ただいま

第四期:暴かれる嘘

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長い長い旅の報告に。家族と、仲間と、親友とに。

アティルトに戻って、その足でアノチェセルと共に孤児院へと。 休んだ方がいいのでは、と、アノチェは心配だったかもしれないけれど、 ちゃんと話をしないと、いけない。 何よりも大事な彼女との事だから。
おじさんと、おばさんと、そして誰よりも、アルバに。 無かったことにしていた事を、伝えなければ。

テルプ 1btg

話がある、と呼び出した3人の顔を見て、頭を下げる。 ひどく疲れた顔を、取り繕うことも出来なくて。

戻りました。長い間、……心配、かけたね。 あのさ。俺っち、皆に嘘ついてて。謝らないと、いけなくて。

バラクとローラの姿が見えたなら、 よかったら聞いていく? なんて言葉で、同席を促すかもしれない。

アルバ18k0

君鳥とフォウが互いに顔を見合わせる中、アルバだけは一人、納得した顔をしていた。

…お疲れ様。テルプ。
そう言うアルバの顔は「もう知ってるよ」と笑みを浮かべていて。

…思い出した?酷い顔してるぞ…? とりあえず中に入ってお茶でも飲んでいけよ。 …おばさん、お願いしていいかな…?

君鳥18k0

ええ、わかりました。 暫くお待ちくださいね。

アルバ18k0

…アノチェも、お疲れ様。 よく、頑張ったな。

アノチェセル18k0

…アルバ…。

アルバ18k0

あー、泣くなって!  ほら、取りあえず案内してやれ。

ローラ18k0

…テルプも、アノチェも、ど、どうしたんだろ…。 すごく、くたくたみたいだけど…。

バラク18k0

…聞いていく?当人からもOKでたのなら、聞いてみましょうか。 …というか、聞きたいんでしょ?ローラ。

ローラ18k0

…うん…。

応接間にて一堂に会すると、彼の言葉を待つ。 淹れられたお茶からのぼり立つ湯気だけが、時間の流れを表していた。

テルプ 1btg

全部、思い出してきた。 俺っち、村の皆にアノチェを紹介しに行ったんだけど…。 アルバの表情に疑問符を浮かべつつ、案内された部屋でカップに口をつけて。 温かい湯気が顔にかかるのを心地いいと思いながら…。重い口を開く。

俺の村、とっくの昔になくなってたんだ。俺が忘れていただけで。

テルプ 1btg

話し始めれば淀みなく口は動く。 アノチェに話した長い物語を、繰り返した。今度は一人称で。

俺が。俺が。
悲しかったのも、必要とされたかったのも、欲にかられてたくさん人を踏みつけたのも ……大切なものを みんなみんな壊してしまったのも、 それを無責任に忘れてしまったのも、俺だった。


そうやって、全部嘘にして生きてきた。 だから、……ずっと間違えてたんだ。本当のこと見えなかったから。

テルプ 1btg

ひとつ息をつき、少しぬるくなったカップを両手で包み込むように。
アノチェの事も、…無かったことにしようとしたんだ、一度。彼女がいなくなった時に。 だけど、忘れたくない。忘れない。もう二度と、大切なこと。
俺は。アノチェと生きたい。

今まで無かったことにしてた全部、彼女となら持っていける。歩いていける。 ……俺の方から、彼女にあげられるもの、──ほんとに、なにも、なかったんだけど…。 彼女が好きと言ってくれた、うたも、えがおも、幻のように不確かだ。 それはきっと足元に、積み重ねたものが何も無いからで。……忘れて、しまっていたからで。

けど、もう一度、今度はちゃんと重ねていくよ。 幻、だって、俺はそこにいた。俺の歌は……誰かを、きっと少し幸せにしていた。 重ねて、全部、あつめて。 彼女の笑顔を、本当に、「俺が」作って行くから、行きたいから。 彼女が辛い時も、絶対に目をそらさずに支えて行くから。だから。

