っているリョウの頬は…ほんのりと赤くなっていたかもしれない)
……罰ゲーム? 罰ゲームか、なるほど、ふむ。
言われて、ふむ。と思ったらしく、考えてる。
良し、思いついた! 膝を打って立ち上がる。
この先、肩車で行くぞ! さ、あず殿、来るがいい!
ずかずかと、アズヴィスさんの前に背を向け座ると、さぁ! とばかりに構えて。
カ、肩グル ……?! (広い背中を目の前に 戸惑って。肩車…! 子供っぽくて気恥ずかしいが、しかし…そこから見える景色は筆舌に尽し難きものであり、何より楽しい…!ということをアズは知っている…!)
(しばらく、そわそわそわ…と悩んでいたが)
ば、罰げーむ…ダカ ラ、 カ、覚悟 スル… !
(自分に言い訳しつつも、目はきらりきらりとしている様子で、そおーっと足をかけて。アズは 肩車して 貰った!)
さぁ、行くか! 馳走になった、リョウ殿。 ナオミ殿にも、よろしく頼む。
イラスト:かげつき
よーーし! 花火を見に行こう! 普段よりも、少し近くで見られるぞ! ……走って行くぞ! 掴まっておれよ! 下駄を鳴らして駆け出した!