父の、記憶

第三期:彼の落としてきた記憶の欠片

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テルプの父親らしい人物がいる、という町へとやってきた3人だったが…。

イラスト:かげつき

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街道を馬車で東へと進むに従い、砂だらけだった景色は次第に緑へと染まっていく。 砂ぼこり舞う乾ききった石畳は、時折苔のようなものも見られる程に。 荒れた大地の名残は、遠く見える険しく赤い岩山を残すのみで。 国境を超えて暫く馬車に揺られ。次の目的地が見えてきたようだ。

イズレーンの領内、とはいえ、色濃くオーラムの文化を残す地域。 テルプの父親が向かったというこの土地は 南部とは比べ物にならぬほど水や作物が豊かな様だった。
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フェリクス 1avd

…随分遠くまで来たもんだぜ。
まあこの辺まで来るとあの茹だるみてえな暑さはないから全然いいんだよな、 オレさぁ出身が高原だから暑いのは慣れなくってよ…日焼け止めないとヒリヒリするし…。 (と、誰に聞かせるわけでもなく愚痴をブツブツ)

赤坂 天矢 1btg

……僕も、太陽は苦手ですね。 この後砂漠を渡るのを想像するだけで、もう家に帰りたいです。 自クラン拠点であるセリオンへ「天野」(石の彫り物)を郵送し、 軽くなった筈の足取りは、しかし何だか重く。

アルバ 18k0

まあ、寒いよりはいいんだけどさ…。 寒さには慣れてるし、暑いのが得意なわけじゃないけど…それでも暑いほうがいいな…。 そういいながらも茹だる暑さから少し逃れたのは気が楽なようで、軽く溜息をついた。

街で情報収集をする3人の耳に、 確かに15年程前、モシュネーからやってきたという男が この街に住んでいる、という情報が入ってくる。
名を「メルポネ」というらしい。

革職人らしいが、どうも昼間から酒場に入り浸ったりしているらしく 「仕事に汗水垂らして真面目に」というタイプの人間で無いことは確かだ。 そんな風にだらだらとしながら何とか平和に、この町で。
妻と息子1人と共に、暮らしているらしい。

フェリクス 1avd

ええと、テルプの親父カッコ仮だよな。もう直接会いに行くか? ま、アルバは預けもんまでしちまってることだし、 さっさと用事済ませとこうぜ。…新しい情報が出るといいんだけどよ。 昼間っから飲んだくれてるらしいし、酒場に行けばいんのかね。

赤坂 天矢 1btg

今回は、目的の人が酒場にいるだろうから、当然酒場に向かえばいいんですけども……。 何で情報収集って酒場メインなんでしょうね。 カフェとかで出来ても、いいと思うんですよね。 全国津々浦々カフェ巡りとか、いいと思いませんか。 そしてその土地土地での隠れ家的な珈琲の美味しい店を見つけるんです…。ふふ…。
こちらも何だかぶつぶつと。愚痴なのか何なのかすらよくわからない。

アルバ 18k0

…なあ、妻と息子ってなんだ…?
メルポネってやつがもしテルプの父親だとしたら、 テルプとテルプのかーちゃん以外に家族作ってるって事なのか?
…嫌な感じしかしないんだけど。 …とりあえず…向かうか?酒場に。

赤坂 天矢 1btg

……家族、ですか。村が無くなって…10年、になるんですもんね。 新しい生活が始まってても不思議は無いですけど。
──まぁ行きましょうか。

メルポネがよく出入りしているという酒場で、簡単な注文を済ませて。 カウンターへと腰掛けて、さて聞き込みを開始……、と。

酒場にて、メルポネの名前を出して間もなく、後ろから声を掛けられる。
「げ、トール? 何だ、またかーちゃんが呼んでるのか?」

振り向いて見ると、赤毛の、少し日に灼けた様な肌の。
酒場のマスターが、3人に向かって「そいつだよ」と、顎で合図する。

メルポネ 1btg

ん、あ、あれ、何だ、人違いか。 すまねぇ、何でもない。邪魔して悪ぃな。 アルバの後ろ姿を、誰かと見間違えたようだ。 バツが悪そうに後ずさり謝罪を述べるが、視線は不躾な、余所者を見る目で。

アルバ18k0

トール?
…ああ、髪色が同じだから間違えたのかな。 いや、構わないけど…。 まじまじと顔を見詰めて…その顔に誰かの面影がないか、探しているようにも見える
アンタが…メルポネ?

