トト族の歓迎

第三期:彼の落としてきた記憶の欠片

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砂漠を渡る民族であるトト族の歓迎を受けて。

〜赤坂による振り返り〜
テルプさんは度々、嫌なことを「自分の催眠術によって」忘れてしまう事がありました。 おそらく彼は、故郷には既に誰もいない事を忘れているのではないかと。

…テルプさんが黙って仕送りをしつづける分には別に問題なかったのですが、 恋人であるアノチェセルさんを村に連れて行くと言い始めたので。 誰もいない村に戻った時、彼がどうなるのか、アノチェセルさんがどう思うのか。 なんて事を考えると、どうすればいいのか分からなくなってしまい。

──相談に乗ってくれたフェリクスさんの提案で、僕達は アノチェセルさんの兄であるアルバさんと共に、 直接、その村を見てみようという事になったのでした。

(C)SUCCESS 2015 ALL RIGHTS RESERVED.   

テルプさんの住んでいた村の名は、モシュネー族集落
マッカ地方の砂漠に囲まれた山。地図で言うと黄色の印が付いた辺りらしいです。 遊牧民であるトト族以外とは外との交流がなかったらしく、詳しい場所も不明。 最終的に、この村の…現在の姿を確認する事が、この旅の目的となるのでしょうか。

まず水色の印のついた街へと立ち寄りました。 テルプさんはここに…15年ほど前から、3〜4年間程度、暮らしていたそうです。 宣教師であり吟遊詩人でもあるネダさんが、テルプさんを故郷の村から連れ出して、 師匠として、文字や歌を教えていたらしいです。が…。
街の暮らしに馴染むに連れ、この街の裏社会に足を踏み入れて。 催眠術の効果を持つ歌を利用した犯罪行為に手を貸したり、していたらしくて。 それも、ネダさんとテルプさんが同時期に行方不明となる事で終わりを告げた、 ……という事でした。

今、僕達が居るのは赤の印がついた街。
この街に丁度トト族が滞在しているというので、 僕らは土産を手に彼らのキャンプを訪れようという話になってるところ、です。

この街の郵便屋さんの話も、フェリクスさんが聞いてきてくれました。 郵便屋さんはテルプさんからの小包をモシュネーに届けてくれた人たちです。 10年前に、先代の配達員がはじめてモシュネーを訪れた時には既に無人。 広場に何十体もの死体が並び、鐘の音が鳴り響くその不気味さ故に、 いわく付きの村として避けられていたそうです。

(テーブルの上に広げられたノートには簡単な年表のような物が書かれている)

651 :大凶作のあった年に、ネダに連れられたテルプが水色の街へ 。その頃からモシュネーへと仕送りをしていたらしい

655 :テルプとネダが街から姿を消す

656 :赤い印の街の郵便屋にテルプからの小包が届く。前任配達員が見たモシュネーは村人は死亡

663 :配達員ダイナに代替わり。モシュネーの死体はミイラ化

664 :テルプ かげつきのクランに入る。出会ったのはアティルトの冒険者ギルドにて。小包を送り続けているがおそらく全て戻ってきている?

665 :←
666 :←↑今このへん

赤坂 天矢 1btg

あとは、えーっと、お土産に「天野」という名のクマを買って。 特筆すべき事、何かありましたかね…。

(ぶつぶつと、メモを見ながら、何か紙に書きながら呟く。3人は、フェリクスが郵便配達員ダイナから教わった酒場に居た)

あ、フェリクスさん、これ、おつまみにどうぞ。 (ギョウザに似た形の、皮にソースを包んでパリパリに揚げたものを。中のソースはチキン・ビーフ・チーズ、と、味の違うものが入っている。 香辛料たっぷりで酒が進みそうだ)

*・゜゜・*:.。..。.:*・゜*・゜゜・*:.。..。.:*・゜。
酒場に並ぶ酒類は個性的なものが非常に多い。

南部の様々な集落で独自に作られた酒を集めてあるという事なのだが、 乳を発酵させた乳酒や、蘭の根から作ったテキーラに似た比較的飲みやすいものの他に、 サボテンから作ったというやたら粘度の高いもの(まずい)や、 瓶の中にサソリや毒草、芋虫などが入ったものなど、 なるほどダイナが「びっくりするなよ」と言うだけのインパクトがある酒が多数並ぶ。

アルバ18k0

(酒は飲まずにノンアルコールを飲みながらやたらスパイスの効いた肉を食べている)
トト族は今この街に来てて、街の外でキャンプしてるっていうから、ご機嫌取りにお土産いくつか買ったんだよな。 (市場で得たトト族の情報をフェリクスに話す。彼らが好きなのは煙草とコカの葉と砂糖菓子。それらをまとめた袋を指差した)
酒場を出たら街の外に出てもいいかもな。話は早いほうがいいだろうし。恐らく。 …で、フェリクスのほうは?収穫あった?

