白き狼の叫び
第四期:祈り
何やら不穏な話し合い。──白狼を取り巻く何もかもが急速に動き出す。
「ここに仕掛ければ派手に演出できそうだ。時間はこれでいいんだよな?」
「それでいいはずだ。夜だと意味がない、日中派手にやっちまおう」
「よし、じゃあ明日、俺たちは指定場所からコレをしかけてくるぜ。」
「ん?あぁ〜。いいんじゃないかねぇ。ただこの建物、老朽化が進んでいるんだよなぁ。爆薬は減らしておいたほうがいいぜ、崩れちまう」
煙草を見取り図に吹きかけ、印がついた部分を指で叩く。
・・・ロビーに出入りしていた新聞記者だ。
彼らの実行する内容にはさほど協力的ではないのか、
「トチって迷惑かけるなよ」と一言投げると階段を上がって姿を消した。
「だってよ。どうする?」
「大丈夫だろ。どうせあの宗教がなくなったら精霊堂も解体されるじゃん」
「そりゃそうか」
子供二人を見送ると、母親は目的地へ。
別段用事があるわけでもなかったのだが、子供達が退屈してはなんだということで、
精霊堂やギルドに顔を出すついでにアノチェセルの孤児院にも寄っていこう、
といった話になったらしい。
とはいえ、既に寄り道が始まっているわけだが。
(先に精霊堂でお花を貰っていこうかな)
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精霊堂から預かった黒い子犬は、
魔物の多さから床下に隠しておいたが…大丈夫だろうか。
そんな事を考えながら、剣を握る。
恐らくあの群れの目的地は、ギルドがある町コーデリア方面。
俺を討伐する依頼書が出回っているらしいが、あいにくその町も俺の仕事の守備範囲。
(行くしか、ないな)
一瞬、自分をたしなめる言葉が頭をよぎる。
…それでもこの仕事は…この契約は、俺に科せられたものだ。
森から飛び出し、警鐘。否、そんな道具もない自分には、これしかない。
大きく身体をそらして肺へと空気を送る。待機、開放、振動。
「Гаааааааааааааааааааааав!!!!!」
音は空気を震わせ、恐らく町にも届いただろう。ヘルハウンドは遠吠えにも怯むことなく
町へと駆け出している。…加勢、しなければ、きっと間に合わない。
硬く尖った爪を土へ刺しながら、俺も後を追うように町へと走り出した。
誤解を受けようがどうでもいい。…どうせ、最初から…
町は混乱していた。今までのヘルハウンド討伐とは少し空気が違う。
警備員の話を盗み聞きしたところ、あの白狼が町に向かっている、と。
「どういう風の吹き回しだぁ・・・?」
変に暴れまわってもらっちゃ困る。西方教会上がりの連中は、
既に今日爆薬を設置しているはずだ。
ただの事故で精霊堂が壊れてしまえば、同情を買われたエーテル教の株が上がりかねない。
なんとか追い出すことはできないか。
「はぁ、面倒なこった…」
ヘルハウンドは一匹、また一匹、町へと入り込んでいった。
想像よりも、状況はひどい。…どうやら俺の評判は「危害を加えてきたら攻撃しろ」
といった生ぬるいものではなく「見つけたら即討伐せよ」とでも言われているかのようだ。
(俺じゃない、後ろで牙をむいている奴に注意しろ…!)