メルポネ 1btg

は?
…あぁ、俺が、そう、だが。
突然の見知らぬ訪問者に、あからさまに怪訝な表情。 こいつら何者? とでもいいたげに、酒場のマスターの方をちらと見る。 肩をすくめて「さぁ?」というマスターの仕草に、3人へと向き直り。
……あんたら、何だ?

自由に跳ねる髪質や、目元、鼻筋など、 ……友人に似てる、とも言えるが、それが親子の血、ゆえであるのか 彼ら一族全員の特徴であるのかの判断は難しいかもしれない。 少なくとも、ルーツが同じである事は感じられる。 大地の色に近い赤の髪と瞳。

アルバ 18k0

ああ、悪い悪い、その髪と目に見覚えがあるからちょっとね。
アルバ達が囲むテーブル、空いた椅子を掌全体で指して 俺はアルバって言うんだ。 一杯奢るから、少しだけ、話いいかな?

メルポネ1btg

あぁ、まぁ、どうせ飲みに来たんだ。構わんが。 マスター、いつもの。 示されたテーブルにつく、その間も3人をそれぞれじろじろと見比べるように。
……旅人か? 冒険者? 何にせよ珍しいな。 街道に近いとはいえ、…用も無いのにここに来る人間なんてなかなかいないから。 ま、余所者に対しても気のいいヤツらが多いぜ、ここは。
俺もそのうちの一人だ。などと笑うメルポネに、マスターが強めの穀物酒を。
マスター「そうそう。余所者だったお前にツケで飲ませてやってるオレとかな」
──んで? 俺に用なの?

アルバ 18k0

ああ、俺達は冒険者なんだ。 個人的な調べ物…ええと、モシュネーの事で来てて…。 アンタが15年前にモシュネーからこの町に来たっていうのを聞いてね。 それで話を聞きたくてさ。
…ああ、別に、アンタをどうこうしようっていう訳じゃないよ。 掟から背いたのなら…逃げ出したのであれば相手にとっては都合の悪い事だろうと、なるべく柔和に
アンタは…テルプの父親…で合ってるのか?

メルポネ 1btg

あぁ、モシュネーか。久々に聞いたな。まだ生きてんのか、あの村は。 飢饉の時にでも無くなったと思ってたぞ。食うものもロクに無ぇ村だ。
……15年前っつったら、あの飢饉の時だろ? 俺がここに来たのは、……もう20年近くになるな。正確には何年だ。んー、19…? 18……? 指折り数えているが、途中で面倒になったらしい。 まぁ……、いいや。

テルプ、の名前に、怪訝そうな顔を。 ……んで、何の父親だって? 俺の息子の名は、「トール」だ。

フェリクス1avd

いや、気にすんなよ。モシュネーから出てきたってだけで充分だぜ。

(アルバの脇からずいっと話を継いで) (こいつ、多分テルプや事件のこと『忘れて』やがるな) (と仲間に耳打ちをする)

アルバ 18k0

(こいつも?!…でもいつ術かけられてるんだよ。こいつが村を出た時にはテルプはまだネダにも出会ってない子供だろ…? それにかけてる目的もわかんねー…ああー、なんなんだ一体これ)

フェリクス1avd

こいつが言ったようにオレたちゃモシュネーのことで調べててね。 ま、あんたの言った通り今はもうあの村はもぬけの殻だよ、飢饉でな。 あんたのことを聞いたのも調べ物の結果でだったが、15年っていうのはガセだったのかもな。 まあ、あんたのいた時のことでいいから何でも教えて欲しい。生き証人は初めてなんだ。

(とりあえず聞けそうなことから聞いてみようぜ) (と酒を注ぎつつ、そういやあいつの術ってどうやって破るんだろうな、と考えて)

メルポネ 1btg

ふーん、モシュネーを調べる、ねぇ。 さては何処かで、宝石の山の事でも聞いたな? あー、いや、ま、深くは詮索しないさ。もう俺には関係無い事だし。 (勝手にひとりで、合点がいったように頷いている)