フェリクス 1avd

(乳酒から距離を取りつつ、わーとかへーとか言いながら並べられた酒を眺めたり試飲したり、薦められたつまみの他にも癖の強そうな食べ物を集めて上機嫌だ)

(アルバから話を聞いて、飲みやすい酒をあおり)
んあ、そーだな。さっき赤坂が確認もしたけど改めてな。 オレが聞いたのは…
(モシュネーの集落で郵便配達員が遭遇したという有様を 、食事の邪魔にならない軽い喋りで説明し) ……これで『人が居ない』ってのが『大体死んでる』って確定したわけだな。 しかも異常って言われる状態でだ。鐘の音も気になるし…。

オレはどっちでもいいけど、トト族のとこに早く行きたいってんならさっさと行っちまおうぜ。 オレは土産は本当に帰るときにしてえんだよな。酒ってかさばるしさあ…。

赤坂 天矢 1btg

ええ、すごくかさばりますね。重いし。 (足元に置いてある、イキオイで買ってしまった石彫刻(くま)を見ながら大きく頷く)

…何ていうか。
村の人みんな、何処かへ元気に引っ越しでもしてくれてたらなぁ、とも思ってたんですが。 まぁ、期待はしてませんでしたけども。

市場で出会った女の人も待ってるっておっしゃってましたし、 じゃ、これ食べ終わったらトト族のキャンプに向かいましょうか。 (クレープのような生地につつまれた肉と野菜とスパイスをもぐもぐしつつ、変わった味のお茶を飲む。)

トト族の人たちは、昔からモシュネーと接点があったみたいですし、 詳しい話が聞ければいいんですけど。

アルバ 18k0

その「天野」、俺が持つよ。 鞄に入れておいてくれたらさ。 こういうときこそ、力持ち頼ってくれよ。

ほぼ全滅の原因がまだわからないのが一番なあ…気分悪いというか…。 村の事をアノチェも自分の事の様に楽しそうに話すもんだからさ。

…ん、じゃあ行くか。ごちそーさん! (最後の肉を食べ終えて飲み物を一気飲みすると、とん!と空のグラスをテーブルに置いた)
さあて、あのねーさんのお気に召すかなー…?

赤坂 天矢1btg

え、あ、えっと。
…………すみません、しばらく、お願いします…。
明日になったら、小包で送っちゃいますので、それまで…。

どう考えても体力的に辛いので、甘えさせてもらう事にする。 ずっしりと重い荷物を背負ってさっさと歩くアルバの背中を見ながら、 いつもの。 無いものを欲しいと思う、そして手を伸ばす前に諦める。そんな癖が、また。


*・゜゜・*:.。..。.:*・゜*・゜゜・*:.。..。.:*・゜。

町の外でキャンプをする彼らを見つけるのは簡単だった。 砂漠を走る砂竜と呼ばれる大きなトカゲたちと、 カラフルな織物で飾られたテントが非常に目を引く。
明らかに余所者を見る目で3人を迎えたトト族だったが、 そっとお土産を渡した所くるりと掌を返す歓迎ムード。

トト族の長1btg

我らがトモダチ! 歓迎する!
自らを族長であると名乗った男は、貰ったばかりの煙草をふかして機嫌よく座っている。
< br> 普段は、500人程度の人数で砂の上を移動しているトト族であるらしいが、 町へと交易に来ているのはその代表者数10名、といったところらしい。 その数10名の男たちが、族長の周囲で踊り、低い声で歌い出す。 どうやら歓迎の意を表しているようだ。むさい。


聞きたいことがあるそうだな! 何でも聞くと良い!

カマラ 1btg

その族長の横で、砂糖菓子の箱をしっかり抱えて、無表情に座っているのが町で出会った彼女。 名をカマラ。族長の娘らしい。その涼しい顔からじんわりとにじみ出る満足感。 貰った土産を他の人間に触らせる気はなさそうだ。一人で食べる気だろうか。

アルバ 18k0

(ひえ、族長の娘だったのかよ…!すんげー馴れ馴れしく話しちゃったなあ)
おぉ!ありがとう!ありがとう!我が友よ! (ノリに合わせてこっそり追加で買ったコカの葉をお酌のように周囲に配る) (アルバお得意のご機嫌取りをすると、本題に入った)

実は俺達ちょっとした調査みたいなもんでモシュネー族とその集落について調べているんだ。 郵便局の人からは「10年前に何十人もの村人が不可解な状況で死んでいた」っていうのは聞いてる。 トト族は昔からモシュネーと交流あったんだろ?それこそ、10年以上前から。 モシュネーがどんな集落でどんな人々だったのか、10年前に起こったその出来事についてトト族は何か 知っているのか。
何でもいいんだ。聞かせて欲しい。

トト族の長 1btg

────
モシュネー… それは悪魔に魅入られた村…。

族長の、重々しい言葉に周りの男共が集まって…… 何かと思えば、また皆で歌を歌い出す。暑苦しい。
─それは以前、街の吟遊詩人ジャグジートから聞いた歌によく似ていた。 大きく違うのは、その歌の中で歌われていた『悪魔』が、 明らかに、西方教会の『光の神』の事として歌われている事だ。

トト族の長 1btg

モシュネー族は、我々トト族の兄弟にあたる民のうちのひとつ。 共に同じ神々の加護の下生きていた。
風の神を司る我らが流浪の民ならば、火の神を司る彼らは定住の民。 彼らはモシュネの山に住む火の神に歌と祈りを捧げ、その恩恵を受けて暮らしていたのだ。 我々は山よりの賜り物をモシュネーから受け取り、代わりに生きる糧をモシュネーへ渡す。 それは先祖の代より続くならわしだったのだ。

トト族の長 1btg

朗々と、歌うように節を付けて語る声は、次の瞬間突如荒くなる
しかし、15年前。神の試練が訪れた時! 彼らは火の神の恩を忘れ、悪魔の手先と、取引をしたのだ!
怒りを露わにして、座っていた地面をドンと拳で叩く

それ以来彼らと我らの友好は絶たれた。 彼らは富を貪り神への感謝を忘れ、…ついに火の神は裁きを下された。 山は荒れ炎の風がモシュネーを襲い、 ……悪魔に魂を売った者たちを、皆、地獄へと送ったのだそうだ…。

アルバ 18k0

15年前…。
なあ、赤坂、テルプが村を出たのと同じ時期じゃないか…?

