いちばんに伝えたい
第ニ期:恋人
(誕生日を。日付が変わるその瞬間を一緒に迎えたいという俺のワガママで、こうして前日からアノチェを連れ出した。きんと冷えた空気の中でも、手を繋いで歩くと、触れたところから暖かくて)
ね、アノチェ、寒くない? どっか行きたいトコある?
俺っちね、こう、ほら。夜景とか見たり、したいな。
(いわゆる定番デートコース☆みたいなのを夢想してるっぽい)
(クリスマスの華やぐ街並み、お祭り気分に浮かれた人々、既に二人の世界に入っているカップル達。
そんな風景の中に自分達がいるのが夢みたいで、繋いだ手に引かれて顔を赤くしたまま半歩後ろから着いていく)
うん、大丈夫…!<
み、見たいところ…?
……わ、私、テルプとなら何処でも楽しいけど…(暫く考えて)
大きなツリー…見たい…かな。
そんでさ、…んでさ。
今日、明日まで、一緒で、大丈夫?
うん。世界中の誰よりも早く、18歳のアノチェにおめでとうって、言って、
誰も知らない18歳のアノチェを、朝まで独り占めして。いっぱい、愛したい。
(後半は耳に口を寄せ、人混みの中、2人だけの大切な秘密の話みたいに)
(後半に囁かれた言葉の意味を、今の彼女は知っていて。その事を想像して顔が更に赤くなった。やかんでも置けば沸騰しそうだ。甘い言葉を大好きな彼の声で耳元に囁かれ身動ぎをする)
ん…っ!
て、テルプ、あ、あの、て…テルプの声…好きだからえと…その…。耳元…。
な、なんでも…ない…。
頬を赤らめるアノチェににっこりと、普段の笑みを返す。
えっと、大きいツリーね!
じゃあ、教会前広場だ!
(先程までの甘ったるい笑顔から一転、子供の様にはしゃぎながら。手を引いて駆け出す。付いて来れる様に、スピードを加減して)
う、うん!
つ、ツリー、見に行こ?
(手を引かれ、駆け出す。弾む息の合間に疑問に思っていたことを)
ね、ねえ、ま、前から気になってたけど、テルプはどうして、私をノチェって呼ぶの…?
わ、私、そういう風に呼ばれるの、初めてだから…。
えっ「どうして」? ……なんでだろ。 ──嫌だった?
う、ううん!
え、えと…逆…。
その…て、テルプしかそう呼ばないから…その…「きゅう」…ってするの…。
だ、だから嫌じゃない……よ。
わ、私も…違う呼び方してみたい…な(ぽそり)
…違う呼び方? うーん、既に3文字だしなぁ。テ…テル? ルプ? 呼びやすい様に、いいよ? ……だ、ダーリンとか? (自分で言ってみて、どんな顔すればいいか分からない様な態度で赤面している)
だっ…!だー…りん?!
さ、流石にその…は、恥ずかしい…よ…。
そ、その、お、思いつかないし、
う、うん…テルプは…テルプ…って気がするから…。
や、やっぱり、今のままで、呼ぶね…。
(教会広場の前に着く。人がごった返す中、大きなツリーがそびえたっていて。見事な星がツリーの頂上で煌いていた。まぶしそうに…懐かしそうにそれを見ている)
(何故そんな提案をした自分んんんんんうわあああああ)
うん、その、何か思いついたら、好きに、呼んでくれていいよ…。
(頭を抱えたい気分になりつつ。……問われて初めて自分が「ノチェ」と呼ぶ心理を考えてみる。特に理由は無い、何となく、の気がしていたけれど。)
……少しでも、早く、アノチェを全部呼びたいから。……かな。
一刻でも、先に、俺のもの! って、したい。から。多分。
だからホントはさ。何も、言わずに、キスするだけでも、いい。
(人の目も気にせずキスを迫ろうとしつつ)
──ツリー、好きなの?
(キスを迫られて「人目が恥ずかしい」という思いと「キスを拒みたくない」という思いが交錯した結果、自分のマフラーの端を二人の口元に)
え、えと…ね。
わ、私、拾われる前、ずっと下ばっかり見てて…。
おばさんが保護してくれた時に、初めて上を見たの。
そ、そしたら、ツリーの星が見えて…。凄く…綺麗で…。
おばさんがね、そんな私達を見て、明星が浮かんだんだって。
そ、それで、暁(アルバ)と宵(アノチェセル)。
だ、だから、今は好き。
(マフラーで隠された、…世界から切り離された、ほんの小さな、ふたりきりの空間。柔らかい温もりに包まれて、もっと柔らかく暖かい彼女の唇に、自分のを重ねて──。2人で、ツリーの上の星を見上げる。てっぺんに大きく光るあの星を)
そっか、じゃあ、今年から、俺っちにとっても特別な星だな。あれは。
来年も、再来年も、ずっと先も。俺の大切な星。
……忘れないって、こういう事なんだろう。
(例え世界が終わっても、ずっとだ。
ぎゅっと、繋いだ手を握る)
イラスト:かげつき
(見上げた星を「大切な星」と言ってくれたことに嬉しそうに微笑むと、手を握り返した)
…へへ…ありがとう…。
…テルプは砂漠の…南の出身なんだよね?