まぁ、ひとつ言っておくと。 モシュネーの民がもう居ないなら、あの山を掘る事は、不可能だぜ。
ぐい、と酒を飲み干すと 長い話になりそうだ、もう一杯、いいだろ? なんて調子のいい事を言いながら勝手に追加注文している。

メルポネ 1btg

モシュネーについて…。んー。ロクな村じゃねーぞ。

場所は知っているのか? 砂漠の、端に火山があって、その頂上近く。 他から孤立して、空気は悪い上に薄い。 あそこには文字すら無いから、歴史のような物は歌や口伝に残るのみ、だが。

モシュネーの民はもともと精霊、と呼ばれるような、 そういう自然を司る小さな神、みたいなのをコントロールする力があったって話だ。 もっとも、俺らの時代にはそういう術みたいなのは一切失われてて、 ただ「山の精霊との約束」が残るのみ、だったが。 その掟を守っている限り、山の精霊の怒りを買って山の火が燃え上がる事も無かったし、 ほんの少しの「精霊の宝」を……宝石やら、何やらを。頂戴する事も出来た。

今は岩しか無い山肌も、昔はそこそこの食い物が採れたって話だ。

メルポネ 1btg

んで、いつからだろうな。むかしむかし、だ。 精霊の宝を目当てにモシュネーにやって来たのが、トト族という竜を駆る戦闘部族。

彼らはモシュネーを支配し、厳しい掟により村人をその地に縛り付ける事で、 ──宝石の山と、そこで使える奴隷を手に入れたってワケだ。

トトの支配以前の村の様子を知るものはもう誰も居ないが、 長老が辛うじて聞いた昔の暮らしは、 貧しいながらもそこそこ穏やかなものだったらしい。
だが、古くから村に伝わってきた「約束」は トト族によって、彼らに都合のいい「掟」として歪められて。 ささやかだった暮らしは過酷なものに。

メルポネ 1btg

まぁ俺らの代は生まれた時からずっと奴らの支配下だ。 酷いもんだぜ。食い物もロクに無く子供も老人も鉱山に駆り出されて。 それでも「ぎりぎり」を保っていられたのは、精霊との約束の所為だったんだな。 一年に、掘り出せる量が決められていて、 ……ま、死ぬまで働かされる、みたいな事は、そう多くはなかった。

何よりも、トトが恐れていたのが「山の精霊の怒り」だった。 精霊の怒り…まぁ、噴火だったりガスだったり色々言い伝えられてはいたが、 「約束の民」であるモシュネー族以外があの山の宝に手を出すと 山は怒り、この地全てを飲み込むだろうと、預言されていたんだ。

そのおかげで村人皆殺し、なんて憂き目にも合わずにすんだんだけれど。 生かさず、殺さずの状態で。……かえって村にとっちゃあ不幸だったのかもしれねぇよなぁ。

メルポネ 1btg

で、約束の民がもう居ない、今となっては。
あの山に眠る宝石を掘り出すのは、死の覚悟が要るって事だぜ? 冒険者さん。 相手を伺うような、笑顔に、少しテルプの面影が重なる。

アルバ 18k0

宝目当てじゃないよ。本当に個人的な…理由なんだ。
俺が聞いた話だと、モシュネーが山の恵みをトト族に渡して、 トト族が生活に必要な物をモシュネーに与えてたっていうんだが…。 …アンタがいう話だと、じゃあその取引自体が不公平だったってことになるな?

なあ、アンタは何で村を出たんだ。 村を出ちゃいけないという掟を破ったんだろ?…生活が苦しくてか? それに、精霊の宝がモシュネー以外に取れないのはなんでだ。 一族以外に取れない理由でもあるのか?