テルプ 1btg

だから、お願いします。
……アノチェを俺に、ください。

静かに。祈るような。

静かに、じっくりと話を聞く。 誰一人、彼の話をさえぎる事なく。

君鳥18k0

…わざわざ、それを…?  …あの時いらしたテルプさんは、嘘であったからと。 だからもう一度、本当のことをお話にいらしたと。

…………。
私は…差し上げるとは言っていませんよ? お任せすると言ったのです。 アノチェが、貴方と共にありたい、貴方が、アノチェと共にありたい。 その思いを感じたから…お任せすると。 それは確かなのでしょう?貴方が、嘘であるとおっしゃっていた「貴方」でも。 なら、何の問題もないではありませんか。

でも…よく、お話してくださいましたね。 にっこりと微笑む。許されているかのような。

過ちは…取り返しがつかないことが殆どです…。私も、夫もそうでした。 それは足元を絡めとって、がんじがらめにして…身動きを取れなくしてしまう…。
…それでも、誰か一人でも、寄り添う人が…断ち切ってくれる人がいれば、変わることが出来ます。 私の場合は…夫と、この子達でした…。
…アノチェセルが、貴方の鎖を断ち切る存在でいてくれて、よかった…。 まるで彼女も救われたかのような、笑顔で …改めて、この子をお願いしますね。

テルプ 1btg

俺が嘘だったってのもあるけど。 ちゃんと、伝えなきゃって思った。 自分自身が見つめていかなきゃいけない事、隠してちゃ、意味無いって思ったから。

アノチェの、強さは。優しさは。 おじさん、おばさん…、そして、アルバ。お前が守ったものなんだって。 だから…だからさ。本当に、ありがとう。 3人に向かって、深く、頭を下げた。おそらくアルバが初めて見るような殊勝な態度で。

アルバ18k0

…俺な、とっくに知ってたんだ。テルプの村のことも、お前の過去の事も。大体全部。 フェリクスと赤坂で三人、旅したときに。 …赤坂が最初に気付いたんだ。お前の異変にさ。

…身辺調査みたいなことしてごめん。 …アノチェが村に行ったとき、どうなるか心配だったのもあったけど…。 いや、いいわけだな。だってどういう事実であっても、きっとアノチェは俺を振り切って村に行っただろうし、俺は俺で、きっとアノチェに言えなかった。
そうだよ、俺も、お前が積み重ねずに忘れてきたものを知りたかったんだ。 友人としても、いずれなるであろう、義兄としても。

だから俺は、全部知った上で、アノチェに任せた。それしか、出来なかった、が、正しいのかもしれないな…。 でもまあさすがに、今回は五分五分だったけど。 苦笑して だから、こうして帰ってきてくれたお前らに言う事は唯一つだよ。
お疲れ様。 …乗り越えてくれて、ありがとう。 こっちこそ、よろしくな、兄弟? にやりと笑って。心の底から、彼の…本当の彼を祝福するかのように。

テルプ 1btg

知ってた、という言葉に、大きく驚いて。 マジで? 赤坂と? フェリも? どうやって?  3人の旅については、別の機会にじっくり聞くことになるだろう。

お、お前ら、何も知らない様な、涼しい顔しやがって……。
いつもと変わらぬように見えた友人たちの態度を、思い出す。 そういえば言葉の端に、気遣うような、そんな色が滲んでいた様な。 ……見えていないのは過去だけでなく、現在も、だったのかもしれない。
あんな、忘れてしまいたい間違いを知ってなお態度を変えずに、 すぐ側に、こんなにも、自分を想ってくれる人がいるのすら、俺は。

テルプ 1btg

すげー大変だったろ。砂漠も、山道も。 笑ってみせる。 嘘じゃない。俺はずっと、笑いたかったし、歌いたかったんだ。 だから、まだ少しうまく笑えなくても、作ったその表情は、嘘じゃない。

──よろしく、兄弟。 それは何だかか幼い笑顔だった。

テルプ 1btg

と、言うわけでさ。
何だか、吹っ切れたような顔で切り出した。
俺っち、アノチェと一緒に、生きるよ。 ──式を、挙げたい。なるべく、早く。

君鳥18k0

まあ…!お式ですか!  ぽん、と手を叩いて嬉しそうに。 ええ、ええ、もちろん、歓迎しますよ。ね?フォウ?  そう隣に話しかければ微笑んで頷く夫がいて。
ああ、どうしましょう、準備間に合いますかしら。 ふふ、こんなに早く、子供達の晴れ姿を見ることになるなんて…。 気持ちが既に式場に飛んでいる。気が早い!