…こういうお祭りはないのかな…?
俺っちの村は、…祭と言えるようなのは、前に話した春の祭、だけだな。
マッカの方の祭は、多分部族ごとに違うんじゃないかな。
それこそ年中お祭りやってるようなトコもあるかもだし、……
街の方では、こっちとあんまり変わんないよ? ツリーも飾るし。
東西南の文化が入り混じってるから、こっち程大規模でもないけど。
(誰と見たのかよく覚えてはいないけど。…それは寂しい事なのだろうか)
…そうなんだ?
さ、砂漠の町のツリーも、素敵だね!
わ、私ね…テルプが考えてる事、思ったこと、過ごした事…無駄になるかもしれないけれど、紙に書いてるんだ。
そしたら…もし、テルプが見失っても…わ、私が覚えていれば…って…。
お、おこがましい…かな…(えへへと笑い)で、でも、私がそうしたいんだ…。
だ、だから、もっといっぱい、話して?テルプのお話、もっと聞きたい。
ね、ねえ、次、どこいく?
(ふわりと、彼女の優しい顔が街灯りに照らされる)
(どこ行こう? ふたりなら何処でもいい。何となく人並みに流されて、夜景の見える高台まで来てみたけれど彼女が隣にいると、今まで見たどんな景色よりも綺麗で。月並みな感想だけれど、それ以上に、彼女を見ていたくて)
……いつも、さ。
アノチェに、いろんな話したいし、色んな事、聞きたい。…のに。
俺っちさ、君のそばにいると、何も要らなくなっちゃうんだ。
こんなに想いは胸に溢れてるっていうのに、
ああ、もうほら。大好き、しか。言葉にならない。
紙に書ききれないくらい、たくさん、大好きって言っていい?
ね、大好き、大好き、だいすきだよノチェ。
…どこに行きたいかって、俺ね、もう、今すぐふたりきりになりたい。
(目をぱちくりとすると、微笑んで、彼女は歌を口ずさんだ。それは、初めて想いが通じ合った時に歌った、愛のフレーズの繰り返し。暫くそれを口ずさんだ後、彼女はこう呟いた)
うん…。いっぱい言って。わ、私もいっぱい言うから。
いっぱい、歌う。貴方への愛を歌うよ。
(愛しているよと)
…こんな時だけど、何時も、どんな時も、側に居るね。
だ、だから、連れて行って。
…テルプ。
(二人きりの所へ)
……その歌を、一緒に歌った事を、ふたりの夜を。
君貰ったもの。俺のもの。来年も、再来年も。ずっと先も。
今日の日を。──忘れない。
(誓うように、祈るように)
……行くよ。
(彼女と歩幅を合わせゆっくりと歩き出して、その手をしっかりと繋ぎ直した)
*・゜゜・*:.。..。.:*・゜。*・゜゜・*:.。..。.:*・゜。
砂漠の方はさ。水が貴重でしょ?
前も言ったっけ、俺っちの村は風呂なんて無かったんだけど、
街の方では、サウナがあって。…部屋を蒸気でいっぱいにしてさ、
サウナのおっちゃんがゴシゴシ体こすってきれいにしてくれるんだよ。
やられてる時はもう、超〜〜〜痛いんだけど、後で体がすごく軽くなる。
そこ行くのもごくまれに、って感じだけど。
それを思えばこんな風にお湯いっぱい使って、すごいよねぇ。
でもまぁ、外寒いもんねぇ。温まると気持ちいいもんだねぇ…。
(湯船に体を沈めて、ほぉ、と息をつく)
アノチェ? 早くおいでよ。 アーノーチェー♪
(いつだったか、風呂が苦手な彼を洗ったことがあった時「アノチェが居るなら入る」と言ったことを、思い出して……提案をしたつもりが、一緒に入ることになって… 更に風呂が苦手なはずの彼が嬉々として湯船に浸かっている。覚悟を決めるもタオルで体を巻いて、視線はなるべく合わせないようにおずおずと入ってくる)
う、うん…。
は、恥ずかしいから、あ、あんまり見ないでね…。
(と、湯船に浸かると彼と反対方向の端にちょこんと体育座りで身を丸めた。温まってるからなのか、照れからなのか分からないほど顔が赤い)
…そっかぁ。サウナだったら少ない水で身体洗えるもんね…。
わ、私のところは、水より火…かな…。
み、水は川からとか、雪を溶かして利用できるけど…火がないと暖を取れなくて凍死しちゃうから…。
…必要なものを、半分ずつ分け合えたらいいのにね…。
(ざぁ、と浴槽の淵から水が零れる)
…あ、テルプ…。
あ、あの…ま、前みたいに髪洗おうか?