もはや誰がエーテル教徒で、誰がそれ以外か区別もつかない。防御を捨て
視界に入ったヘルハウンドを片っ端から薙ぎ払っていく。
「・・・ひッ・・・!」
恐怖に支配された瞳が俺を刺す。…もう慣れたはずなのに、どこかがちくりと痛んだ。
(流石に消耗しすぎた、どこかでせめて、一息だけでも)
空を仰ぎ、視界を広げる。…、あそこなら、仮に見つかっても理解者がいる。
向かうのは、精霊堂。
- - - - - - - -
「おいあれ、見ろ!まだ生きてるぞ…」
「女の人が怪我してる」
「あの狼、なんで庇ってるんだ…?」
ざわめき、躊躇の声。…誤解は、解けたんだろうか。いや、それはないだろう。
声は出せない、筆談をする余裕はない、チェイネルの怪我の具合も、正直危険だ。
…考えろ。…彼女を人質にするていでこの場を去れば、事は収まるはずだ。
案が浮かんで気が緩んだ、その時。
「エーテル教はあの狼を使役していたんじゃないかァ?」
「何故?」
「ほら、生贄の噂・・・」
「私たちを生贄にささげようとしたって事・・・?」
違う。違う、 違う
「邪教徒ごと殺さなきゃ…こっちが殺される」
違う。違う、 違うんだ
俺は妻を抱えたまま、町を飛び出した。もう、頼れる場所は…司祭ナナのいる場所、トトナナ精霊堂だけだった。
何度も死に掛けては再生し、死に掛けては立ち上がり。体は限界寸前だ。
あの町にいた教徒達も殺されたのかもしれない。明らかに再生する力は弱まっていた。
司祭になんとか妻を預けた後、後ろの騒ぎに振り返る。
…大方、先程まで狼だった俺が人の姿になり出した事を気味悪がっているんだろう。
こんな形で戻りたかった姿になるとは、なんとも滑稽だ。
そろそろ立ち上がることすら精一杯だが、せめて、ここは守りきらなければ。
「誰か・・・だれか。」
白い狼が女性を抱えて、ある建物へ逃げ込んだ。
まだまばらではあるものの、その近辺には武器を持った教徒が押し寄せている。
目は血走り、とても話が出来る状態ではなさそうだ…
■勝利条件
ククル教徒の排除
ヘルハウンドの討伐
■敗北条件
トトナナ精霊堂の崩壊
ビリーの自我残数0
■
精霊堂耐久値 100/100
ククル教徒 314/300 ククル教徒募集進行率 14
ビリーの自我残数 2 白狼討伐任務進行率 0
ナナの防衛陣 毎ターンPC、精霊堂へのダメージを2軽減 エーテル教演説護衛 クリア済
ヘルハウンド 0/100 ヘルハウンド討伐任務 クリア済
- - - - - - - - - - - - - - -
PCは各ターンで以下の行動が可能
・ククル教徒を攻撃、排除する(10面x3を振る)
・PCを回復
治癒系スキル所持者は(10面x1)+20回復可能
その他は回復薬(全回復)1個を所持しているものとする
・耐久値を回復
各自バリケード(耐久値回復10)1個を所持しているものとする
(その他行動案があればそれも可
イラスト:Герои さま
激しい喧騒と無残な跡を踏み抜き歩き、
影を縫って気づかれぬよう、精霊堂の物陰へと忍び込む
騒ぎの中心部 【白狼】の元へ 一度影から姿を現せば恐らく自身も加害者となろう
黒く湿った影から戸惑う事無く這い出して、紅く濡れた瞳を彼へと向ける
…君、この喧騒は この騒ぎは君がやったのか
音を一つ一つ はっきりと聞き取れるように 問う
…エーテル教に、ククル教… 守るべきは、エーテル教
状況を見る限り、君は私が守るべき側 という解釈で構わないのだろうが
細かい説明はこの喧騒を鎮めた後でいい
…奴等の命は 奪ってしまっても構わないのだろうか
血走った目で周囲を睨みながら また一つ
声のするほうへゆらりと顔を向けるも、そこに誰かの姿はない。
気のせいだろうか いや たしかに 声は聞こえる。
聞き覚えがあるかどうかは もう わからないが。
「…ぁ、俺の せい、なのかも な」
「…ころ、すのは、ちがう。追い払う それだけで」
なるほど 詰りは息の根を止めろという事か
弱りきった【彼】を眺めて、その場に立つ
怒声の響く人々を前に、強く拳を握り
人はああなったら駄目だな… 追い払うだなんて生温い
君は… …ビリーと呼ばれていたか
ビリー 悪いな 嫌な質問をした
だがこれはお前だけの所為ではない…と思う
愚者共!! 私が相手になる!!
命が惜しい奴だけ前に出ろ!!
周囲の反する者たちに向け声を荒げた後、ビリーのほうへと向き直り 口元を強く締めた
あれ、は、ビリー!? ちょっと待ってください、僕は状況がまだ飲み込めて…
周囲を見渡す。ミサで見知った顔が何人か、それに加えビリーと見知らぬ女性。
アヴェの記憶では、”魔物に連れ去られた女性がチェイネルなのではないか”ということ。
…まさかその魔物が彼だと言うのか。狼姿のビリーを見たことは一度だけある。
もし、今回もそうだったのだとしたら。
知り合い…
…とりあえず、様子見…か
この状況だ 誰がどういう心境でここに立っているのか
分かったもんじゃない…
今はただ、目前に立ちはだかる下衆を。
この凄惨な有様を ひっくり返すだけだ
「あべー!!」
間の抜けた発音とそれなりに焦燥を含む声色。
全速力で走ってきたのか、ぜいぜい、と。
そのまま何故かアヴェを庇うように前に立った
「えっと……えっと、皆大丈夫?!」
状況は飲み込めないにせよ、のっぴきならないことくらいはわかるようで
お、おおっ…ヴィゾンさん??あの時はお見舞いどうも・・・じゃなくて。
すみません、どうやら仲間があらぬ誤解を受けて
襲撃されているようなんです。…助力、願えますか!?