…どこで式を挙げるか、もう決まっているのですか? 特に決めていないのであれば、この孤児院でと思っているようだ。 だが、決して豪華な施設でもなく、子供達も沢山いることから、少しためらいが見える。 場所を決めているのであれば遠慮なく言えば、もちろん協力してくれるだろう。

テルプ 1btg

あー、いや、その辺まだ全然…。ノチェ、何か希望ある?

彼女の意見を聞きつつ…、是非孤児院で、という君鳥にふたつ返事で頷いた。 うん、孤児院なら…子供らにもみんな見てもらえるし、すごく、いいと思う! ね、アノチェ。広いから、みんな呼んでも大丈夫だし。

ドレスとか、食事とか、色々決めなきゃだし、忙しくなりそう…だね! ノチェのドレス姿、きれーだろうなぁ…。 とても嬉しそうに、こちらも既にその姿を目にしたようなうっとりした顔だ。

アノチェセル18k0

う、うん!…わ、私、ここで挙げたい…。 わ、私の家だもの。 こ、これから、ここを旅立って、テルプのところにいくの…。
だ、だから、ここがいい…。

君鳥18k0

そう告げたアノチェににっこり笑って。
さあ!それじゃあうかうかしてられませんね! 早速準備にとりかかりましょう! フォウ、私はこれから少し出かけてきますので…ええ、愛弟子が結婚するんですもの、もちろん知らせに。
…え、着いて行くんですか? …ええと…し、仕方ないですね…。 少し頬を赤らめて
…わかりました。 ではテルプさん、折角いらしたのにこれから出かけてしまう事を許してくださいね。 長旅お疲れでしょう、よければこちらで一泊でもなさって疲れを癒してください。

…アルバ、後は頼みますね。 それでは、また近いうちに。
フォウと君鳥は一礼をして。 部屋をでるやいなや慌しく駆ける音が聞こえる。

テルプ 1btg

ありがと。お手数かけちゃうけど……よろしくお願いします。

君鳥さんとフォウさんにひとつ礼を。

アルバ18k0

…いっちまった。 …どうする?俺はどっちでも構わないよ。 なんなら今日のうちに詰められるものは詰めた方がいいだろうしな。

テルプ 1btg

一泊、は、させて貰おうかな…。 流石に、これからセリオンまで戻るのは、ちょっと体力的に、きっつい…。 ……風呂も入ろう。のちぇー…いっしょにはいろー…。
随分と 調子が 戻ってきた ようだぞ!

ローラ18k0

…あ、アノチェ…。テルプ…。 け、結婚、お、おめでとう…。 ローラが立ち上がって二人の前へ。

ぼ、僕達ね、元の世界に帰るアイテム、見つかったんだ。 …け、結婚式を見られれば、よかったんだけど…。 そ、その時にはもう、いないかも、しれないから…。 だ、だからいま、言うね。
あ、アノチェ、ぼ、僕の分まで、幸せに。 …テルプ、も、もう一人の…「私」を、どうか、幸せに…してあげてね。

テルプ 1btg

そっか…、戻れるのか。こちらからも、おめでとう。

アノチェを幸せに、は、任せて? どこの誰よりも、幸せにするよ。 だから、君も、こっちに負けないくらいに、幸せにね。

……世界の形が違えば、きっと幸せの形も違うだろう。 だからさ、…そっちの世界に、もしも俺っちがいたら… 最初はさ、そのふたりが、うまくいけばいいな、なんて思ってたんだけど ……あんま、こっちの俺たちを意識すんなよ? 君には君の物語が、生き方があるんだって、今はそう思うから。

ローラ18k0

…うん。
き、君達二人が、こうして、一緒にいるようになるまでに、き、君達にしかない、積み重ねたものがある筈なんだ…。 そ、それは、この世界のアノチェセルと、テルプ、二人だけのものだよ。 他の誰にも邪魔する事はできない。 …同一存在だって、例外じゃないんだ。

す、少し、羨ましくもあるけど…。 だ、大丈夫、ぼ、僕だって「アノチェセル」だよ! 君達に負けないぐらい、歌を歌い続ける! ど、どんな形になったってね…!

