テルプ、入浴す
第ニ期:二度目の巡りで
こ、こんにちは…!(おずおずと)
あ、あの、せ、石鹸、つ、作りすぎちゃって…!
(と、牛乳石鹸が沢山ケースに入っている)
そ、その使うかどうかわからないかもと思ったんだけど…。
よ、良かったら…!
おー、なんかすっごい甘くておいしそうな匂いするねぇ…。
……食べないよ?!
あー石鹸ねぇ。使うんじゃないかなぁ主に天野っちが。
ヒマさえあればこの人何か洗ったりとか掃除とかしてるから。
ありがとうーいただいちゃうねー♪
君も是非使い給え。というか毎日とは言わぬからたまには風呂にも入れ。
……あのちぇせう殿からも言ってやってくれぬか。
いい年をして子供の様に風呂から逃げる。
え、いや…怖くは、ないけど…。 だいたい俺っちの故郷の方、砂漠で、あんま風呂入る習慣無いんだよ。 水はだいたい飲み水でいっぱいいっぱい、みたいな。 だから、その、元々必要なかったんだから、別に、入らなくてもいいんじゃ、ないかなーーー… なんて… (そう言いながら目が泳いでいる。)
そ、それは…
(自分の過去の事を思い出し)
き、気持ちは分かるけど…。
わ、私も小さいときはそ、そんな余裕なかったから…。
で、でも入れる時に入った方がいいよ…?
(少し考え込むと)
…で、出来る所ならて、手伝おうか…?
さ、流石に子供達みたいに洗ってあげることはできないけど…。
(あまり乗り気で無い様子が子供達と被ったようで、放っておけないというような表情をしている)
(優しくかけられた言葉に目を丸くして、バツが悪そうに目を泳がせたり髪をいじったりして)
…えっと、えっと。
色々イイワケしてますがメンドクサイだけですスミマセン…
(ボソボソと目を合わせずに呟いた後ろから、天野がどすどすと巨大なタライのような物を持ってくる)
ふむ、手伝っていただけるか!
丁度石鹸も頂戴した事であるし、さぁ、やるか!
(テルプの首根っこを掴み、水の張られたタライに服のまま放り込む。
みぎゃーと猫の様な声をあげるのを無視して押さえ込み)
あのちぇせう殿、そちらをお願いしても構わぬか。
ひゃっ!あ、あの天野さん、も、もう少し優しく…!
そ、それだと余計いやがっちゃう…!
(とりあえず言われるまま手伝いをするがなるべく優しくと諭す)
て、テルプごめんね…!
だ、大丈夫だから…!ちゃ、ちゃんと優しくするからね?
(シャランと髪に付けられた鈴を見て)
え、えと、こ、これ外しちゃってもいいのかな…。
やーだーやーだー!
(しばらくじたばたしていたが、だんだん観念したように無抵抗になっていく……)
…………鈴、はずさないと、ダメ? 俺っち、この音が無いと、落ち着かなくて……。
随分おとなしくなりつつ。そうは言っても、鈴を外してしまわぬ事には髪は洗えないだろう。
(じっと良く見て初めて、髪に付けられた鈴が自分が貰ったものと同じものである事に気付く)
…ごめんね、わ、私が変なこと言っちゃったから…。
い、嫌がることして、ごめん…。
(そう言うと自分の首から提げている鈴を外してテルプに提げさせようと)
…も、もし、鈴がないと不安なら、し、暫くこれで…。
だ、だめ…かな…。
ああ、うん、ありがと…
…それは、いい色が出た。お気に入りなんだぜ。
(おとなしく首に掛けてもらって、弱々しいが笑顔を見せる)
きれーだろ?
謝る事ないよ。多分遅かれ早かれ、…こうなってたと、思う。
むしろ、アノチェが居てくれてる時で、よかった…。
うん、凄く、凄く綺麗…。
わ、私の大好きな色なんだ…。朝焼けの色。夕焼けの色。
わ、私の名前の色…なの。
あ、ありがとう、宝物、なんだよ?
(「宝物」という言葉に少し照れて笑う)
うん。知ってる。アノチェセル、の色。
きれーな、色。きれーな、音…。
──好き。
──天野っち、せめてお湯に、してほしいなって、思う。
(少し慣れて来たのか、落ち着きを取り戻している様だ)
……うむ、湯は、用意するが。
全く、子供では無いのだから…(呆れ顔でぶつぶついいつつ)
子供の相手は苦手である。
──あのちぇ殿は流石と言うか、…うむ。
(苦い顔をしつつ、既に沸かしてあったらしいお湯やタオルなどを用意して、テルプの事はアノチェさんに任せようというスタイルになりつつある)
へへ…こ、子供達の相手、な、慣れてるから…。
(と、天野へ向けて少し誇らしげに笑った)
(と、天野へ向けて少し誇らしげに笑った)
(テルプの装飾具を丁寧に外してあげると、石鹸を泡立てた)
あ、あのね、わ、私でよければ、い、いつでも手伝うから…!