ジャキ、と硬い金属音と共に大きな銃器が取り出される。
周りにいる彼らは僕と同じククル教という宗派の一般人です、出来れば不殺で!
随分無茶なオーダーだ。
「白い狼を、殺せ!」「殺せ! 殺せ!」
我を失った人々が武器を手に押し寄せるのを、赤坂は呆然と眺める。
古い出来事が頭をかすめる。あの時と同じだった。
級友たちが暴徒と化して、おなじクラスの生徒を血祭りに上げた、あの事件と。
その時『たすけて』と、
そう言ったに違いない彼女に背を向けて、僕は立ち去ったのだった。
───逃げ出したのだった。───
魔物の血を引く彼女に味方なんてしたら、今度は、僕が。
皆の熱に浮かされたような目がただ恐ろしくて。
彼女は僕の友人なんだから、僕のそんな気持ち、きっと分かってくれるって。
分かってくれるよね? 許してくれるよね?
その問いの答えが、彼女の墓から返ってくる筈もなくて。
今、暴徒に囲まれた建物にいるのは、確かに見知った人達で。
あの時と同じ、乾いた喉、震える手、前に進もうとしない足。
必死で、必死で、必死で。
「うあああああああああああああああああああ!!」
手に持っていた珈琲豆を暴徒の足元にばら撒いて。
くるりと踵を返す。……逃げるんじゃない、今度は、逃げるためじゃない。
精霊堂へ近づけそうな物陰を探して、赤坂は建物内部へと。
半泣きになりながら。ビリーさんの無事を確認して。
「ビリー、さん……。
あ、うわ、チェイネルさんも…っ!」
精霊堂の中で治療を受けるチェイネルは、かろうじて息をしていた。
…だがこのまま襲撃を受けて精霊堂という名の砦が壊れれば、容易に想像がつく。
「…あ、か…?」
少年の叫び声に首を傾けると、口が半開きになった。
奇跡でも起きているんだろうか。一呼吸おき、声を絞り出す。
「…妻を…いや、俺達を、助けて、くれ。力を、かしてくれ…!」
ビリーは地面に突き立ったままの大剣を引き抜き、構えなおした。
■防衛戦 開始
◇PCステータス
@白髪の女性 HP 30/30 ダメージボーナス+2
Aメデス HP 30/30 ダメージボーナス+2
Bヴィゾン HP 30/30 ダメージボーナス+2
C赤坂 HP 30/30 治癒スキル所持
Dビリー HP 1/30 ダメージ軽減-2
◇その他
精霊堂耐久値 100/100
ククル教徒 314/300
ビリーの自我残数 2
- - - - - - - - - - - - - - -
ビリーさん死にかけええぇぇぇ
HPを見て半泣き度UP
何とか、頑張ります!
くれぐれも、無茶を、しないでくださいよ…!
治癒の術の準備をしながら。
ヴィゾンさんに、アヴェさん…そ、それと、……し、知らない人たち。
冒険者であればギルドで見かけたことくらいはあったろうか。
よ、よろしくお願いします!
無事に、ぶじに帰れますように…っ!
白髪の女性が手早く、ビリーに包帯を巻いている。 +20回復量
「…勇敢なんだな、君は」
先程、暴徒の中を突っ切って走った事を指してだろうか。
赤坂に向かって微笑んだ。
ゆうかん。ゆうかん。……勇敢? 一瞬何のことか分からなかった。
ああ、どうなんでしょう。僕は。
……「あの場所から逃げる自分から逃げた」、のかもしれませんよ。
どこか自嘲気味に。
あ、あわわ、えっと。あの人達に、攻撃、するんですか?
あの、僕、えっと、ギルドからの命令以外で、こういう、人と戦うのって慣れてなくって。
……あ、あれは、敵、なんですか?
ビリーさん、アヴェさん、そして周りの人達の顔を見て、答えを待つように。
すみません、僕、とりあえずチェイネルさんの回復のお手伝いをさせていただきます…!