もしも、自分達の世界にテルプがいたとして、 あまりこっちのテルプを意識するなと言う声に うん…そ、そのつもりだけ…ど…

テルプ 1btg

君の詩を積み重ねて、歌い続けてくれ。こっちに届くくらいに。
君のうたが、好きだよ。アノチェセル。

ローラ18k0

「ローラ」ではなく「アノチェセル」と。


…ずるいな…。ひ、ひどい。 い、言ってる事と、やってる事、逆だよ…。 こ、これじゃ刻み付けられたも同じだよ…?

そんな風に苦笑した。 目尻に少し浮かんだ涙は、見えたか見えなかったか…。

バラク18k0

とりあえず、向こうでそれらしい人間みたらぶちのめす事にしたわ(キリッ)
今決めた(ズバ!)

テルプ 1btg

え、ちょ、何でっ?
ローラの苦笑と、バラクの、自分を睨みつける目線にたじたじと。

ちがうんだって。ほら、俺っちとアノチェがこういう関係だからって そっちのテルプと、何かそういう関係にならなきゃ、みたいな、 そんな風に思う必要は無いんだぜって……言いたかったんだけど。

そっちの俺って、何か、ロクでもない性格してる気がするから。 昔見た夢。別世界に生きていた自分は…、誰かに心を許すような奴では無かった気がする。 ただの夢、といえばそれまでなのだけど。
だから、ローラ・アノチェセルにとっての俺は、こっちにいる俺で。 …だったら、ちゃんと本当の名前で、挨拶したいじゃん。 それでもきっと変わらぬ、もしかしたら険しくなるかもしれないバラクの目線に、 ……なんかゴメン。素直に、謝罪する。が、恐らく意味はよく分かってない。

ふ、ふろ、入ってくるね。 その場から逃げるように。

アルバ18k0

まあまあ…。
じゃあ俺たち食事の準備してくるから、ほら、アノチェも一緒に風呂行ってこいよ。 よろよろくたくただろ? 服も洗っておいてやるから…ローラが。 (女性ものの洗濯は基本同性が洗うというルールなのだ!)

アノチェセル18k0

う、うん、じゃあ…案内するよ…。 え?いっしょに?!…う、うん…。…わ、わかった…。
よれよれなのに、いいのかななどと、将来を約束したのに恥らうアノチェセルだった。

式の段取りを考えて、その日に思いを馳せる。
楽しい時間の後は、長旅の疲れを癒やすように、深い深い、眠りに落ちるだろう…。


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  1btg

長い旅から戻ってきたテルプを、赤坂と天野が出迎えた。

赤坂 天矢  1btg

おかえりなさい。 ……どうでしたか。村には、行ってきたんですか? 冷静に、態度に出さないように。

テルプ  1btg

ん。行ってきたよ。 ぜんぶ、思い出してきた。

……赤坂も、有難うな。お前のおかげで… お前が、仕送りのこと黙っててくれて、心配してくれて。 アルバとフェリクスに相談してくれて。

俺っち、一番いいタイミングで、ちゃんと自分に向かい合うことが出来たと思う。

赤坂 天矢  1btg

……べつに。僕はなにも。右往左往してただけで。

天野 輝樹  1btg

……??
何だ。村で、何があった?

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何度目かの説明を、天野にも。 自分自身にかけた催眠術の事を。

とっくに滅んだ…、自分が、死に追いやってしまった故郷の村を、 自分が笑うために、歌えるように、存在すると思い込ませていたこと。
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語られる物語の間に、赤坂はふたりを連れて倉庫へと。 そこには今まで送られて、そして戻ってきていた郵便物の数々。 そのほとんどが、保存の効く食べ物、だった筈だが。

赤坂 天矢  1btg

無断で、すみません。中身、開封して、お金に替えました。 氷砂糖など、傷みにくいもの以外の食べ物は、古い順に整理されていた。 村に宛てた手紙と、包装紙はきれいにたたまれている。

テルプ  1btg

……わ、あ…。いや、助かる。有難う。
ダメになった食べ物の山を想像していたテルプは、口をぽかんと開けて、 その後思い出したように礼を。

……ああ、これは、ほんとに助かるな。 俺っちさ、これ、全部、アノチェの孤児院に寄付しようと思ってるんだ。 俺の村の為って、ずっと思ってきたものが、あの子どもたちの為に活かされるなら、これ以上は無いって、そう思う。
何年も、「期の巡り」を重ねて。その金額は結構なものになっていた。

