屍人は百戦錬磨か
第ニ期:二度目の巡りで
クラン:チーム墓荒しさまのトーレス君とヴィゾンちゃんのセリフも記憶に頼る感じになっております。設定の間違いなどたくさんあると思います。流れを自然にするために色々捏造もさせていただいております。アイコンも不足しています、誠に申し訳ございません。しかし大変お気に入りのやりとりだったのです。
天野さんは、【異世界】から来た人間だ。
こちらの世界では珍しくない。来訪者、などと呼ばれている。人も、物も、黄金の門を通って別の世界からこの世界にやってくるのだ。
異世界の魔法や技術もやってくる。この世界の文化レベルでは到底適わぬような「超科学」などと呼ばれる技術も。
しかし、外からやってきた知識をいくら再現してみても、……それが出来たとしても。
何故かこの世界に、異世界のもたらした技術は定着しないのだった。
神と呼ばれる何かの、作為的なものを感じる。──時間の巻戻り現象だって、そうだ。
この世界をこのままの姿に保とうと働く何らかの、神様みたいなものの…>天野さんの言葉を借りるなら、【上位の存在】のちから。
──しかしそんな力の存在を感じ取ったところで、僕に出来る事も無し。
ただ、与えられた日々を何となく、生きていくだけ。
そんな日常の中で、僕は。
ビリーさんの家で見た珈琲の苗を、自分でも育ててみたくなって、
苗の入手を手伝ってくれたという、クラン「チーム墓荒し」の元へと出かけたのだ。
そのクランの名を聞いて、突然、共に行くと言い出した、天野さんと共に。
えっと、こんにちはー。
かげつきのクラン、の、赤坂です。いつもお世話になってます。
おどおどと、中を覗いた。後ろでは天野が無言で立ち控えている。
……あの、ちょっとタリアさんに、お聞きしたいことがあって寄らせていただいたんですけど…。
覗いた先にはタリアの姿は見えない。ペストマスクの怪し気な医師の気配を探してはみるものの。
──タリアさん、今、お留守なんです?
あ、いらっしゃーい。
呼び声にとことこと歩いてきた。
タリアさんは、……今ちょっと、取り込み中、なんだ。ごめんね。
聞きたいこと? 伝言も出来るし、私で分かることなら答えられるよー。そう言って、ふたりを席へと促すと、グラスを持ってくる。
どーぞ。お水しかないけど。
あ、ありがとうございます。えっと……。
あの、先日、クラン ГЕРОИ のビリーさん、とお会いしたんですけど、
その時に、珈琲の苗を、こちらの、タリアさんが入手してきた?
という話をお聞きしたので、その…。
僕、あまり植物のこととか詳しくなくて、色々花屋さんとか覗いてみても、珈琲の苗は売ってなくて…、
なので、その、どこで都合されたのか、よろしければ教えていただきたいなぁ、と。
促されるままに席へと着いた。天野はそれに続き、赤坂の後ろで直立している。
ああ、あれならタリアさん、アティルトの郊外にある大きなお店で買ってきたみたいだよ。
色んな珍しい野菜の種とか苗とかたくさん売ってたんだって。
タリアさんも色んな苗仕入れて、育ててる。
アティルトみたいな大きい街には、珍しいのも色々集まるからいいよねー。
あ、そーだ、確か肥料の袋に、お店の名前とか書いてあったかも。待っててね。
そう言って庭に出ると、小さな紙片を手に、すぐに戻ってくる。
地図も付いてた。このお店だよ。赤坂に手渡したのは、ショップカードの様だ。
良かったら、持ってってくれていいよ。
へぇ、タリアさん、園芸とかされるんです? ……意外だ。
失礼なことを思いながら、カードを受け取った。店名と地図が載っている。
ありがとうございます、助かります。……ちょっと、遠いな。行くなら日を改めて、かな…。
独り言の様につぶやく後ろで、天野は相変わらず無言で立っている。
あ、ああ、すみません。 この人、何かこちらのクランに用事があるとかで…… 僕の用事はこれで終わりですから、天野さん、どうぞ?
