いつか天命尽きるまで
第五期:そしてこれからの話


巡り廻る、閉じた時間の輪に囚われていたこの世界。
天野さんの話していた「天命喰らいのものではない世界終わり」というのは……
それはどうやら、この閉じた世界が開かれることを、あらわしていた様だ。
いつもの巡りが今回は、来ない。
ようやく一方方向へと流れ出した時間。
この世界の変化の所為なのか、黄金の門の力なのか。
300年後の世界に飛ばされた、なんて冒険者もたくさん居るらしい、と天野さんは語る。
「残念ながら、今のおれには見えぬけれど、な」なんて言ってたけれど、
……つまり、今までは…そんな未来まで、見えていたという事なんだろうか?
天野さんはそれ以上、話を聞かせてくれなかったけれど。
今ここに姿が見えぬ彼らも、新しい世界でうまくやってるのだろうか、なんて思いを馳せる。

……停滞を。
変わらない事、意味が無いことを望んでいた僕は、もういない。
何だか僕の望みが、あの時間の歪みを生み出していた様な、そんな気がするのだ。
──実際の所、時間が巡っていた理由も、流れ出した理由も分からない。
僕らの手の届かない場所で何か大きな出来事が起こったのか。
はたまた意味なんて無かったのか。
……それは僕らが知り得る物語では無いようだ。
そう、僕らには、僕らの物語がある。

さぁ。
未来が待ってる。
僕らにも、そして、皆にも。
クラン:とある孤児院より
***

うーん、おばさんもおじさんもいるからそうそう困ったことにはなってないけど…。
…でも、確かに穴はでかくてさ。人手はあったほうが嬉しいな。
俺も、そのうちセリオンの騎士団の方に戻らないと行けないだろうし…。
ちゃんと、お金は払うから手伝ってくれる人は、いてくれたほうが助かるよ。
ただ…俺がここにいなくても手伝ってくれる人ってなると、
凄いこっちの都合押し付けてるみたいになるから、あんまり言えないけどな…。

あ、あの…
大分前にこちらのお手伝いをしたときに…ここで働かないかと誘ってくれましたよね?
あの約束…まだ有効ですか?
もし有効なら…その誘い…受けたいと思うのですが…。
理由は…アルバさんの事も確かにあります。
でも…ここの子供たちが幸せになってくれるのも嬉しいんです。
私も…場所はちがうけど孤児院で育った身ですから……その…
ここに住む子供たちにとって安らげる場所にする手助けが…少しでもできたらなーって…。

え…?いい…のか?
驚いて目を見開く。
あの誘い自体、受ける受けない以前の、ボヤキに近いものだったのに。
それをきちんと覚えていて、受けてくれる彼女に嬉しくなったとともに恥ずかしくなったのだ。
そしてその理由もきいて。
そっか、やよいも孤児院で…。
…結構長い付き合いなのに初めて聞いた気がするよ。
…ありがとう。やよいがそこまで考えてくれて、嬉しいよ。
…改めて、頼む、やよい。
この孤児院を、手伝ってくれ。
深々と頭を下げる。
さらり、結い上げた赤い髪が流れ落ちた。

色々と至らない所があるかもしれませんが…
この場所が心地いい場所になるように…出来る限り…協力させてください。
そして深々と頭を下げる彼に応えるようにやよいも深く頭を下げる。
頭を下げた時に…アホ毛も一緒にゆらりと揺れた。
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…君鳥…いや、アリシア…
恭しく騎士の礼をしようとしたところを、アリシアに止められる。
フォウはバツが悪そうな表情をすると、そのまま抱きしめて。
ありがとう、アリシア…。私の、幸福の鳥

始まりは二人が遠征に旅だったことから。
そこから二つの星が数奇な巡り合わせとともに親を探す旅が始まって。
今またこうして二人が、原点へ。
終わりはしない。続いてく。
鳥と、星の物語は、これからも。
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To Be Continued
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クラン:ГЕРОИ
***

セリオン郊外にある 小さな木造一軒家。
広い庭は沢山の花が咲いている。近付けば花の香りが漂ってくるだろう。

ビリー:人に戻りました。賞金稼ぎは控えめに、大体家で過ごす

マナ :祈り子へ転職。大体精霊堂に出入りしている

ヴァン:冒険稼業に夢中。たまに稽古つけてもらいに帰ってくる

チェイネル:ちょっと家が寂しくなったけど、幸せ。

アヴェ:そろそろ現役引退を考えつつも、いまだ独身

ナナ :精霊堂の再建と動物愛護の活動に力を入れる

時々は、冒険に付いてきてもらったり。
……珍しい豆が手に入ったから、なんて言い訳を用意して。
花の香りに包まれて、ほんのちょっと、暖かい家族の笑顔を、
分けてもらいに行ったりするのだ。
クラン:穀潰しどもの寄合所
***