(提案を受け入れるも、別の提案をするもご自由に。今の彼女なら大抵の無茶は受け入れてくれるだろう)
火、か…。俺っちの村の山には火の海があって、熱には困らなかったな。
そのかわり昼間きついけど。(思い出してうんざりしたような表情に)
分け合える、か。そうだね。分け合えればいい。
ずっと欲しかったものが溢れるほどある場所ってのは。……何というか。
(両手でお湯を汲んで)……何を思えばいいのか、わからないな…。
(タオルをターバンの様に巻きつけて、いかにも髪は洗う気がなさそうな装備で。髪を洗おうかと問われると躊躇して)
ね、それより、さ。しっかり、あったまろ?
(離れて座っているアノチェにつつつと近づいて、後ろから抱きしめようと)
(逃げるつもりは無いのに、余りにもドキドキして逃げ腰になってしまう。しかも端なのでドンドン近づかれて)
う…うん…。
(結局、後ろから抱き締められて腕の中に収まってしまった)
(背中越しに伝わる感触に更に鼓動が激しくなって)
て、テルプ…お風呂に金属類持ってくと錆びちゃうよ…?
も、勿体無いなあ…手入れしたら、もっと綺麗なのに…。髪の毛…。
(鼓動を鎮めようと逸らされた話題をまた持ち出して…意味もなく注意をしたりして、相変わらず、縮こまったままだ)
錆? ……うん、だいぶ痛んできたから、新しいの作らなくちゃだな…。
ノチェは、綺麗だよね、髪。ふわふわで、いつもいいにおいして、大好き。
(後ろから抱きしめていると丁度、口元に彼女の後頭部が来るものだから、キスしてみたり、もぐもぐ食んでみたり、その度に固まってるアノチェが可笑しくも可愛らしくて。キスは耳や首筋へとエスカレートしていく)
……俺が綺麗にしてたら、アノチェうれしい?
そ、そうかな…?
と、特になにもしてな…んっ…!そ、そこくすぐったい…!
(大胆な場所に口付けされてあられもない声を出してしまいそうになるのを必死で堪える)
え、えと…。
き、綺麗にしたいっていうのは…わ、私のわがままだから…。た、確かに嬉しいけど…。
そ、そのままのテルプが好き…だよ…?
(後ろのテルプに可能な限り振り返ってそう答える)
──ワガママ言ってよ。
ね、俺っち、アノチェにすごく愛されてるの、分かってるよ?
だからさ、そんなワガママで、傷付いたり、嫌いになったりなんてしないから。
ノチェは、俺にだけは、いっぱいワガママ言ってもいいんだぜ?
(ようやくこちらを向いた、濡れた髪がかかる上気した顔を逃がさないように
、捕まえて、正面から抱きしめるように引き寄せようと)
(くるりと体の方向を変えられ、向かい合う。じっと、テルプの顔を見詰めて)
―わ、私がわがままって思うのは…私が…そうやってテルプの心に踏み込んで、傷つけてしまうのが怖くて…。
そ、それなのに、踏み込みたいって思う私もいて…。
だ、だから、わがままだって…思って…。
で、でも、わがまま(それ)が許されるなら…。
鈴を外して欲しいな…って…。
(と、テルプの髪についている、湿気を帯びていて鳴らない鈴(それ)を触って呟いた)
…ま、前に、鈴が無いと不安で仕方ないって…言ってたよね…。
…わ、私…テルプの不安とか…痛いって思うこととか…そういうの…含めて、丸ごと愛したい。
う、うまく…言えないけれど…。
き、聞いてくれなくてもぜ、全然いいから。
…………。
(じっと黙ってアノチェの話を聞いて。ゆっくり目を閉じると、身を任せるように身体の力を抜いて頭を垂れる)
君の、手で、外して欲しい。
──君の、欲望で、俺を、裸にして?