──うむ。 ヴぃぞん殿に……話を聞きたいと、思ってな。 君のその、死して蘇ったというその体質の、事についてなのだが。 ──少しでも不愉快に思ったならば、話を切り上げて頂いて構わん。
チーム墓荒しに所属するヴィゾンさんは、──ゾンビである。
動く死体。
この世界にも色んな種類のゾンビと呼ばれるモノはいるけれど、
意志のない化物の様なゾンビとは違い、
彼女はよく笑い、よく食べる可愛らしく元気な人、という印象だった。
そうか。
──己(おれ)は、「来訪者」……別の世界から来た人間だ。
その、元居た世界が、厄介な事になっておってな。
屍が、甦り、人に仇為す。──そうして死した人間も、また、生ける屍と化し……
世界は、絶滅の危機に瀕しているのだ。そう、君と同じ動く屍。
君とあれらが大きく違うのは……君には君の意志が残っている。
己(おれ)の世界の、奴らは、ただ生命在るものを襲う化物だ。
己(おれ)は、あれらに対抗する為のちからを、探している。
彼らを滅ぼす薬、彼らに打ち勝つ身体、彼らに意志を取り戻す方、……何でも良い。
己(おれ)の世界とは違う法則の世界を
……数々の異世界を渡り歩き、己(おれ)はその方法を探しているのだよ。
君の出生の魔法を、君が君自身の意志を残して蘇った理由を。
それを知ることで、己(おれ)の世界を救う手がかりになるやもしれぬ、と、
そういう事だ。
幾つか、質問させて貰う。
先ずは──そうだな。
君がどの様にして今の姿に生まれたのか。
君の……屍を、誰がどの様にして、蘇らせたのだ?
んっと、この世界と、天野さんの世界のゾンビのあり方は、随分違うかもしれないけど
私が分かる範囲でお話するね。
死んだ私を見つけてくれたのは、タリアさんだよ。
鮮度が良かったみたいで、頭?脳?が、まだ腐ってなかったんだって。
私がこうやっておしゃべりしたり出来るのはそのせいなのかもって
タリアさんが教えてくれた。
私を生き返らせた術は、魔法の一種らしいけど
……難しいこと、私には、よく分からないんだ。ごめんね。
ここの二階の書庫に、タリアさんの本があるから、調べれば何か手がかりあるかも。
難しそうな魔法書なんかも、たくさん置いてあったよ。
魔術……。己(おれ)も魔法のことはさっぱりだ。
読んでも理解出来るかどうか。と、苦い顔をしている。
ふむ。つまり、君の身体の一部は生前のまま、という事か。
意志が残っているのは、その所為……と仮定すれば
──変質を防ぐ方法が在れば、或いは、……。しばし、思案するように眉間にしわを寄せて。
なぁ、ひとつ、踏み込んだ事を聞いても構わぬか?
君は、子を成せるのか?
口に含んでいた水を思い切り噴き出す。
ああああ、あまのさんっ?!
何言っちゃってるんですっ?!
己(おれ)の世界でも、屍人と化してなお、自分の意志を残したままの人間が居る。
仮にすべての人間が屍人と変わってしまったとしても……
意志を持ち、子を成すことが出来るならば、それは滅びとは言わぬだろう。
少しでも君に関しての情報が必要だ。世界を無に帰さぬ為に。
ふむ。……試してみる気は無いか。
あまのさーーーーーん?!
イラスト:かげつき
す、す、すみませんヴィゾンさん! ちゃんときつーーーく言って聞かせておきますからっ!! 天野さん、帰りますよ! ハウス! ずるずると、重い身体を引きずるように。
ずるずると引っ張られながら、表情を変えず。
……気を悪くしたのなら謝罪する。
──また、宜しければ話を聞かせてくれ給え。
そのまま運ばれていく。
ヴィゾン「おお! いつでも受けて立つぞオラアアアア」
トーレス「落ち着けって」
ヴィゾン「百戦錬磨だオラアアアア」
トーレス「初陣だろ……」
ゴス!
トーレス「あ、痛て、いててて」
途方もない疲労感に襲われつつ、自クランへとたどり着くと
天野さんを正座させる。
天野さん。
これを読んでください。
(ばばーんと、大きく紙に書かれた文字を掲げ)
でりかしー。
はい! リピートアフターミー!
Delicacy!
でりかしー。
はい!
貴方の辞書に! 付け足しておいてください!
…横文字は苦手であるよ。
苦手とか得意とかそーいう問題じゃないです!
いいですね、しっかり覚えておいてください!
.。o(でりかしー…。
確か、食い物を届けてくれる事であっただろうか。
しかし何故突然、其のような単語を。
何か食い物が届くのであろうか…。)