用意していた治癒の術を、奥で倒れているチェイネルさんへと。
+20
追い払うだけでもいい…血の気の多い奴は、
他の連中で何とかする。…慣れない事をさせてすまないな、アカサカ。
チェイネルは目を覚まさない。…が、外傷は殆ど消えたようだ。
目を見開き、眼前の教徒を睨む。
ククル教徒へ威嚇攻撃【 】
…さて 来ないならこちらから行かせてもらおうか
不意にゆらりと体を傾け、全速力で忌むべき教徒の群れへと入り込み
間髪を入れずの拳、拳 それから拳
粛清の時だ!! 後悔をする暇も与えぬ!!!
恫喝とも取れる咆哮の後に群がる彼らに向けて
【 】+2
■防衛戦 ターン1 終了
◇PCステータス
@女性 HP 30/30 ダメージボーナス+2 回復薬0
Aメデス HP 21/30 ダメージボーナス+2
Bヴィゾン HP 30/30 ダメージボーナス+2
C赤坂 HP 30/30 治癒スキル所持
Dビリー HP 30/30 ダメージ軽減-2
◇その他
精霊堂耐久値 91/100
ククル教徒 282/300
ビリーの自我残数 2
ナナの防衛陣 PC、精霊堂へのダメージ軽減-2
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
精霊堂を取り囲むククル教徒が一斉に攻撃を始める。
白髪の女性は相手の武器を、ひとつひとつ壊して、その数を減らしていく。
【 】+2
ヴィゾンの行動:ククル教徒を攻撃、排除する
ダイス:【 】+2
「こういうの、嫌い。」
暴徒にも似た人々と、倒れる男女二人
いつかどこかで見た光景にそれは似ていたか
至極不機嫌そうに、笑みは消えた
振るわれる異形の証が一度、二度と
…………威嚇、というワケですね。了解、です…。
しばらく目を閉じて集中すると、光の剣を掌に。
【 】
空へと登った光の剣は、小さくばらばらと教徒達の元へと降り注ぐ。
前線の血の気の多い者たちの、熱につられてやってきた人々の頭が冷えますように。
遠くから援護射撃が飛んでくる。…アヴェだ。
みなさん!後方支援は任せてください!!!
僕は相手の武器を狙ってみます!
【!】アヴェが行動順Eに参戦した。
ククル教徒へ威嚇射撃【 】+2
■防衛戦 ターン2 終了
◇PCステータス
@女性 HP 30/30 ダメージボーナス+2 回復薬0
Aメデス HP 21/30 ダメージボーナス+2
Bヴィゾン HP 30/30 ダメージボーナス+2
C赤坂 HP 30/30 治癒スキル所持
Dビリー HP 21/30 ダメージ軽減-2
◇その他
精霊堂耐久値 84/100
ククル教徒 202/300
ビリーの自我残数 2
ナナの防衛陣 PC、精霊堂へのダメージ軽減-2
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
アヴェの援護の声が心強く響く。
しかし……ビリーの苦しそうな態度に白髪の女性は表情を曇らせた。
外傷以上に衰弱しているように見える。
心配しつつも、今は目の前の敵の武器へと攻撃目標を定めて。
ククル教徒の武器破壊【 】+2
…ふっ
この数の暴徒を相手に、予想以上に力を浪費していた現在
後方支援は有難いと 拳を振りぬきつつ思う
炎を纏う左の手のひらは 生かす猶予を与えぬ当身となり 薙がれる
一匹たりとも逃してたまるか…!!