メルポネ 1btg

あー、トトからも話を聞いてるのか。ま、表向きの名目は、あんたの聞いた通りだが。 …実際は食うにも困る状態だったな。 腹ぁ減らしてる俺らの前で、まぁ綺羅びやかに飾り立てて、 高級な武器を持って、珍しい竜を駆って、いいモン食って、武勇自慢だ。 奴ら、自分らに都合のいい事しか言わねぇ、嘘吐き共だ。信用するんじゃねーぞ。
憎々しげに顔を歪める。

アルバ 18k0

ああ…まあ…トトの族長は都合のいいように言ってはいたな。 なるほどね…。 戦闘民族相手じゃ太刀打ちもできなかったんだろうな…。

メルポネ 1btg

ま、そんな村、あんたらだってさっさと出たいだろ? だけど周りは険しい山に死の砂漠。逃げ出すことは死を意味する。 八方塞がりってぇやつだな。 俺の場合は、丁度、チャンスがあったって、それだけだ。

──、なんだっけ……。……。
……薬、そう、村に病人が出て、薬が必要になってな。 それを手に入れる為、つって、トトに同行して街まで下りて…… あとは、こっちのモンだ。あんな辛気臭い村の事なんざ思い出したくもねぇ。 おおげさに片手を挙げて、またグラスを空にする。 マスター、追加ねー。

メルポネ 1btg

えーっと、あとなんだっけ、精霊の宝の事? ……まぁ言い伝え、とか、伝説、程度に聞いといて欲しいんだが。
えへん、とひとつ咳払いをして、小さく、歌を歌う。

むかしむかし、とっても寂しがりの炎の精霊がいたという。 ひとりの男が、この地で精霊をなぐさめ続けることを約束した。 未来永劫うたを歌い、ここに眠る精霊がひとりにならぬようにと。 その礼として、精霊は自分の涙を結晶にして その男の子孫へと与えるのだ。

メルポネ 1btg

メ ル ヘ ン だろぉ?
内容が照れ臭いのか、あるいは人前で歌い慣れていないせいか。 こそばゆい様な顔で。

──しかしなぁ、実際俺ら以外の一族が山に立ち入ればたちまち山は怒りだしてな。 少なくともモシュネーと…、トトは、信じていたみたいだな。 追加で運ばれてきた酒を受け取って ……こんなモンか?
しかし宝じゃなけりゃ、あんな村、一体何の用だってんだ。

アルバ 18k0

病人…。
それ、アンタの身内じゃないのか…? ほら…奥さんとか…さ。 記憶が何処まで塗り替えられているのか探ろうと

…アンタ以外にもモシュネーの生き残りがいるんだよ。 俺はそいつと友達で…。 自分の故郷が無くなってるだなんてこれっぽっちも思ってないみたいだから 間違ってない…… まあ、そいつのためにな。

メルポネ1btg

あ? 奥さん? なんで? 何言ってんの? という表情だ。 俺は、両親も早くに死んで、身内なんてものはいなかったよ。

過酷な環境だから、死にかけの奴らなんてゴロゴロ居たが… 確か、あの病人は…村長の身内か何か、だったような。………? そう、村長一家はトトに優遇、されていたから……特別扱いとかで。 それで薬を手に入れるって流れになった筈だ。……。 何か話そうとして、言葉に詰まって。
──あぁ、いや、何か、何せ昔の事だから、…よく覚えて無いな。 村中殆ど家族みたいなモンだったから、顔が思い出せない筈が無いんだが。 俺もモウロクしてきてんのかねぇ。 自分でそういいつつも、どこか腑に落ちない様子だったが、 しばらくすると、軽い調子で顔を上げる。

メルポネ1btg

まぁ、誰だって、何だっていい。 要は俺は、村を出る口実さえあればよかった。渡りに船ってやつだな! その病人には申し訳ないが、──俺にはもう関係ない事だ。 まったく悪びれること無く、グラスをあおる。

しかし、モシュネーの、生き残りねぇ…。 そいつも村を逃げ出したのか? 名前は、なんて言う?
──、あ、さっきトールと名前を間違えた、そいつが、そうか?

赤坂 天矢 1btg

しばらく黙ってメモに目を落としていた赤坂が顔を上げる
(……あのですね。テルプさん、お父さんの事探したって言ってたんですよ。この。ここの町にいるはず、なのに見つからなかったって。 でも、僕らがこんなに簡単に会えた事を考えると、テルプさん、の時に、一度この人と会ってるんじゃないでしょうかね…。)
小声でふたりに告げると
(ちょっと、マスターに、昔メルポネさんを訪ねて来た人が居なかったか聞いてきてみます。こちらの方は、おふたりにお任せしてもいいですか?)
とことことグラスを持って移動。カウンターで、マスターに話を聞く姿勢だ。

アルバ18k0

(そうか…!その時に術を使ったのなら…。わかった。こっちは任せろ。赤坂頼む) 軽く手を上げて赤坂に合図を

かなり書き換えられてるようだと判断して ああ、そうそう、そいつ。
アンタは逃げ出した後こっちで家庭を持てるぐらいには幸せになれたってことだな。 アンタの息子…トールっていくつぐらいなんだ? 俺と間違えるぐらいだから結構でかいんだろ?