赤坂 天矢 1btg

──そうですね。……一致します。
メモ帳のページをめくりながら、トト族の歌も追加で書き記して。

カマラ 1btg

──その村惨状を直接見たのは、私だが。 何が聞きたい?
砂糖菓子の箱をしっかり抱えたまま、3人の方へと目線を。

カマラ 1btg

私は彼らとの友好が絶たれたその後も、月に一度はモシュネーに足を運んでいた。 父は怒り心頭だったが、当時の私は悪魔の恐ろしさも理解していなかったし ……仮にも我らと兄弟であった一族だから、彼らに協力したかったのだよ。

私はトト族の中でも特別に、魔の術に耐性があったから、 あの悪魔の手先の業も効かなかったのだ。

父が私を監禁してでも止めなかったのは …おそらくモシュネーの内情調査をさせるためだったのだろう。 まんまと、利用されていたのだろうな、私は。

…そうであろう? 父上? と、カマラは少々棘のある調子で、隣りに座る族長を見る。 族長はニヤリと笑うだけで、答えない。

カマラ 1btg

……まぁ、そこで、見たんだ。あの村の最期を。

炎の風、と我らは呼んでいるが、お前たちに分かりやすい言葉で言うならば… まぁ、毒、だな。 鉱山から噴出した高濃度の毒が村を包んだらしい。 皆、苦しんだ様子で死んでいた。 坑内の男たちは恐らく逃げる間も無く。 村に残っていた者は…ある者はドアから出ようとしながら ある者はベッドで喉を掻きむしって。村のあちこちに、屍が、倒れていた。
村を訪れる時期が少し、ずれていたなら、 おそらく私もその風に巻き込まれていたことだろうな。

…モシュネーに伝わる神の掟を破り、無理に坑を広げたのが原因だろう。 掟とはそういうものだ。暗に危機を知らせてくれる。 それに従っていれば、危険は避けられたものを…。

その言葉に族長がまた怒りを露わに

トト族の長 1btg

原因など、決まっておる! 神に逆らったから、神の怒りに触れたのだ! 掟とは神の約束、決して破ってはならぬのだ!

カマラ 1btg

騒いでる族長と、その周りで踊り出す男共を横目で見ると、3人にだけ聴こえる様に ……前時代的ですまないね。

アルバ 18k0

…毒…。そっか…毒で亡くなってたのか…。テルプの村の人は…。 …なんで、そんな無茶をしたんだろう…。 あのおっさんは「富を貪った」とか言ってるけどさ、 長年守ってきた掟を破るなんて大体誰かに唆され… (そこで、ピンときたようで)

(これまでの旅で聞いた話を思い出しつつ、アルバはカマラにこう聞いた)

なあなあ、さっきから「悪魔」っていうの、西方教会のことだろ? 俺達、これまで集めた情報でその「悪魔」に該当しそうなヤツ、一人思い当たるんだ。 「悪魔の手先」って、ネダっていう吟遊詩人じゃなかったか?

あ、あともうひとつ。カマラが村の最後見たとき、死体は等間隔に輪になってたのかな? 俺達は郵便屋からそう聞いてるんだが…。
…でもおかしいよなあ、 毒で苦しんで死んだなら輪になって「綺麗に」死ぬとか考えられないんだけど…。 (ひとり云々唸っている。聞きたいことは山ほどあるが纏まってない感じだ)

トト族の長 1btg

……なぁ我らが友よ。

貴様らは、あの悪魔の教会とどういう関係だ? まさか貴様らも、あの悪魔の手先ではあるまいな? 笑顔ではあるが凄んだ様子で。 族長の声色が変わると同時に、今まで踊っていた男達のうち2〜3人が、 テントの入り口を塞ぐように、移動する

赤坂 天矢 1btg

(あわあわと慌てて首を横に振っている)

アルバ 18k0

(「ネダ」って単語出しただけでこれかよ…)両手でどうどう、と押さえると 言っただろ?俺達は調査に来たんだ。 悪魔の手先の名前がビンゴだったのか知らないけど、 俺達もここに来るまでに色々情報を手に入れてるだけさ。 その調査も友達のため。 「友情」に厚い「我が友」ならわかるよな?な?

…ああ、それともこの格好が気になる? (自分の鎧とロザリオの十字を指し) 俺こんなナリだけど西方教会関係ないし、なんだったらここで破壊してもいいよ。

トト族の長 1btg

調査、と言ったな!