…………ずっと、償いたかったんだと思う。 無意味だったけど。そうしないと、俺っちは。

ずっと無意味に、嘘を重ねて、幻のように生きてきた。 とっくにいなくなったかーちゃんの願いを、叶えるためだけに。 「いつも笑顔で」「みんなを幸せにする歌を」…それだけを実行する為に。 そうしてないと、それこそすべてが、俺の世界の全てが幻になってしまう気がして。

だけど。 そうやってでも、俺っち、生きてきてよかったよ。 アノチェに。出会えて。……しあわせなんだ。

テルプ  1btg

俺っち、アノチェセルと、結婚します。
式の日取りも決めたよ。

天野 輝樹  1btg

……! ほう、それは、めでたいな。 月並みな言葉で申し訳ないが。 母上のその願いは、君を幸せにするために、君をここまで連れてくるために 最後に残された祈り、だったのかもしれぬな。

いや、とにかくおめでとう。 君たちの晴れ舞台を見てから戻れるのは、とても嬉しい。

……正直、予想外だった。 君は、この世界に未練などなくて、 仮に己(おれ)が必要だと言えば、共に来てくれるのではないかと期待していたのだ。 赤坂殿はなかなか首を縦に振らぬが、君なら、すぐに。そう思っていたのだよ、最初は。 そういう意味では、大変に。残念だが。

赤坂 天矢  1btg

……?
天野さんは、テルプさんの昔のこと、知っていたんです?

天野 輝樹  1btg

否。何があったかは知らぬ。 しかし、……この世界にとっての幻のような人間である、とは、認識していたよ?

このクランはな。 己(おれ)の世界に「飛べる」人間を集めておる。 てるぷ殿にもその資格があったのだよ。

……まぁ、己(おれ)の話は良い。式か。盛大にやるのか? 丁度良かったではないか。資金はほれ、ここに。 倉庫の中を指して、にこにこと。

テルプ  1btg

……孤児院で、挙げさせてもらおうと思ってるよ。 盛大に、とは言わないけど。まぁ、これからふたり生活してかなきゃだし。貯金もないし。 ……この仕送りは、全部寄付に回すよ。一度「村へ」って送ったものだし。
アノチェもきっと、それがいいって言ってくれると思う。

赤坂 天矢  1btg

……テルプさん。 こちらへ、と、呼ばれた先で赤坂が取り出したのは、クランの帳簿だ。

僕が会計管理していたんですけど。 これ、冒険者ギルド支払いのうちのクランへの報酬から、少しづつ貯金してあります。 何かあったときに使おうと思って。

テルプさんの取り分がこの3分の1として。 クランと、僕と。…天野さんから、お祝いとして。追加分。 ちらと天野の方を見る。いいですよね? という表情。

こちらは、結婚式費用として全額使ってしまってください。
一生に一度のものなのですから、華美に、とは行きませんけど。 悔いのないように、思い切りやっちゃってくださいね。 えっと、もちろん僕らも行っていいんですよね? と、いたずらっぽく笑う。

テルプ  1btg

か……

かーちゃん!

赤坂 天矢  1btg

かーちゃんちゃうわ!

赤坂 天矢  1btg

……おめでとうございます。 式、ね。楽しみにしてますよ。

天野 輝樹  1btg

赤坂殿が母親ということは、父親は己(おれ)か? ばーじんろーどとやらを手を引けばいいのか?