剥がされた絨毯と、壁に残った画鋲の跡。
家主の薬箪笥を含めた家具は新居に持ち出されたり、各々で処分をしたりなどして。
いつも人で賑わっていた使い古しのテーブルは、結局愛着が湧いた神父が引き取った。
誰かさんのお気に入りの寝椅子は、作りがしっかりしていたので工房で張り替えをするようだ。
客を出迎え、冒険者としての活動の核となっていた受付の机は、継ぐひとを待って預けられる。
…いずれにせよ、暖炉の中まで掃除されて、寄合所は文字通りもぬけの殻と化した。
鉢に植わっていた植物の類は、これからは広い大地で根を伸ばす。

「…本当に何もなくなったわけじゃない」
ぽつりとつぶやいたのは、誰だっただろうか。ただ、誰もがそう思っていたのは明白で。
沈黙が肯定を返した。名残惜しさを抱えつつも、今更言葉にするのは手遅れというやつだ。

飲みに行こうか、と薬師が言った。今夜は宴会だ、笑顔で別れようと。
たまには冒険者らしく、度の薄いエールをジョッキに注いで。
それ以上の黄金は持てずとも、彼らはそれぞれの道を歩む。
クラン:一突き隊
***

…ワタシは、ワタシのために今まで戦ってきた。
父さんの、ワタシのせいで死んだ父さんの無念を晴らすために、
良いように言えばそうなのだけど。死者は、何も、…語らないわ。
(あの幻聴がいっそ本物なら、それで良かったのに)
だから全部ワタシのため。
アナタもアナタ自身が、黄昏を終わらせたいと思って、だから
こうしてやってこれたと思っていたし、
…でもそうじゃないなら、望まぬことをさせているのなら。
…ワタシはアナタが隣にいると安心する。仲間だから。
でもね、望まぬことをさせてアナタを損ねる方が嫌。
……だから、独りでもやってみせる。
それがワタシの気持ち。わかってくれた?
…それでアナタ達はどうするの?

守るのが俺の仕事だからな。
好きなものが傷つくのに耐えられない。
…お前と同じことなんだよ。
だからさ、隣に置いてくれよ。
てか、別に解散しようが、付いていくつもりだが。
それは自由だろ?

……なるほど、
アナタ達ってワタシよりワタシのことよくわかってるじゃない。
勝手にして。
…同じなんでしょ?…ワタシ達。
そうね、何はともあれ差し当たってワタシ達がやることは新しいクラン名を考えることよ。

それぞれのクランが行き先を決めた後で。
イケメンの…ライノにーさんと、クレメンティはついに結婚したのだった。
ふたりの未来には多くの困難が訪れるかもしれないけれど
取り敢えず、俺っちの魔法は必要無いようで。
どうか哀しみよりも多くの幸せに、ふたりが包まれますように。

イラスト:穀潰しどもの寄合所 さま
クラン:ジョブチェンジャーズ
***

「冒険者を辞めるために冒険者をやる」
そんなどこにも見ない目標をかかげるのは、
どこにでもいるうだつの上がらないクラン
『ジョブチェンジャーズ』
料理人になりたい粗暴な怪力娘プレーン。
アイテム学者になりたいインドア主義なグラスランナーのギシ。
吟遊詩人になりたいエルフらしからぬエルフのオルゴー。
彼女たちはそれぞれ胸に秘めたその夢を現実にするべく、今日もダンジョンに赴く。
―― そして、数年の時が流れた。

料理人 プレーン
冒険稼業で貯めに貯めたお金で、大通りの古い家屋を買い取って食堂『星三つ亭』を開く。クランの中で1番最初に夢を叶えた。
安い早い美味いの評判で、狭い食堂は連日冒険者で満席であるという。
店内で冒険者同士の諍いが起った際には、壁に飾られている女将兼料理人の彼女の斧が仲裁代わりに飛んでくるらしい。

イラスト:ジョブチェンジャーズ さま

「姉御姉御ー!!聞いてくださいよ俺の今日の冒険話!」
「お前なあ、いい加減スタークに帰れよ、ジーマ」
「いや〜、やっぱひと山当てるならアティルトかなって…あれ?姉御、これ注文したのと違う…」
「ああん?いーから食ってみろよ、コイツもぶっ飛ぶほど…美味いぜ?」