我が友よ、……我らを、あの村を、悪魔の遣いの行方を。 知りたがる者は「奴ら」以外に考えつかぬ。 お前自身はあの教会に属してなくても、…調査を依頼したのは誰だ? ……友の友は、敵かもしれぬ、そんな悲しい世の中だ、友よ。

……しかしまぁ、何も知らずに来たようだ。 その芯までは悪魔に侵されてはいないと、誓えるか? 友よ。 周囲で鋭い目を光らせる男達を片手で制しながら。 トト族の出で立ちをよく見ると誰もが宝石などのアクセサリーと共に武器を帯び、 戦闘民族である事がうかがえる。

イラスト:かげつき

赤坂 天矢 1btg

…………自分の気に入らなければ掌返す、薄っぺらい友情ですよね。
両手を挙げて降伏ポーズを取りつつ、ふたりにだけ聴こえるように、物騒なことを口走ってる。

アルバ 18k0

調査を依頼したのは誰かだって? 俺達自身だよ。 言っただろ、友達のためだって。 …ああ、いや、その友達が依頼したわけじゃないから、結局は自分のためだな。 俺が知りたいからそうしている。それだけ。 (テルプの事…モシュネーの生き残りの事は、まだ話さない方がいいな…危険すぎる)
「奴ら」って誰だよ。俺の方こそ知りたいっての。

…で?「誓う」けど…何がいるの? その様子じゃ、言葉じゃ信用してくれないんでしょ? 随分警戒されてるようだし。

カマラ1btg

……客人よ。
我らが族長は貴様らだけではなく、その友人殿とやらも含め、 あの教会の…西方教会の関係者であることを危惧している。 我々にとって、あの異教は忌むべき対象であり、 ──奴らにとってもまた、我らが神々は排除すべきものであるらしい。

我らは誇り高き戦闘民族。 ……とはいえ、正直、奴らと正面切って争うのは避けたいのだ。 15年も前の出来事とはいえ…。過去の確執は、現在の争いの火種になりかねん。 一族の存続がかかる問題だ。慎重であるのは許してほしい。

トト族の長 1btg

争うというならば、我々は退きはせぬ!
正義は我らに……!

カマラ1btg

…あぁもう、父上は話がややこしくなるから黙っていてくれ。
娘にたしなめられて、何か言いたげな族長は不承不承ではあるが席へと座り直して。 それを横目に、カマラは席を立ち3人の方へと歩み寄る。
誓ってくれるというのならば。

──少し、術をかけさせてもらおう。
精神に作用する……催眠術のようなものだが。 人の心を覗いたり、人を操ったり、そういう魔法があるだろう。 まぁ私の術はそう大したものではない、少しの嘘を見抜いたりする程度だが。
西方教会の息のかかった者ではないと、客人が誓えるならば、 私の目を見て、心を開いてくれ。 ──その異教の鎧に身を包んだお前でいいか? アルバさんの目をじっと見て、問いかける。

アルバ 18k0

…わかった。 いいよ、俺がやる。 (朝焼けのような紫の瞳が「受けて立つ」と言わんばかりに彼女を見詰め返す) (徐々に無心になっていくと同時に、何かが入り込んでくるような気がした)

カマラ 1btg

真っ直ぐな目線を、苦笑で返す。 ……嘘か真か、なんてのは、魔法なんて使わなくともこの時点で分かるんだがな。 清廉潔白でないと心など開けない。…そう思うだろう?
小さな声で歌を歌うカマラの瞳の中に、炎がゆらゆらと揺れるような、 そんな光景が見える…様な気がして。
今からの質問に、全部「はい」で答えてくれ。

カマラ 1btg

お前は我々に、敵対する者ではない?
我々の富を脅かす者ではない?
お前は西方教会に所属する者ではない?
お前の依頼主…友人もまた、そこに所属する者ではない?
それは、断言出来るか?

他にも幾つかの質問が。それに応える度に、彼女の笑みは満足気なものになって行く。

アルバ 18k0

全てに「はい」と答えて行くと、「嘘」にだけゆらり、と炎が瞬いた気がした。 どこかの誰かが使っていたものと、少し、似ていると思ったのは気のせいだろうか。

カマラ 1btg

持ってきてくれた砂糖菓子、あれはなかなかの値だっただろう? ふふ。
お前は肉は好きか?
酒は飲むのか?
……ふむ。お前は飲まぬがご友人が、といったところか。
今は、腹は…減ってなくとも、多少なら食えぬ感じでは無さそうか? ふむ。
どうでも良さそうな質問を挟み、にやりと笑みながら。

カマラ 1btg

──非礼を詫びよう、友人よ。 くるりと踵を返すと一族の皆に向かって大きな声で
トトの皆よ、彼らの友情は証明されたぞ! 精々もてなすがいい!
おおー、と上げられた声は喜びなのか歓迎なのか。 扉を守っていた男たちが奥からなんやかんやつまみのような物を運んできたりしている

アルバ 18k0

無実が証明されると、ふう、と一息ついて体の緊張を解く。
…信じてくれたのならよかった。 戦闘民族っていうからそこのムキムキのにーさんとか、 もしくは族長とかと決闘でもしろって言うのかと思ったよ。

トト族の長 1btg

おお、トモダチよ! まぁ座れ。 これでお前たちが悪魔憑きで無いことが証明された。よかったな! はっはっは。 先程まで戦闘態勢であった事などさっぱり忘れたかのように豪快に笑う。 当然謝罪などは望めそうにもない。

…ネダ。確かにあれはそんな名だった。 西方教会、と呼ばれているらしいが、あれは神の名を騙る悪魔の姿。 敬虔なモシュネーの信徒を怪しい業で惑わし、その富を奪い、ついには滅ぼした!
しかしその業を学び…信仰心故にその術をはね退ける我らがトトの娘、我が娘カマラが! ここで大きな動作で自分の娘を指差して。指されたカマラは居心地の悪そうな表情だが。 かの悪魔の遣いを退けたのだ! あれは我らが地獄へと送り、……そしてもう二度と帰ってこない。 業火に、焼かれ続けるのだ! また歌が始まる。カマラを称える英雄譚のようだ。