赤坂 天矢  1btg

それは花嫁の方ですね。天野さんは何もしなくていいです。 ていうかしないでくださいややこしくなるから。(きっぱり)

テルプ  1btg

あ、ありがとう。
感無量という感じで、涙目になってる。

赤坂 天矢  1btg

うああああ、やめて、やめてくださいそういうの。 うちのクランにあんまり、あわないから。そういうの。


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さて、日を改めて……
ここは、クラン 穀潰しどもの寄合所

テルプ  1btg

えっと、お邪魔します。 フェリクス、いる? 玄関から顔を覗かせる吟遊詩人。ぴょこりとアホ毛がゆれる。

あの、俺っちしばらく故郷の村に戻ってて… 帰ってきたもんで。挨拶に。 自分の記憶に繋がる長い旅をしてくれたという友人へ。

アルバ 18k0

…よ、久しぶりだな。 このメンツで集まるの。 テルプの隣で片手を上げて。
どうせなら、あのメンツで、テルプを交えて話してみたかったのだと、ついてきたのだ。

赤坂 天矢  1btg

テルプの後ろに続く、あいも変わらず丸められた背中。 周りを見回しながら、軽く会釈を。

フェリクス 1avd

…よう、おかえり。里帰りはどうだったよ? まあその様子だと、だいたいなんとかなったみてーだけどよ。 (ぶっきらぼうな物言いだが、飲み物を用意したり案外優しく出迎えてくれる)

はあ。アルバもいるってことは、オレらが何しに旅行してたか聞いたんだろ。 言っとくけどな、礼も苦情も受け付けねーからな。 アルバはともかくオレは赤坂に相談されて、 観光ついでくらいの気持ちでお前のふるさと探訪に出かけただけだし。

テルプ  1btg

んー。まぁ。報告だよ。……全部思い出してきた。

あの村、本当に全部無くなっちゃったよ。 丁度、火山が活動を始めたみたいで、ぜんぶ、全部火の海の中だ。 もう一度観光しに行きたくなるようなトコじゃなかったろうけど。 ……一応、な。報告。

自分のやった事を知っても態度を変えず、見守ってくれていた友人には感謝してもしたりない程なのだ。この、呪われた歌を恐れ、彼に真実を告げることを畏れ…、俺は、再び彼の前で歌うことが出来たとは思えない。 知っておいてくれる、それだけで、救われるのだ。
ストレートな礼など、受け取ってもらえないだろうから。

…………サンキュ。用意された飲み物を受け取る一言に、気持ちを込めて。

ていうか、お前ら、どこまで知ってんの? 俺が村へ戻るってのに、3人共涼しい顔しやがって、大した役者だよ……。 まぁ、お陰さまで、だいたい何とかな。なんとか、なったよ。

アノチェとの愛も、深まったしな! 苦情以上に、彼に効くやつだ。

1btg

色々、回りましたよ。 何ならメモとか取ってますけど、見ます?
使い込まれた赤坂メモだ! テルプはそれをぱらぱらと見て、おお、などと驚いている。

アルバ 18k0

お前は孤児院きたら大体「のちぇーのちぇー」だったじゃん…。 俺をみてたかもあやしいだろ。 笑いながらそう突っ込んで

俺たちの旅はドンドン遡って行った感じだから…。 最初は「ネダのやつとんでもねーな」とか思ったりさ、トト族が割に合わない取引してたのもわからなかったんだよな。 テルプが街でやんちゃしてたのも、そんな理由だったって、アノチェと答え合わせするみたいに話してようやく分かったし。

村で真実みたときはただただ悲しかったな。それは覚えてる。 アノチェが、お前を導いてくれてよかったよ。 俺は…救われたって思ってる。 フェリクスも、赤坂も、きっとそう思ってくれるといいなと。

フェリクス 1avd

…そ。ちゃんと弔ったかよ。それでお前は本当に、いい意味で振り切って、 楽しく歌うことができるんなら。…何も言うこたーねー。 (照れ臭そうにそっぽを向いて)

永遠を信じない彼は、呪縛から解き放たれた友人を見てぼんやりと、「これでこいつは、過去を本当に忘れる(乗り越える)ことができるんだ」と感慨にふけると同時に、やっぱり羨ましいと心の中で苦笑した。


って、愛とか言うな!クソ、調子乗らせたらこれだ。 そういうのはオレのいないとこでやって、どうぞ。 (この対応も半ば持ちネタになってきた!)
…まあ一応できる範囲でいろいろ見て回ったりしたのはしたけど、全容がわかったわけじゃねーよ。 別に今となっちゃ、細かいとこまでつつく必要もねーし。そもそもお前の問題だし。 (アルバの言葉には同意の代わりに、目配せのみを返した)