メルポネ1btg

んー、見た感じうちのの方がひょろい感じだけど、どかな。 649年生まれだから、えっと。確か17歳…に、なるのかな? 酔いが回っているのか、元々細かいことを気にしないタイプなのか。 自分の息子の年令を指折り数えている。

家庭、なぁ。息子も嫁もガミガミガミガミうるさいタイプでなぁ。 不満顔でぶつくさ言っていたが、急にふにゃ、と笑って。

メルポネ1btg

まぁ、幸せ、だけどな。へへ。

アルバ 18k0

そのふにゃっとした笑いに複雑な思いがこみ上げる
ああ…そう…だな…。

メルポネ1btg

その…モシュネーの生き残りって奴も……テル…なんだっけ? 聞き覚えの無い名だ。多分俺が村を出てから生まれた奴だな。 まぁそいつにもあんな村のこと気にすんなって言ってやれ。

さてもう一杯、と手を挙げたところで、酒場に飛び込んできた少年がメルポネに声をかける
『とーちゃん! また昼間っからそんなに飲んで! かーちゃんカンカンだからな!』

メルポネ1btg

うぇ…、うるさいのが来た。これだよ、うちの、トール。
紹介された少年は旅人に気付くと口を抑えて姿勢を正す。

トール1btg

あ、すみません、お客さん、ですか。 ごめんなさいうちの父が、ご迷惑をかけたのでは……。

メルポネ1btg

失礼な奴だな。何で迷惑前提なんだよ。
……でもま、すまねぇ、そろそろ俺行くわ。旨い酒ごちそうさん! へへへと笑いながら席を立つが足元がふらついている。

トール1btg

ご、ごちそうさん〜? とーちゃん旅人の人にたかったんじゃないいだろうな? 父親の事を怪訝な顔で見ている。

アルバ 18k0

酒場に飛び込んできた少年に片手を上げて
…ん?ああ、ちょっとアンタのお父さんに聞きたいことがあってさ。今まで話をしていたんだ。 酒代はまあ話の礼みたいなもんだから気にしなくていいよ。 随分しっかりしてるなー。父ちゃんがふらふらしてると自然とそうなるもんなのかな…? 等と苦笑して

トール 1btg

しっかり、してるかな。かーちゃんの… あ、えっと 母の、口癖みたいなもので、いつもいつも聞いてるうちにうつっちゃいました。 だからしっかりものは、かーちゃんの方で。 へへへ、と、笑い方が父親に似ているような。

アルバ 18k0

うんうん、親子ってそういうの似るものだよな。 例え血が繋がってなくてもさ! …あ、俺は血の繋がった両親がいないってだけで、トールの事を言ってるわけじゃないからな? …そういえば、髪も目もとうちゃんには似てないな? かーちゃん似?

トール 1btg

金の髪も、目も、かーちゃんの血筋だよ。

アルバ 18k0

…あ、折角だから、アンタにもちょっと聞いていいかな…。 この数年の間に、アンタの父ちゃんを訪ねてきた人いなかったか?

トール 1btg

──訪ねてきた人…。思い当たるフシがあったようで。

──まほうつかい。

メルポネ1btg

千鳥足でやっと扉まで辿り着いて。トールの声に振り向いた。 お前、それは夢でも見たんだろっていつも言ってるだろ? いーかげんな事言って旅の人困らせんじゃねーぞ
んじゃ。 軽く手を挙げると、ふらりふらりと酒場を出て行った

トール 1btg

父親を見送ると、2人の方へと向き直る。
とーちゃんはああいってるけど…。 俺がもっとちっちゃっいころに、まほうつかいが来たんだ。 数年前どころじゃないから、旅の人たちの聞きたい話じゃないかも、しれないけど。