カマラ 1btg

大きく嘆息し、目頭を抑える。
まぁ…族長の話は半分程度に聞いておいて欲しいが…。 どちらにせよ、あまり「外」ではおおっぴらにしたくない話でね。 調査、などというものだから、てっきり教会が彼の行方を探してるのかと。
15年も前のことを、何故今更、と思ったが。まぁ、お前らが敵でなくて、一安心だ。

アルバ 18k0

そうだな「調査」っていうにはちょっと仰々しいか。 誌的にいうなら…「ある人の記憶の欠片を集めてる」…だな。 それが、さっき言った友達。

ここじゃ、カマラのねーさんが実質の権力者みたいだな…。長のおっさんより。 何事もなかったかのように豪快に笑う族の長を横目に見ながら。 おっさんは「悪魔を地獄に落とした」とか言ってるけど …その感じだと追い出しただけで生きてる…が正解か?

…正直、この旅で色んな話を聞いてから、ネダってやつにムカついてしょうがないんだ。 生きてるならぶん殴ってやりたいね。
吐き捨てるようにそう呟く。

カマラ 1btg

私が、権力者? ……実際そうだったら、良かったのだがな。なかなか、難しいものだよ。 良いように使われているだけさ。
ちらりと目を走らせた先には、族長の隣に佇む(アイコンも用意してもらえない) 冷たい雰囲気の男。 先程から一言も発していないが、族長の隣にじっと佇んでいる。 まるですべてを監視しているかのように…。 (しかしおそらくこの旅にはあまり関係ない人だろう

カマラ 1btg

──それで、あとは何だったか。 ああ、モシュネーの屍の話だったな。
屍が綺麗に並んでいたのは。 あれは、……あの村にはひとり、生き残りの子が居て。 何というか、村の惨状を見て、少し、…おかしくなってしまってな。 彼が、並べていた。

──祭、なんだと。

祭の日には広場で、皆で踊るんだそうだ。 動かなくなった「それ」を広場の真ん中へと引きずってきては、花やら石やらで着飾らせてな。 その真ん中で、ひとりで、楽しそうに歌っていたよ。 子供心に、あれは何というか…、恐ろしい物を、感じたな。

思い出して気分が悪くなったのか、口元を手で抑えて ああ、すまない、食事を持ってきたというのに。
しかしそうか。盗賊などに荒らされずに、そのままだったのだな。 ──良かった。彼も喜ぶだろう。

アルバ 18k0

…そっか…。 カマラは、本当に村の、最後の最後を見たんだな…。
村の皆が凄惨な死に方をしているのを…
年端もいかぬ少年が目の当たりにみて、気が触れないわけがない。
死体に囲まれた中で、揚々と歌い踊る彼を想像し
…現在の…テルプのルーツが、少し見えた気がした。


ああ、悪い、気分を悪くさせて、
…ごめんな、もう少しだけ聞かせてくれ。
その最後の後、その生き残りはどうなったんだ?
…放っといたわけじゃないだろ?

カマラ 1btg

彼を? 当然、連れて帰ったさ。 なかなか言うことを聞かないもんで、色々とつくり話をでっち上げてな。 「街に出稼ぎに行くんだろ」なんて言葉を信じて、ようやく連れ出したが。
──ネダ、の事だが、な。最期を見たのは、確かさ。 ふふ、ぶん殴れなくて、残念だな。

カマラ 1btg

…悪魔を……ネダを、退けたのは。死に追いやったのは。──私では無い。 族長は…父は、私を英雄に仕立てあげたいのさ。私を「権力者」にする為に。 あの歌も嘘ばかりだ。我らの富を守るために、な。

ネダを殺したのは、今話したモシュネーの生き残り。 テルプという少年だよ。

アルバ 18k0

なっ――!?
予想だにしなかった事実を告げられて、絶句する。
嘘…だろ? だって、アイツはネダを慕って…。

カマラ 1btg

トトでは、父が彼を「かわいそうな悪魔の被害者」の象徴として祀り上げていたよ。 我々は信仰によって結束を固めている。 悪魔を呼び入れ、神罰が下って滅びた村、なんて、丁度いい「材料」だろう?

だけど、街へ寄った際にふらりといなくなって、そのままさ。 あの様子では、どこかで野垂れ死んでいるんじゃないのか……。 そこまで言って顔を上げる 待て。お前の、友達とやらは、まさか。大きくなりかけた声を抑えて
……テルプが、生きているのか?

アルバ 18k0

カマラの口から友人の名が出たことで、観念して彼は続けてこう言った。

…ああ、そうだよ。 テルプは俺の友人。 そして生きている。……何もかもを文字通り、忘れてな。

アイツにとっては今もモシュネーは存在して、皆生きていることになってるんだよ。 だから、俺達は探しているんだ。テルプの記憶を。 正直、それを探し集めて、どうするのかとか、考えてないけど。 俺にとっては他人事じゃないから。

…テルプは、ネダに連れられて村を出たんだ。 数年ネダと他の町で暮らして…まあ、ネダはその町でもモシュネーにやった事と同じことをしてたみたいだな…。

ネダが最後までモシュネーに干渉していたのなら…再び村に戻ってきた時に惨状をみて…それで、ネダのせいだって、わかって……殺したんだろうか…。 カマラに訊ねているのか、ただ呟いているのか。

カマラ 1btg

──ネダの死に関しては、外では話すなよ。 あの教会の宣教師を、異教徒が殺した、などという話が奴らの耳に入ってみろ。 ここぞとばかりに喜び勇んで、粛清にやってくるだろうさ。斯く在れかし!