テルプ  1btg

……何も、残ってないって思ってたんだ。全部忘れて、消してしまいたかったんだけど。 お前らが少しづつ足あと辿って、辿り着ける程度には、ちゃあんと残ってたんだなぁ。 悲しい事も、間違いも、罪も、全部。

俺っちさ。自分で忘れたくせに。 ずっとずっと、村のみんなに、謝りたくってなぁ…。 やっと、果たせた。最初にやらなきゃいけなかった事なのに、こんなに時間がかかっちまった。 やっとね、みんなを、眠らせてあげることが、できたよ。

テルプ  1btg

最高の失敗談だ。お前なら、面白おかしく演ってくれるんだろ? 楽しい歌にしてくれよ。……笑えるように。 少しだけ、しんみりとした空気になりかけたのを、にぱっと笑って。

フェリクス 1avd

オレはな、悪いけどせいせいしたぜ。 一人だけすっかり綺麗に忘れちまってて、ずるいとずっと思ってたんだ。 前からそうだよ、お前は音楽も魔法も才能に溢れてて…、 オレみたいな二流には、届かないところの人間かもなって、ちょっと嫉妬、してたさ。 はは、まあ杞憂だったみたいだ。お前も結局過去から逃げ切れなかった。同じ人間だ。 …よかったよ。

…そのさあ、式のそういうのさあ…オレになんて任せちまっていいのかよ? けどまあ…約束したし、仕方ねーんだけど。(頭を掻いて目をそらすのは恥ずかしさからか)

テルプ  1btg

はぁ? そりゃあこっちのセリフだよ。 魔力も無しであんな、人を魅了する歌を歌えるなんて、ずるいって! 俺っちが、投げ出しちゃったもの全部ちゃあんと持ってさ。 お前みたいな歌、俺には絶対うたえないって、そう思ってたさ。

……これで、やっと、同じ場所に立てたって、……思ってもいいモンかねぇ。 つぶやくと、照れ隠しか、ぐいとグラスを煽って。

任せていいのか、と問われると力いっぱい頷いた。
そりゃあ、勿論! 俺にとって最高の、吟遊詩人だもん!

フェリクス 1avd

ヒ…ヒィー!(最高級の恥ずかしさだ!)
やめ…やめろ!そーゆうのはほんとマジ…褒めてんじゃねーぞクソ!! お前素面か!??バカか???(もうめちゃくちゃ!)

こ、こんなところにいられるか!オレはもう帰るかんな!!歌も作んなきゃいけねーしよ! お前らも用は済んだろ…な!な!! (顔を真っ赤にして肩を揺するが残念、威圧スキルは所持していない!)

イラスト:かげつき

テルプ  1btg

ニヤニヤしながら揺すられるままに。 へーへー、忙しいトコ、おじゃましました。 ま、顔出しに来ただけだから、帰るわ。

……アルバは、俺っちトコ(クラン)寄ってく? アルバの同意が得られたなら、軽く手を振って、拠点を後にすることだろう。

アルバ 18k0

おー…めずらしー。 俺フェリクスがこんなに動揺してるのはじめて見たわ。面白いもんみれたな。 ニヤニヤとフェリクスが顔を真っ赤にする様子を見て。

よかったな、お互いに絆も深まったって事でさ。 ん?んー…特にこの後用もないからまあ…そうだな、寄っていくかな。 そういえばテルプのクランってもう長い事行ってない気がするな…。

フェリクス、邪魔したな、式でお前の歌、楽しみにしてるよ! 手を振ると同じように拠点を後にする。

フェリクス 1avd

バーカバーカ!さっさと帰れ!!当日は待ってろよ! あんなことやそんなことまでネタにしてやっからな!覚えてやがれ! (どう聞いても三流の罵声を浴びせながらわざわざ外まで見送っている…)

…ふん、せいぜい期待でも何でもしてろよ。 (と玄関を開けて中に戻ろうとすると)

ジェーン 1avd

(指をさして爆笑している)

ジェーン 1avd

ウフフ?バッチリ見てたわよ〜!お赤飯炊かなくちゃ〜〜〜〜

サム 1avd

よかったな。何のことか聞いてなかったが。

フェリクス 1avd

ここが地獄か。


フェリクスはこの後一週間寄合所に顔を出さなかったので、 へそくりの高級酒をクランメンバーが美味しく頂きました
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