【 】+2
ヴィゾンの行動:ククル教徒を攻撃、排除する
ダイス:【 】+2
目の前の者達を押しのけ押しのけ
さて、ここに居る化物は自分だけでは無いかと
記憶と照らしあわせ、ふと思い浮かぶ事はどうしようも無くぐるぐると
湧き上がる行き場のない感情を籠め、強く地面へ叩き付けられる左
其の化物の姿は偶然、威嚇になったかもしれない
集中、集中……。
喧騒に精神を乱されそうになりながら。
敵も、味方も、あまり被害が出ませんように、なんて甘いことを祈りながら。
……祈る、対象? この場合、エーテル教の神様に、なるのだろうか。
月の神様にしておこう。
今だけは、あなたを信じます。どうか、お願いします。
■ビリーさんに治癒魔法
+20
悪い、このくらいの怪我なら、まだ、大丈夫だ。
治癒魔法に気付くと、体勢はそのままに目線を送る。
加護が薄れている状況下で自己治癒もままならなかったが…少しだけ、
身体が軽くなった気がした。
→HP 30/30
まだ気は抜けない、体勢を整える
→メデスへ回復薬を投げる
スコープを覗き込む。遠方には、怖気づきながらも数で攻め立てる同胞の姿があった。
誤射をしないことには自身があるものの、一般市民へ銃口を向けるのは気が引ける。
あなたたちは視野が狭すぎる。…かつて僕もそうだったように
ククル教徒へ威嚇射撃【 】+2
■防衛戦 ターン3 終了
◇PCステータス
@女性 HP 17/30 ダメージボーナス+2 回復薬0
Aメデス HP 30/30 ダメージボーナス+2
Bヴィゾン HP 30/30 ダメージボーナス+2
C赤坂 HP 30/30 治癒スキル所持
Dビリー HP 30/30 ダメージ軽減-2 回復薬0
Eアヴェ HP 30/30 ダメージボーナス+2 回復薬0 バリケード0
◇その他
精霊堂耐久値 71/100
ククル教徒 134/300
ビリーの自我残数 2
ナナの防衛陣 PC、精霊堂へのダメージ軽減-2
押し返している。そう思った時、前で戦う女性の後頭部へと振り下ろされた武器。
……彼女は攻撃を受けながらも、相手の武器を奪い取った。
【 】+2
視野…
自分の呟きにはっと息を呑む。この場はビリーに目が行きがちだが、そもそも何故ギルド方面の精霊堂が”崩壊”したのか。彼が逃げ込んだからといって爆発物を投げたところで、その被害はビリーだけに留まらない事は容易に想像がつくはず。
まさか、狙いはビリーじゃなく・・・エーテル教徒?
考えが甘かったようですね…すみません皆さん、ここの防衛は任せます!
僕はギルドへ、急ぎ報告することができました・・・!!終わったら、すぐに合流します!
【!】アヴェがパーティから離脱しました
恐らく後方から、それなりに効き目のある回復薬が。
元より回復力の高いメデスの傷は相乗効果で大きく癒えた
…チッ 誰だか知らんが、一応感謝しておくぞ
だが、顔を見て礼を言えるほどの…状況では、無いッ な!
群がる教徒に拳を放つ しかし数が数だけに体を圧され
思うように振りぬけない それでも尚、仕留めるタメの 殺意の拳
【 】+2
びくびくと暴徒たちの方を覗くと、前線で戦う凛々しい女性が殴りかかられている所が目に入る。
……女性に、後ろから、とか…。
思わず抗議のつぶやきが漏れるが…
まぁ女性と見て侮らぬ、彼らの方を褒めるべきところなのかもしれない。
双方、恐らく手加減なんてしている余裕は、無いのだろうから。
■白髪の女性に治癒魔法
+20
■防衛戦 ターン4 終了
◇PCステータス
@女性 HP 30/30 ダメージボーナス+2 回復薬0
Aメデス HP 30/30 ダメージボーナス+2
Bヴィゾン HP 30/30 ダメージボーナス+2
C赤坂 HP 17/30 治癒スキル所持
Dビリー HP 30/30 回復薬0
◇その他
精霊堂耐久値 58/100
ククル教徒 72/300
ビリーの自我残数 2
ナナの防衛陣 PC、精霊堂へのダメージ軽減-2
赤坂の術で傷が癒えた女性は尚も前線で。
まっすぐ前を見て戦う姿はとても凛々しく美しく見えた。
【 】
渾身の当身を外しこころなしか羞恥の心を感じるも
照れている場合ではない 彼らの猛攻は止まらないのだから
おいおいおいおい…いい加減にしてくれよ…
そんなにいきり立った所で状況は変わらんぞ下衆共
【 】+2
身を乗り出しすぎたか、投げつけられた何かが頭に当たる。
くらりと、めまいの後、痛みと、そして血が。
す、すみません、おとなしく隠れてますっ!