アルバ 18k0

ははっ!共通の敵を倒して士気を高めるなんて常套手段だもんな。 大丈夫だよ、秘密は守る。 俺の目を見たアンタなら信じてくれるだろ?
だから、もっと教えて欲しいんだ。 …真実を。

テルプが、ネダを殺したときの事を。

俺は…どんなに酷い真実でも、受け止めなきゃなんないんだ。 いずれ、家族になる人間として。妹のためにも。

カマラ 1btg

忘れて、生きる、か。幸福だな、というべきだろうか。 ……まぁ、客人の様な友人が出来たのは喜ばしいことだ。

…あの頃より、まともに話は出来るようになっているのか? 私が最後に見た時にはふわふわして、いつ消えてもおかしくない感じだったが。 ──まぁ、実際消えてしまった訳だが。

アルバ 18k0

まともに会話…。 昔からなんだな、テルプは。 あー…どうなんだろ、最初に会った時はそんなだったけど、 今はそれなりに変わったんじゃないかな。
いや、変わったと思いたい。

カマラ 1btg

複雑そうな顔をしつつも、少し安心した様で、笑顔を作る。 その後、大きくため息をついて、眉間に皺を。 ……正直、どこから話したものかな……。

テルプが、ネダと一緒に街に住んでいたのは、よく知っているよ。 村への手紙と、仕送りを、モシュネーへと届けていたのは私だったから。 ひとくち、強い酒で口を潤すと、時々思い出すような仕草をしながら語り始める。

アルバ 18k0

えっ、カマラが仕送り手伝ってたの!?
……そっか、じゃあ、カマラもテルプの友達だったんだな…。

カマラ 1btg

モシュネーと我らトトの民は、…先程父上が話しただろうか。 神々の契約により、結ばれていた。 モシュネーの宝をトトが受け取り、代わりにトトがモシュネーに生きる糧を与える。 その関係が崩れたのが15年前。酷い飢饉で、我らは我らの糧を得るだけで精一杯だった。
生きる術を失ったモシュネーへとやってきたのが西方教会の宣教師達。その中に、ネダが居た。 教会は村を救い、……歌の才能を見出されたひとりの少年が…テルプが、ネダと共に村を出た。

父はそれをモシュネーの裏切りと言うが、 最初に「糧を与える」という約束を違えたのは我らの方だ。 彼ら一族が生き延びるには、西方教会の手を取るしか方法が無かった筈だと、そう思う。

当然父は、モシュネーを彼らの手から取り戻そうとした、らしいが。 ネダの力で、モシュネーの村には…結界のような、「音」が、響いていてな。 トトの民はそこに近付けぬ様になっていて…。 そんな中、特殊な能力を持った私だけが、その音をくぐって彼らに会いに行けたのだ。

カマラ 1btg

私は彼らとの友好を続けたいと思っていた。勿論テルプとも。
テルプは、トトがこの街へと訪れるのと同じ周期でやってきて、 …私は彼から手紙や食料を受け取って、内緒でモシュネーへと届ける役目をしていたのだ。

時々、見たことないような街のお菓子なんかを、私へ、と買って来てくれてな。 ──その頃、トトの中で街の贅沢なものは「悪魔の誘惑だ」などと語られていて。 私は神を畏れながら、それでもあの甘味の誘惑に耐えられずに、 こっそり砂糖の菓子を口にしていたものだ。 懐かしそうに、ふふ、と笑う。
小娘のすることだから、恐らく父にはすべてお見通しだったと思うがね。

カマラ 1btg

そんなテルプだったが、街で暮らすうちに、何というか…。変わってしまってな。 受け取った手紙は、私が彼の母へと読み聞かせてやっていたのだが、 手紙の内容も、少しづつ、何だろう、棘があるというか。──冷たいというか。 本人は「色んな事が分かるようになっただけ」と話していたが。

…菓子の差し入れも、いつしか、何だか高価そうな宝石なんかになっていったな。 それでも村への仕送りは、欠かすことは無かったよ。

カマラ 1btg

…655年3月。あの祭の時に。
村に新しい鐘が作られて、その後すぐに、村全体がおかしくなった。 ネダとテルプの作ったその魔法の鐘は、人を狂わす力を持っていたらしい。 掟を忘れ、神の山を切り崩した彼らの末路は、先程話した通りだ、な。 いつもの様に手紙を届けに行って……惨状を見た私は、直ぐにテルプへと知らせたよ。

知らせを聞いたテルプは私と、…ネダと共に、村へ向かって。 村を見たテルプがネダへと何か詰め寄って。……言い争いの内容は聞いてない。

その後、ネダは 自らの足で溶岩の中へと歩き出した
お前がテルプの友人なら、──恐らくそれをさせたのがテルプなのであろうと 推測、出来るだろう? 或いは、今はそんな強い魔力を持ってはいないのかもしれないが。と、付け加えた。

アルバ 18k0

話が終わると、どこか遠くをみて、思い出すように。
テルプは 「この歌が誰かの痛みを、悲しみを消して、誰かを幸せに、笑顔にする歌だ」 って言ってたよ。 前に、幻術と催眠の術の片鱗を見せてくれた事があるんだ。 異質さを感じるほど、テルプは「悲しみ」を排除しようとする節があったな…。