あ、頭からでいい…?
(鈴を外す時に少々不安げな様子を見せたりしているが
、首に提げてもらった鈴を指でいじりながら、おとなしく頭を差し出して身を任せ)
……おねがいします。
イラスト:かげつき
夕闇の色の鈴が揺れる。リン、と澄んだ音。宵の明星、アノチェセル。
いい名前だね。なんて言うか、名前って愛情を感じるよね。
一生の贈り物って感じでさ。
うん。あー、すごく気持ちいい。痒いとこ? あ、背中かゆい。
(随分と余裕が出てきたっぽい)
拾われた時に、かぁ。……つけてくれたの、孤児院の人?
せ、背中ね?
(と今度は背中を擦ってあげる。気持ちよさそうにしてくれているのにほっと胸を撫で下ろした)
うん、孤児院の主で…(あれ、また思い出せない…と首を傾げる)
ご、ごめんね、あんまりその人を思い出せないんだけど…。
で、でも、名前が無かった私達に「それぞれの一番星が見つかりますように」って付けてくれたのは覚えてるの…。
…うん、綺麗になった…!
な、流すよ?
(あらかじめ適温にしておいたお湯を頭から流そうとする)
(あ、背中まで掻いてくれるんだ?! と、自分で言っておきながらちょっと驚きつつ)
そっかぁ。
…きっと優しい人だったんだな。
(思い出せない、と聞いて、もう覚えていないほどの昔。…物心つかぬ年頃のふたりを想像し、頬を緩める)
孤児院の、…昔の主? 先代の主さんとかかな。
今、孤児院って一番えらいひととか居るんだっけか?
(流すよ、の言葉に素直に身を任せる)
(目を瞑っててね?と頭から湯を流し始めた)
え、ええと、今の持ち主だよ…。
え、遠征に行って、もうずっと、長い事戻ってきてないの…。
と、時々仕送りが来る事はあるけど…。
い、今は様子を見に来てくれる数人のシスターさんと、私達だけ…かな。
(少し寂しそうに)
で、でも大丈夫だよ!あ、後を任されてるもの…!
(しっかり泡を落とすと一仕事終えたと汗を拭い)
はい!おしまい…!
よ、よく頑張りました…!な、なんてね…!
へっへっへー
俺っち頑張ったな! えらいな!
(褒められてすごく嬉しそうな笑顔)
そっかぁ、任されてるのか。
アノチェもよく頑張ってます! えらいぞ!
(濡れた手のまま頭を撫でようとする)
へへ…あ、ありがとう…!
(濡れた手も構わずにそのまま大人しく撫でられた。ところどころ自分も少し濡れていて、もうあまり変わらないと思ったから)
はい、これ、タオルね…。あ、あとは大丈夫だよね…?
あ、天野、さん、お、終わったよ…?
──たかが風呂に、大仕事だな…まったく…。(大きくため息を付き)
服も、脱いでおいてくれ給え。一緒に洗ってしまうから。
…言わなくとも分かると思うが、しっっっかり身体も洗うのだぞ。
(念押ししながら石鹸を渡して、アノチェさんに向き直る)
まことに、助かった。感謝する。
どうも己(おれ)は、相手の気持ちを慮る能力が欠落しておる気がする。
…子供どころか猫にもよく怯えられる。
(アノチェさんにもタオルを手渡して)
お疲れ様、だ。少し休んでいてくれ給え。茶でも淹れよう。
……紅茶、のようなものの方が良いか?
(後ろではテルプがぶつぶつ文句を言いながら身体を洗っているようだ)
(タオルを受け取り)
あ、ありがとう…!
う、ううん…!そ、その、て、テルプ…が…し、心配だっただけで…!
そ、そんなた、大したことじゃないよ…!
わ、私は、な、慣れてるのもあるし…、そ、その、き、気にしなくていいと…思う…!
あ、天野、さんは、いい人だと思うよ…!
(励まそうとにっこり笑った)
あ、こ、紅茶で大丈夫…!い、いただきます…!
(天野は「美味しい紅茶の淹れ方」なる本とにらめっこしつつ準備をしている。
良い香りが部屋に立ち込める頃、簡単に着替えてタオルにくるまったテルプがのろのろと、疲れた様子で横にやってきた)
…ふぅ……。
(両手に抱えた鈴をころころ手の中で転がしながら腰掛けて。)
いやぁ、おつかれ、おつかれ、ありがとう。
何か俺っち、超いいにおいする。
(何だかくすぐったそうな顔で、濡れたままの髪を編み、鈴を取り付けようとしている)
あ、ありがと…
(相変わらず手の中で鈴を転がしながら、頭を気持ち低くして座り直した。
たまに胸元の、アノチェさんの鈴もつついたりしつつ、落ち着きが無い)
ヨロシクオネガイシマス。
う、うん…!