ちらりと、そこにふらつきながらも立つビリーさんに目をやった。
足手まといにだけはならないようにしないと。
こんなになっても、みんなを護ろうとする人だから。
赤坂に治癒
+20
気を抜いてはいないはずだが、どうも身体がついていかず、
駆けつけた者たちに攻撃が流れていく。・・・これでは守られているのは俺か。
「・・・真後ろにいろ、少しは、凌げる」
相手の数は随分減ったものの、司祭が張った防御陣もそろそろ限界だ。
ククル教徒へ威嚇攻撃【 】
■防衛戦 ターン5 終了
◇PCステータス
@女性 HP 30/30 ダメージボーナス+2 回復薬0
Aメデス HP 30/30 ダメージボーナス+2
Bヴィゾン HP 30/30 ダメージボーナス+2
C赤坂 HP 0/30 治癒スキル所持
Dビリー HP 11/30 回復薬0
◇その他
精霊堂耐久値 39/100
ククル教徒 0/300
ビリーの自我残数 2
- - - - - - - - - - - - - ◇Clear
「・・・・・・!!」
後方を振り返ったと同時に、爆風が精霊堂を襲う。いくらか自分の皮膚を焼いていったが、
全身には至らず無事だった。・・・だが、先程声をかけたはずの少年が視界にいない。
「…生きてるか…!?」
自分の手に回復手段は残っていない。…彼は無事だろうか。
耳をつんざくような爆音。
熱い風から自分をかばうように立つ大きな身体が。
そんな風に、傷付くことすら恐れずに何かを護れる、そんな人間に生まれたかった。
後ろで耳をふさいで、ただ小さくなっているだけの僕は、
衝撃に崩れた瓦礫を避けられる筈もなく。
どうやら降り注ぐ欠片のひとつに頭を打ち付けたらしい。
暗転する視界に、自分に向けられた声だけが届く。
……ごめん、なさい。やっぱり、足手まといに……。
聞こえるか聞こえないか、消えそうな声しか出ない。
ビリー、さ、……回復しなきゃ・・
今ので彼も怪我をしてる筈。何だかずっと苦しそうだった。
治癒の魔法を。僕に出来る事といえば、そのくらいしか。
しかしそのまま意識は闇へと落ちて。
…ただひとつ、出来ること。それを実行する事すら叶わなかったのだ。
赤坂が行動不能になりました
イラスト:かげつき
地へ突っ伏した赤坂が瞳に映る。一瞬、心臓を押さえるけられたような感覚が巡った。
慌てて赤坂のそばにしゃがみこむ。
「…打撲…以外は大丈夫そうだ、な」
ひとまず息はあることを確認して、安堵のため息。
ただでは死なぬ…か しかし火は消えたようだ
呆れた瞳を凄惨な土地へ向けた
無残に転がる惨死体 焼けた血の匂い それから
…メガネの。 大丈夫だろうか
こころにもない言葉を呟き、彼の元へ
一瞥し、その場にドカリと座り込んだ
…後始末 状況把握 片付いていない問題は山ほど、だが
とりあえずはひと段落だな
辺りを眺めながら 薄気味悪く微笑んだ
メデスに顔を向けて口を開く。…そういえば名前を聞いていない、なんと声をかけたものか。
「そこの・・・赤目の。エーテル教の人間じゃないようだが、助かった。助けついでに悪いんだが、何か治癒効果のあるものは持ってないか。」
「アカサカに」と一言付け加え、立ち上がった。
・・・普段武器を扱うことを不得手とする一般人が爆薬を持ち込んだのだ、
自陣以外にも相当の被害が及んだらしい。
焦げた臭いをまとう煙以外に、こちらへ向かってくるものはいなかった。
暫く遠くを眺めた後、思い出したように加勢者の方へ向き直る。
「巻き込んで、すまない…なんと説明したもんか。……その上このザマときたら…墓守失格だ」
緊張が解けたせいか、怪我のせいか。最後はほとんど聞こえないくらいの呟きだ。