それでさ…ネダに利用されてたとはいえ、 テルプの歌で実際に幸せを感じた奴はいたと思うんだ。 テルプも、最初はただ純粋に楽しませて、喜ばせる事が嬉しかったのかもしれないな…。 それが…自分のした事で大切な人達が壊れてしまって…慕っていた人を手にかけて…。 …気が触れるぐらいの悲しみの中で、何を思ったんだろう…。 聞こうにも、当の本人は忘れてるんだろうけど…。

そこまで呟いて、静かに息を呑んで。 ………ああ…そうか、その時から…アイツは目を閉じるようになっちゃったんだな…。
そんな風に一人で納得した気持ちになっていた。 悲しい真実に寄り添って、アルバは想う。 忘れてしまった彼と、本当は自分より適任な…でも今はまだ、真実を知らない妹の代わりに。

カマラ 1btg

──。彼に関して私の知る事は、以上だが。

何か、他に聞かれていた事項は無かったかと、アルバの言葉を思い出して、ふと、顔を上げる。 ……なぁ、ちょっと待て、家族になると言ったか? 別のひとつの可能性に思い至りつつも ……よ、養子か?

アルバ 18k0

嫌な渇きを潤すために水を口にすると、唐突の養子発言に噴出して。
ぶぁ?!! よ、ようし?!なんでそんな発言になるんだよ! 妹!妹がテルプと付き合ってんの! で、このまま結婚したら俺義兄だろ?そゆこと! 年上の弟とか超複雑だけど…。

そこの赤坂がテルプと同じクラン所属なんだ。 テルプは今も仕送りしてるみたいなんだけど、当然返ってきてて…。 村に誰もいないことはその時知ったんだと。 そんななかさ、妹が「テルプと一緒に故郷の村に行く」って言ってさ…。 まあ、調査の切欠はそんなところ…。
教えてくれた赤坂には感謝してるよ。 こんな凄い真実だとは思わなかったけど。

カマラ 1btg

けっこん…。けっこん。……結婚、だよな。 私の中では彼はまだ、15にも満たない少年のままだったから。 そうだな、生きていればもう…しっかり、大人なんだな…。 感慨深そうに、しかし眉間には皺を。イマイチ実感が沸かないらしい。
──なぁお前たち、もし暇なら、モシュネーに、行ってみるか? 暫く行ってないから、どうだか分からんが、テルプに、会えるかもしれないぞ。

カマラ 1btg

テルプが我々の前から姿を消した後も、ずっとあいつは村で歌ってる。 ……どういう仕組みかは聞くな。私にも分からん。幻術に似た何かなんだろうが。 話も出来ない。触れることも叶わない。ただの映像。 モシュネーの中心、村の真ん中で、ただあいつが歌っているのが見れるだけだが。 私はてっきり、幽霊だと思ってた。と、真面目な顔で続ける。

暫く行ってないからどうなっているのか…。 もしかしたら魔法の効力もとうに切れて、そうすれば何も見れないが。それでも良ければ。 …興味があるなら来るといい。

赤坂 天矢 1btg

えぇと、ひとついいですか?
周りの男共に絡まれながらも、ちらちらとカマラの話に耳を傾けていたらしい。 横からおずおずと、口を挟んで。
テルプさんは、 「誰もいない村を見ても、皆生きていると思い込む」……感じだったんでしょうか。

カマラ 1btg

当時は、…そうだな。思い込もうとしていた、風だな。 自分ででっちあげた嘘に矛盾が出る度に、喚いて暴れて大変だった。 その度に…作り話の「設定」を修正してたんだろう。次第に嘘は流れるように自然になり。 そして何とか「物語」が完成したんだろう。精神的に少し落ち着いた頃に、いなくなった。

屍に話しかけたりしていたから、我々とは違う世界を、見ていたんだろうな。

赤坂 天矢 1btg

ふぅむ、と、手を口元に当てて考える様な仕草。
それでしたら、テルプさんとアノチェさんが村に行っても、何とか周りで口裏を合わせれば、誤魔化せるんじゃないでしょうか。 テルプさんの嘘に、皆が合わせて、皆生きてる風に振る舞うとか。 アノチェセルさんには全面的に協力してもらう必要がありますけど…。

或いは、どうにかして村へと帰ってもらうのを阻止、するか…。 何らかの、納得してもらえるつくり話を、用意して。

テルプさん、多分何処かで、村がもう無い事分かってますよ……。 荷物が戻ってくるのを見ないふり、出来るんですもん。それが意識下のものだとしても。 ──僕らの話を、何とか納得してくれたり…するんじゃないでしょうか。 自信は無いですが、と注釈を付けて。

とりあえず僕は、「どうするべきか」っていう最初の目的の目処は付いたので この辺で十分ですけど……。 村へと行くのはあまり乗り気では無い様子だ。

アルバ 18k0

俺は…行ってみたい。
いいじゃないか、亡くなった人の手向けに行くと思えばさ。 赤坂の言う口裏合わせにしたって、実物を見といたほうが俺はいいと思うし。

…アノチェはなあ…。 全部話せば、協力はしてもらえるだろうけど、あいつ嘘つき続けるの苦手なんだよ。 そのうち居た堪れなくなってテルプに話しちまうんじゃないかな…。
無理強いはしないけど…赤坂がどうしても嫌なら、俺だけでも行ってこようと思ってる。 …フェリクスはどうすんだ?