(嬉しそうに返事をすると、乾いたタオルで丹念に水気を拭き取り、ブラシでテルプの髪を梳き始めた)
て、テルプの髪の色、綺麗だね、だ、大地の色だね…!
(みつ編みを作りながら、テルプの手の中にある鈴を一つ一つ取っては丁寧に付ける。落ち着かない様子のテルプに対して)
ど、どうしたの…?
(「あ」という表情の後、鈴のことかなと考えて)
ご、ごめんね、す、直ぐに鈴つけるからね。
ん、どうもその音が無いと俺っち落ち着かないや…。
(鈴がひとつ増える度に、音を確かめるようにつついてみたり、頭を振ってみたり)
…俺とアノチェの髪の色ってちょっと似てるじゃん。
おそろいみたいだ。(嬉しそうに微笑みながら、ネックレスを外して)
はい、これも、返すね。ありがと、もうだいじょぶ。
(一方その頃!吟遊詩人仲間のこのやりとりを建物の外から目撃、赤坂さんとうっかり目が合う)
…………。あ、赤坂。別に覗きをしに来たわけじゃねーんだよ、信じてくれ!
今度うちのクランがパティラに移動することになってな、その挨拶に…
本当だって!ここに土産もある! (スパイシーな味付けが特徴の砂漠名物の保存食)
……見なかったことにしたいから、ここで帰らせてくれよ、な?秘密にもしていてくれるよな?
じゃ、また世話になるぜ……。そうか…あいつら…でもオレ的にはちょっとどうかと思うぜ……。
あ…どうも、おみやげまでありがとうございます。皆様にもよろしくお願いします。
あちらは敵が手強いらしいのでお気をつけて、……なんですけど…。
内緒にしておこうと思ったら、このお土産はいつ誰にいただいたことにすれば良いのか…。
僕が1人で食べてしまえばいいのか…。いや。だけど…。
(もらったおみやげを手に悩んでいる。後日「留守中にフェリクスさんが来て…」という事にするらしい)
そんなフェリクスたちに気付かず、室内では楽しく談笑が。
そ、そっか、似てるね、そういえば…。
(微笑みかけられて照れ笑いで返すと自分の鈴を受け取った)
あ、うん、ありがとう…!
せ、石鹸私に来ただけなのに、な、何だか大事になっちゃったね…。
お、お疲れ様…!あ、天野、さんもお疲れ様…でした。
(ぺこりとお辞儀をして一息つこうと紅茶に口をつけた)
うむ、本当にお疲れ様、である。
…何も礼が出来ぬでな…いつも困っておる。
──花、くらいしか。良ければ飾ってくれ。
(手の中から魔法の様に、丸っこくて可愛らしい花が咲く。適当な紙に包んでまとめ、見栄えは悪いが花束の体にして)
どうだテルプ殿。綺麗になると、すっきりして気持ちが良いであろう。 清潔は病も防ぐのだぞ。 少しは抵抗が無くなったであろうか。 たくさん頂いたからな。しっかり風呂に入ってくれ給えよ。
……アノチェが居れば、入る……。
………………………………。
(呆れと苛立ちで言葉を無くしている)
…石鹸を渡しにいってるだけなのに遅いと思ったんだよな…!
(どこからか情報を聞きつけたらしくいつの間にかクランの入り口に立っていた。心なしか不機嫌の様子)
…もう用済んだろ?帰るぞ、アノチェ。
あ、天野、今度手合わせでもしようぜ!
なんだかお前とは気が合いそうな気がするんだ(にか!っと笑う)
おお、あるば殿。…妹君を引き止めて、すまなかった。──すまなかった。
(二回謝った! 眉間を押さえている)
手合わせか。望むところである。是非に。
同じ戦闘の盾役とはいえ君は矛の役割も果たし、見習いたい部分が非常に多い。
じっくり手を合わせ、その戦い、盗ませて頂こう。
おー、アルバっち元気?
(不機嫌さを気に留めず、ひらひらと手を振って挨拶しつつ、アノチェに向き直り、神妙な様子で)
…ホントに、ありがと。
暫く、頼むわ。頑張って、平気に、なるから。
ありがとね。
(不安な表情に思わずテルプの手を取った)
だ、大丈夫だよ…!
て、テルプには色んなもの、貰ってるもの。
お返しできて嬉しい…!
(貰った花束も胸に抱えるとはにかんだ)
ま、また遊びにいくから…!
ま、また会おうね…!
……そっか。…うん。ありがと。
(ぎゅっと手を握り返して、少し名残惜しそうにその手を離し)
また、ね。
こっちからも、遊びに行くよ。
(にこにこと、ふたりの姿が見えなくなるまで手を振っている)