(こくり、と頷くと、一つ一つ丁寧に鈴を外していく。目の前の彼は衣類を脱いでいるのに…裸なのに… 鈴を外す行為が彼を纏っているものを脱がしているように感じられて。最後の一つを外すと、纏めてサイドに置いた)
…はずした…よ。
…ありがとう…テルプ。
(わがままをきいてくれた彼に感謝をこめて、その髪に口付けをしようと)
(ビクと、小さく身体を震わせて、不安げにアノチェに手を伸ばして。それでも身を委ねるように力を抜き)
ね、キスして。
(自分の唇を指して、彼女からの愛をねだる)
君が、俺を求めてくれて、本当に嬉しいんだ。
ね、…こっちも。いい?
(もっともっとたくさんのキスを、俺へと。虚飾をすべて取り去った、何も無い場所に、彼女の愛が満ちていくようで。与えられる、その愛情とよろこびに震えながら、もっと、と)
(口付けの合間に、頷いて返事をする)
うん。
だ…だいすき…だよ…。
何度だって…言うから…。
だいすき。
(いつの間にやら彼へ愛を注ぐうちに恥じらいも忘れて、腕をそっとまわして、抱きついた。求められて、求めるのなら。その、返しの、言葉を)
頂戴…。
(世界中の音が消える。彼女の声以外は聞こえなくなる。そうだった。彼女といれば鈴の音も、とっくに必要なくなっていたのだ。恐れる事は何もなく、ただ求め合うだけ)
あいしてる。
(何も飾らぬ身体を重ねて。すべて与えられるようにと願いを込めて抱きしめる。そのまま、濡れたままの身体を抱き上げて)
──ベッド行こうか。
愛し合う最中に、その指にはめられた指輪と、将来の約束。
イラスト:かげつき
-----------------------------
ん……
(もう昼近いのではないか。差し込む陽の光を見てそう思う。隣に眠るアノチェの髪を撫でると、ん、と小さく可愛らしい声を上げた。
その彼女の、左手の薬指に。深い紫の輝きを宿した青い石が光るのを見て、昨日の夜の約束が、幻で無い事を確かに、知るのだ。)
「ねぇ、アノチェ。結婚しようよ。
今すぐはまだ難しいかもしれないけど。
約束、しよ?」
(口元が緩む。
身体を起こそうとして、いつもの音がしない事に、無意識に鈴を探す。心の奥の奥から湧き出てくるような不安は、いつもよりも遠くて。あの音が要らなくなる日も、近いのではないかと思う。
どんな悲しいことも、彼女が居れば、と)
…ん…、ごはん…。
(子供達の朝ごはんの事を言っているのだろう、寝ぼけながら無意識に身体を起こすと)
〜〜〜〜〜〜〜!
(気だるい感覚と、腰の重さと、体中に付けられた証に気付いて…一晩中満たしあった事を思い出し、顔を真っ赤にして布団にまた潜り込んだ。それから、左手に嵌められた指輪を陽の光にかざして見る。緩やかな曲線を描くラインは水面のようで。輝く石は夕闇を映しているみたいだ)
「うん。
い、今は難しくても、
約束、する。
…待ってて。
か、必ず、テルプの元に、行くから…」
(直ぐは難しくても、今言える言葉を。誓うようにその指輪をそっと撫でて、隣の彼に微笑んだ)
-------------
ふたり、ふらつく足で。身体は疲れてても、心は満たされていて。消えてしまうものでいいと思ってた。
交わる視線と、笑顔と、温もりと、歌声で。十分だと思っていたけれど
交わした約束の形が、彼女の指に輝くのを見た。これは決して消えない、確かな証だ。
しっかりと手を繋いで、彼女を待つ人のいる場所へと送り届けた。 そこから彼女を奪うという意味を、考えながら)
-------------
で、どうだった。渡せたのか?
(無言でサムズアップ)
え? なんです?
アノチェセルさんとお出かけだったんですよね?
最近てるぷ殿が根を詰めて作業しておっただろう。
あのちぇせる殿へ贈る指輪を作っていたのを、知らぬのか。
結婚も申し込んできたんだぜ♪
え?
アルバにも改めて挨拶に行くべきだよなぁ…。孤児院の皆にも。 はぁ、ガラにもねぇ、何か落ち着かないな…。
……あのですね、テルプさん。
あなた結婚ってのがどれだけ大変か分かってるんです?
ねぇ、一家の主になるんでしょ?
それをいつでもふらふらして仕事もロクにしないで、
歌で食ってく気は無いとかいって、いつ死ぬか分からない様な冒険者稼業?
もっと地に足をつけた生活をして、先の事ももっと考えて、ですね。
そんなんじゃアノチェセルさんに苦労ばかりかける事になっちゃいますからね?
だいじょうぶだよー♪ 愛さえあればー♪
うむ。
ああああもうホント話にならないこの人達っ!
故郷の事も、忘れたまんまで……
どこか現実を生きていないような彼が、家族を持つなんて、そんな事。
心配ばかりが募っていく。僕には関係無い、事なのに。