フェリクス 1avd

(トト族の宴に混じってよろしくしていた所に話題を振られ驚いて) うわ、お、オレ!?急に話振んなよ、驚くだろ…いやちゃんと聞いてたけどよ…。

……行くべき、じゃねえかなとは思う。テルプがまだ、モシュネーで歌い続けてるとしたら…。 あ、でも郵便屋の話にはそういう幻みたいなのはなかったな。 あいつがたまたま聞いてないだけで今でも”いる”のかもしんねーけど。

オレはモシュネーに行くのに賛成…ではあるんだが、今すぐはちょっと遠慮したいかな。 せっかく本人がいねえんだしもっとじっくり調べてからにしねえ? もう必要な情報は大分出たとは思うんだけど、まだ調べてねーこともあんだろ。 ま、実質代表はアルバだし、発起人は赤坂だからな。お前らで話し合ってくれや。 (言うだけ言ってトト族の英雄譚を聞く姿勢に移るが、肩をすくめている。苦手なタイプの音楽らしい)

トト族の宴会では、族長の横に佇む男が次期の族長候補である事、 現族長は、自分の娘であるカマラを跡継ぎにしたいらしいという事。 また、モシュネーの様な、トト族の「兄弟村」が南部各地にいくつもあり、 それぞれ富を分けあって成り立っているという事などが聞けた。

その他は、いかにトト族が優れた能力を持つのか、 我らの神がいかに素晴らしいか、など、賑やかな歌と踊りに終始していて。 「我らの偉大さを称える歌を歌う権利をやろう」 などと言って、フェリクスをさらにうんざりさせる事だろう。

アルバ 18k0

おま…。まあいいよ、任されるならむしろやりやすいから。 赤坂、悪い…。もう少しだけ付き合ってくれ…。

カマラ、そんなわけで、モシュネーに連れて行って欲しいんだけど、 もう少し他を調べてからにしたいんだ…。
そう、この町。 地図を出して緑色の×印を指す テルプの父親…かどうかわかんないけど、モシュネー出身の男がいるらしいって情報がある。 だからここにも行って来ようと思ってる。

トト族はこの町だけでなくて、他の町も回ってるんだろ? この緑色の町に来るのはいつぐらいになりそうだ? タイミングが合うなら、その町で落ち合って、モシュネーに向かいたいんだ。 …どうかな?
あんまりタイミングが合わないようなら別の所で拾ってくれても構わないよ。 投げられるなら仕切ってやるとばかりに、ちゃっちゃか計画を立て始めた。

赤坂 天矢 1btg

……発起人…。 その単語にどんよりとした表情で、こんな筈じゃ、などとぶつぶつと言っている。

何か、手向けってより、墓荒しでもしてる気分でして。 あぁ、えっと、意図的に沈めたものを掘り起こす作業っていうのが。 いえ、このままにしておくのも難しいのも、理解はしてるんです。えっと。 いろいろと言い訳じみた言葉を並べているが
──ふ、ふたりが行くなら、僕も…。 自己主張の無い結論に行き着いた。

カマラ 1btg

アルバの地図を覗き込みながら……その(緑の)町には寄らないな。 我らは、砂漠の民だ。この中── テルプの村である黄、現在の街である赤、そしてモズネブ、パティラを円で囲むように指を動かし 砂漠に点在する我らの兄弟町を順に廻り、そしてこの街(赤)にて売買を、行う。

連れて行って欲しければ、お前らが日付を合わせてここへ戻ってこい。 二週間後だ。
お前たちが我ら程に砂漠慣れしているならば、砂漠に居る我らと合流してくれても良いが、 そこらの乗り物では、我らの砂竜には追いつけぬだろうが、な。 ふふん、と、少々自慢気に。

モシュネー出身の男、と聞いて

何だ、あれも生きているのか。ああ、モシュネーから掟に背き、逃げ出した男。 テルプの父親だ。名を…何と言ったか。メ…メル……思い出せないらしい
……まぁ名前はいい。そいつが掟に背いた所為で我らとの関係が悪化して。 あの飢饉の時、モシュネーへの援助が後回しになったんだ。 ──テルプも、居心地悪かったんじゃ、ないのかね。あの村の中では。

アルバ 18k0

モシュネーの掟…? …そっか…約束事を破って責められたんじゃ、確かに居心地悪いよな…。
うーん、その町には寄らないのか…。 なら仕方ない。連れて行ってもらうのはこっちだからな。 砂漠で合流とか勘弁してくれ…。慣れてないの分かった上で頼んでるんだからさ。

これ、預けるよ。 首から提げたロザリオを渡す。裏に「Alba」と書かれている。 約束を交わすのになんかいるかなって。 異教徒の物持ちたくないかもしれないけど、俺にとっては大事なものなんだ。 これを取りに、また来る。 二週間後に此処で会おうな。

丁度いいから、トト族が巡回しない町でいい菓子みつけたら買ってきてやるよ。 楽しみにしててくれ。 (にしし、と笑って)

カマラ1btg

ロザリオを受け取り、アルバの顔をまじまじと見つめる。
……お前、変わった男だな。
約束、と言っても、我らは街へ寄るついでにお前らを拾って行くだけだ。 それとも、あれか。お前は、我らの友情を試すつもりか? にやりと笑って。

まぁいい、預かっておこう。 約束の時にお前らが居なければ、…これは私のものでいいという事だな? ──ふむ、土産が期待出来ない時は、これを売り払って何か甘いものでも買うとするか。 あながち冗談でも無さそうな顔で、それでもしっかりと、ロザリオを布に包み懐へとしまう。

その後、夜通し歌い騒ごうと誘うトト族の男共の誘いを振り切るのに 非常に苦労した3人だった。……かもしれない。