俺より少し大きかったけど、まだこどもだった。 いっぱい、歌って、きらきらしたものをたくさん見せてくれて。 とーちゃんのお客さんだって、言ってたのを覚えてる、んだけど……。 とーちゃんはそんな事まったく覚えてないんだって。 俺もホント、何歳だったか覚えてないくらいの頃で。だけどすごく印象的で。

トール 1btg

その時に、とーちゃんは呪いをかけられたんだ。俺覚えてるんだ。 まほうつかいは頭を撫でてくれて。 『これくらいの呪い、ゆるしてくれるだろ?』って。笑ってそう言った。

「俺の髪が赤色に見える呪い」

かーちゃんは、酒のせいでとーちゃんの目がおかしくなったんだろうって言う。 けど、俺だけなんだ。とーちゃんの目がおかしいのは、俺に対してだけなんだ。 髪だけじゃない、目も、肌の色も、とーちゃんの目は多分俺の姿を映してはいないんだ。

トール 1btg

……それで、困ることなんてないんだけど。 とーちゃんに俺のほんとうの姿が見えてないみたいなのは複雑だけど。 だからといって、何か変わるわけでも無い。本当に小さな、呪いをかけて。
まほうつかいは行ってしまってそれっきり、だよ。
(遠くを見るように、父親の出ていった扉に目を向けていたけれど  話が終わるとにこりとアルバの方へと向いて)

……とーちゃんの酒代程度には、役に立つ話だった?

アルバ 18k0

トールの話をじっくり聞いて ああ、凄く役に立つ話だった。 …まほうつかいか…。 …多分テルプで間違いは無いと思うけど…。 身体的な特徴が分からないから断定していいのか…。 なんでそんな呪いかけたんだろうな、まほうつかいとやらは…。 うーん…。

なあなあ、その場に居たのはメルポネとまほうつかいとトールだけ? かあちゃんは居なかった? 別の人がもしその場に居たのなら話を聞きたいようだ

トール 1btg

どうして、か。どうしてだろうね。のろいって、……悪意を持った魔法って意味だよね。 とーちゃんは誰かに恨まれるような事したのかな。それとも俺が? 自分の髪を指先でつまんで見ている。

とーちゃん、かーちゃんの顔すごく好きだから。髪の事も綺麗だっていつも言ってるから。 俺の髪もちゃんと金色に見えてればいいのにな。 だけど、それが少しだけ寂しいだけで。呪いなんていう程、実害は無いんだけどね。 ──彼の目的が何だったのか。俺には分からない。

他の誰かがあの場にいてくれたなら、 とーちゃんも少しくらい俺の言うこと信用してくれたと思うんだけどね。 「お前は夢を見た」の一辺倒だよ。
とーちゃんとふたりで出かけた先で、……多分公園かなぁ。 ブランコに乗って、俺はまほうつかいととーちゃんとを見てるんだ。 ゆらりゆらりと揺れて、きらきらがまだ残ってて、夢みたいな、光景…。

アルバ 18k0

そっか…。
うーん…羨ましかった…のかも、しれない。 その魔法使いも子供だったんだろ? もしかしたら親がいなくて…親に愛されてるアンタが羨ましかったのかもしれないぜ? 想像でしかないけど。

…うん、トールの寂しいって気持ちは、ちょっとわかる。 髪の色とか、目の色って血の繋がり感じるじゃん。 俺義理の父親が赤髪なんだけどさ、血が繋がってなくても、嬉しかったもんなあ…。

赤坂 天矢 1btg

マスターと話していた赤坂が戻ってくる。
話、一区切り付きそうです?