髪の結び目を解くとパラパラ 白い髪色は黄金色に 頬や首下の傷は透けていくように見えなくなって
…あぁ 私か そういえば、傷薬を持っていたな… 気が利かなくてすまない
一つ溜息をし、横たわる赤坂に傷薬を丁寧に練りこんだ 打撲に障らないよう ゆっくりと
……うん いや 全くだ …どうにかしてでも説明して欲しいものだよ
処置を終えた彼女がぼそりと口を開いた
私は…あぁ メデスというのだが、司祭の護衛任務の延長戦でここにいるようなものでな
実を言うとそれ以外のことはからっきしで。
ビリーの方に向き直り、恥ずかしげに笑顔を見せ
……うー……
暫し気分が悪そうに座り込むも、一段落したと気づけば立ち上がる
えーと、聞きたいことはいっっぱい!あるんだけど。
皆やっぱり怪我してるし……あんまり此処に居たくないし、
一回落ち着ける場所に行きたい、かなぁ。
一先ずは防ぎ切れた、と見て良いのだろうか。 皆、浮かぬ顔だ。
メデスの顔をまじまじと見ながらも、表情は変えず
「あー、そうしたい、ところだが」
立ち上がるヴィゾンにちらと目をやる。自分以外の消耗も相当のようだ。
彼女の意見に乗って損はないだろう。正直自分もこれ以上立っていられる気がしない。
「そうだな。礼と説明は、また今度…ああ、…移動先ならいくつか心当たりが。」
半壊の精霊堂を残して、人々は去っていく。
夕日に照らされたガラスの破片があちこちに反射し、
崩れた瓦礫の輪郭が浮き上がっていた。
風が夜を招き、静寂が訪れる・・・。
------------------
家の中は静まり返っていた。あんな事件があったのだ、無理もない。
だがそれ以上にいろんな話が頭を駆け回り、子供達の頭は混乱していた。
ククル教徒達が、自分たちをよく思っていなかったこと。
彼らが白狼の出現に乗じて精霊堂を爆破したこと。
そのせいで、母が瓦礫の下敷きになりかけたこと。
それを守ったのが、白狼だったこと。
・・・その狼が、父だったこと。
「ねえ、お兄ちゃん」
「…」
妹が兄に言葉を投げかける。・・・が、返事はない。僅かな反応といえば、部屋の隅で蹲る手の力が強くなるだけだった。
「ママ、もうすこしで帰ってくるんだってアヴェさんがいってたよ。
ねえお兄ちゃん。ママの分のゴハンも一緒に作ろうよ」
「…」
「お兄ちゃんって」
「うるさいな!わかってるよ!!!…なんでマナはヘーキなんだよ。
あんなの父さんじゃねーよ!!!父さんは俺達をおいてでてったんだろ!!!
今更アレが父親ですって言われて、信じられるか!とっくに死んだに決まってる!!!」
怒鳴り声が部屋に響く。それをなだめる大人は、この家にいなかった。
マナは一瞬泣き出しそうになった目をぎゅっと瞑って、声を絞る。
「…私たちを置いていっちゃったのかもしれない、けど。」
「パパが助けに来てくれたのは、ほんとのこと、なんだよ」
「…」
夕日に照らされた2人は、暫くそのまま動かなかった。
------------------
控えめなノック音が玄関に響く。数秒後に見慣れた頭がひょっこりと
「こんにちはー・・・赤坂君、いらっしゃいますか〜?」
手には小さなバスケット、腕にはガーゼ。どうやら怪我が治ってすぐ動き回っているようだ
ん、ああ、お久しぶりであるな。
……詳しい話は聞いていないのだが、色々大変であったとか。
少し待っていてくれ給え。…宜しければ、中へ。と、椅子をひとつ、示しつつ。
──赤坂殿な。頭を打ったというので安静にさせているのだが
取り敢えず大事は無いらしいぞ。安心してくれ給え。
頭に包帯を巻いた赤坂が、呼ばれてのろのろと出てくる。
あ! チェイネルさん。どうも。動きまわって大丈夫なんですか?