アルバ 18k0

お、おかえり。 うん、こっちはほぼ片付きそう。

赤坂 天矢 1btg

アギオスエイマ (652年) の翌年、……か、その次の年くらいに、 テルプさんらしい外見の子がこの町に来ているそうですね。赤毛のアホ毛の、10歳くらいの子。 メモを繰る。 トール君が649年生まれ、だから…4さいか5さいの時?
覚えてるとしたらかなり印象的だったんでしょうね。僕この頃の記憶なんて殆ど無いですけど。

トール 1btg

あぁー、でも、そのくらいかも…。

その頃とーちゃん仕事、転々としてて、それでよくふたりで公園とかに行ってたらしい、から…。

赤坂 天矢 1btg

保護者も無しで、ひとりきりで、ここで食事をして行ったそうです。 その時に、マスターと少し会話をしたんですって。
「このまちには目的があって来たが、もう用事は終わった」事。 「後は帰りの乗合馬車を待つだけである」事。 ずっとうつむいて、泣いているのかと思ったら、顔を上げるとにこにこと笑っていた事。

「俺の歌は誰かを幸せにする歌なんだ」そう誇らしげに、話していた事。

アルバ 18k0

…赤毛、アホ毛…間違いないな。
10歳?! 俺、ここに来るのだとしたらあの街を出てからか…モシュネーの件の後だと思ってた。 …んなちっこいころに一人で来てるのかよ…。 ………。
(トールに向き直る) …ありがと、他に見た人がいないのなら、これ以上は聞いても収穫ないかな。 とうちゃんとかあちゃん、大事にしろよ?

トール 1btg

…とーちゃんがいて、かーちゃんがいて。 当たり前と思ってることが羨ましい奴も、いるのかもな。 少し考えこむように口元に手を。その後すぐに顔をあげて。 どーしょうも無いとーちゃんだけど、ま、とーちゃんだからな。大事にするよ。 呪いなんて、些細な事。それで俺ととーちゃんの絆の、何も変わるワケじゃない。

あんたも、ね。両親?だいじにね。 血がつながってなくても、って。すごく仲がいい親子なの伝わってきた。 あとのふたりも…、家族って呼べる人がいるなら、大事にね。 何かちょっと、ガラにも無く親孝行とかしたくなっちゃった。 へへ、と照れくさそうに笑うと、じゃ、手を振って、恐らく父親の向かった方へと走っていった。

赤坂 天矢 1btg

家族の話題には顔を歪ませつつ、少年を見送って
「赤毛でアホ毛」っていう情報で間違いないって言われるテルプさん。 いえ、僕もまちがいないなって思いましたけど。 一応他にも、楽器持ってたとか、ほら、今も持ってるみたいな石のネックレスしてたとか、 そういうちゃんとした情報も入手したんですよ? アホ毛が決め手でいいんです?

でもまぁ、この町はこんな所。でしょうか。 次は…砂漠、渡るんですよねぇ。少し準備を、していかないとですね。 フェリクスさんの為に日焼け止めとか。

フェリクス 1avd

家族…実家……ハナコ(牛の名前)…ヒナ(牛の名前)…フユミ(牛の名前)…ウッ頭が…
いやなんでもない。

赤坂 天矢 1btg

へぇ…フェリクスさんのご家族って、女性の方が多いんですね?
(姉とか妹だと思い込んでる)

フェリクス 1avd

まあ、そのガキの頃のテルプが言った目的っていうのが、親父に会うことだったのは確かなんだろ。 …呪いをかけることもそうだったかどうかは知らねーけど。

ここで聞けたのは結局、 モシュネーの精霊の話とメルポネの呪いについてだっけか。 後は現地だよな。砂漠やだなあ。(やだやだとごねつつも荷物を確かめて) アルバ、トト族に土産も買ってくんだろ。ちゃんと待ち合わせに間に合うよう準備しねーとな。

アルバ18k0

そうだった!やっべ、ちょっと探してくるわ! (がたがたと準備して酒場を出て行く) (待ち合わせ当日にはなんとかお菓子を用意できているだろう)

赤坂 天矢 1btg

……トト族の人達も…、何かまぁもともと僕の苦手な雰囲気ではありましたけど。 他の一族との不平等な関係、とか、聞いてしまうと何というか。 ──より一層苦手意識が高まりそうです。

まぁ、戦争なんて、そんなもんかもしれないですけど。 特に南部は、強いものが生き残る、そんな地であるイメージですし。 ……それもいずれ、時が経てば変わっていくのでしょうかね。

赤坂 天矢 1btg

*・゜゜・*:.。..。.:*・゜。*・゜゜・*:.。..。.:*・゜。

町から遠く見える赤い山は、傾いた陽に、より赤く染まり。
テルプさんの髪の色に少し似てるかな、なんてそんな事を思っていた。

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