自分はクラン員にかなり行動を制限されているというのに。
チェイネルさんも酷い怪我だったはず。と心配そうに。
赤坂の姿を確認すると慌てて駆け寄った。
「あ、赤坂さん!よかった、思ったより元気そうで…
私は大丈夫、ほ、ほら。赤坂さんも治療してくれた、みたいだし。」
そう言うと、手を広げて動けることをアピールしてみせた。
「あはは、私ってば肝心な時に寝ちゃってたんですよね。助けてくれて、本当にありがとうございました」
僕も、騒ぐほどのものじゃ、ないみたいです。頭なので大事を取って、という事で。
包帯を指して苦笑してみせる。
チェイネルさんも無事でよかった。倒れているのを見た時にはどうしようかと。
……少しでも、お役に立ててれば、嬉しいです。
それより…。
あの後、僕 運ばれちゃったんで、一体どうなったのか把握出来てないんですけど…。
皆さんどうしておられますか? 僕を助けてくださった方もいらっしゃったようで。
動けるようになったら、お礼に、行かないと…。
あと…ビリーさんの姿が。久し振りにもふもふしてなかったんですが。
嫌な予感が、するのだ。
「そうですね・・・頭って少し切っちゃうだけでも凄くどばっと。<あ、あわわ、自分で言ってて怖くなっちゃいました。いけないいけない」
両手と首を交互に振り、話題を戻す
「今のところクランにいたエーテル教徒は、場所を移して集まっていますね。・・・ほら、あんな騒動があったわけですし、周りの目線がちょっと気になって。他に加勢してくれたって方は、おうちに戻っていかれたみたいですよ。私も動けるようになったのは最近なので・・・まだ皆さんの所へはこれから、といった具合かな」
ビリーに話題に移ったところで目を瞬かせると、視線から逃れるように辺りを見回す
「あ、えーっと、夫は、ですね。そうなんですよ、戻ったみたいなんです!びっくり!精霊様が見ててくれたのかな!?えー、と、今はまだ怪我の具合がよくなくって、寝てます、けど、ほら大丈夫です。大丈夫・・・」
丁度夏祭りのお知らせに目が留まると、それを指差し
「お、お祭りなんてやってるんですね!いいなぁお祭り!みんなで遊びに行こうかな」
お祭り、天野が先に行ってたみたいですが、楽しいお店がいっぱいだって聞きました。
是非楽しんできてくださいよ。エーテル教の皆さんも…、
あんな事があった直後で、しかも別の「神様」みたいなのがいる場所ですけれど、
気分転換になれば、是非。
たまに時空が歪んで、……別の時間軸の人が遊びに来る、なんて、
そんな噂も飛び交ってるんですよ。
赤坂の話をじっと聞いている。お祭り自体には大いに興味があるらしい。
「そう・・・ですね、催し物を用意するような余裕がないですし、みんなの気も、はれるかな。・・・お話してみます!」
えぇ、是非皆さんで。
笑顔で相槌を打っていたが、会話が一瞬途切れたのを見計らって一歩前へと。
逸らされた話題の矛先を、彼へと戻す。真剣な瞳で。
……チェイネルさん。僕が心配してるのは…。
えっと、狼のビリーさんって、何ていうか…、回復力とかすごかったじゃないですか。
つまりその、狼の姿である事によるアドバンテージが、その、
…失われているんじゃないかっていう、心配なんです。
彼女が目線を逸らしたその先に回り込んで、真っ直ぐに目を見ようと。
──ねぇ、チェイネルさん。
ビリーさんに、お会いできますか?
回り込まれた赤坂から目を離すことが出来ず、表情が引きつる
「そ、そう、ですよね。…身体の事については、本人が一番わかっていると思います。今は町外れの使われなくなった教会を、壊れた精霊堂代わりに使っていて。そこで治療しているところ、です。」
……今から、行きます。
地図を、描いてもらってもいいですか?
未だにずきりと痛む頭に顔をしかめて、立ち上がる。
駄目だ。
赤坂に向かってぴしゃりと、言い放つ。
赤坂殿。君はこのくらんの大切な人員なのだぞ。
医者が良いと言うまで、遠出は許さぬ。
うぅ。
不満そうに天野の顔を上目遣いに睨んでみるが、ギロリと睨み返されて目を逸らす。
では…もう暫く。動けるようになったら、すぐに! 伺います…。
──チェイネルさんこそ、動きまわってるけど大丈夫なんです?
人の心配ばかりの彼女に、苦笑して。
「私はこう見えて丈夫なんですよ〜 フンフンと握りこぶしに力を入れるが、全く変わらない
走らなければ全く体調に影響ないし。心配してくれてありがとう。・・・と、長居してしまいましたね。これ、精霊堂で調合した薬草です。味は―保障できませんが、ここの薬は効能がいいのでよかったら。食べ物にまぜて、ごまかしてもいいかも…?」
差し出した籠には、薬草の粉末が入った色とりどりの小瓶が顔を覗かせている。
顔を近づければ少々クセのある臭いが漂ってきそうだ・・・
「じゃ、お祭りのお知らせの写しをもらっていくね。くれぐれも無理せず・・・!おだいじに・・・!」
赤坂に手を振りドアに手をかける
薬、苦手……って言ったら、笑います?
あぁ、いえ、ちゃんと飲みますよ。ありがとうございます。
苦笑しつつ地図と籠を受け取る。
うぅ、臭いからして。と躊躇したりして。
えぇ、ありがとうございます。そちらこそ、お大事に。
……お祭りの方でも、お会いできるのを楽しみに、してますね。
手を振って、後ろ姿を見送った。
焦る気持ちを何とかなだめて。 外出許可がでるまでの時間が、ひどく長いものに感じた。