アイテム学者 ギシ
幻のアイテム『究極の腰痛薬』を見つけることは結局できなかったが、なければ作ればいいのではと思い立ち、制作チームを立ち上げ見事作り上げた。
実家の家業を継ぐ意思がない事がバレると父親からは勘当されたが、後腐れなく学者として生きていくことに。結果、クランで2番目に夢を叶えた。
ノイゼントルムの研究機関に移り住み、冒険者時代に築いたコネを駆使して、多方面の知恵を集結した新作アイテムの制作に精を出す。

イラスト:ジョブチェンジャーズ さま

「だ…ダメです先生…この魔導砲、自動照準機能が壊れちゃったみたいで…。
今日の新作砲弾テストは中止に…」
「えー、中止にしたらまた改めて来なきゃいけないじゃないっスか。
当たればいいんでしょ、よっこらしょ」
「あ…あの…距離を補正なしで………当てた?!先生なんですか今の?!」
「まー昔取った杵柄ってヤツっスよ。
いいから助手チャン、ささっとデータ取ってくんないっスかね。
僕もう研究室に帰りたいっス」

吟遊詩人 オルゴー
クランの中で一番最期に夢を叶えた。
いつも1人になれば新しいクランを探していた彼も、自身の夢を叶えるその日までクラン『ジョブチェンジャーズ』のメンバーであり続けた。
長年の猛特訓の末、音痴はいつしか普通になり、普通はやがて最上のものへと至った。
吟遊詩人になってからはアティルトを拠点として全国を旅して廻り、その歌声を、町に、孤児院に、荒野の果てに届けたという。

イラスト:ジョブチェンジャーズ さま

「はいはい、みんな集まって〜!歌のお兄さんが来たわよ〜!」
「お兄さん?ぽよぽよぽよ〜♪のおうたのお兄さん?」
「ねえねえ、今日はおじかんあるの?たくさん歌ってくれるの?」
「はは、勿論だよ。 ―― さぁ、今日は誰の歌から聴きたい?」

大通りに面したそこそこ良心的なお値段のよくある冒険者宿。
そこでのんべんだらりとたむろしていた彼女たちの姿はもう、ない。
調理場を借りて豪快に鍋を振る娘も、空き部屋に道具を並べて黙々と鑑定をしているグラスランナーも、宿の一室で机の上に開いたマイ詩集の前で頭を捻るダークエルフももういない。
全ては、過ぎ去った遠い昔の出来事だ。
いつも彼女たちが騒がしく食事を取っていた宿の食堂の片隅で、今は別の冒険者達が口々に夢を語り合っている。
1人は金を溜めてでっかい土地を買って、そこで自分だけのファームを作るんだ、と、そう言ってあどけなさの残る顔を輝かせる。
その向かい側の1人は珍しいアイテムを沢山集めてミラクで商売を始めるんだ、そしたらこんな危ない稼業はおさらばさ、とへらへら笑っている。
残りの1人は故郷セリオンの騎士になりたい、そのために認められるだけの実力を身につけたい、と真剣な眼差しを仲間へ向けた。
エールを運んできた宿屋の女将が、彼らに笑いかける。
「なんだ、お前さんたちもジョブチェンジャーズかい」

ジョブチェンジャーズ。
かつてはうだつの上がらない3人の冒険者が立ち上げた、珍妙なクランの名前。
しかし、危険な冒険を乗り越え、夢を追い、そしてついにはそれを掴んだ彼女たちの背中を
人々は見ていた。
ジョブチェンジャーズ。
それはいつしか、
「冒険者を辞めるために冒険者をやる」
そんな輝く瞳を持ったブリアティルトの夢追い人たちの呼び名となった。
(おしまい)
クラン:まふら〜と猫
***

こちらの猫達の今後は、RPで上手くまとめられる気がしないので
ざくっと書いて終わりにします☆
あまのっちのとこ遊びに行って、それぞれ冒険とか好きな事とかして、しばらくした後は……

セト→
宝物が集まったから砂漠の飼い主の所へ帰る。SRすーぱーモニャイ像!と500個くらい集まった魔石の山をもち…主と遺跡巡りとか冒険とかして、少しでも賢くたくましく育ってくれるといいですね…でも恐らくそのまま。

コルト→
弟達はきっと大丈夫と思ったら、飼い主の所に戻ってまったり生活でしょうか。
猫に戻って、日向ぼっこしながら窓の外を見て、冒険者を見かけたら、
うふふってなる生活。婚約者だよ!って血統書付の猫を紹介されて、
嫌ですわ♪とかなったり…

アズ→
もし嫌じゃなければ天野っちにアズを飼ってほし…ゴニョ わ、わんことも仲良く出来ますよ…?
かつて絆が300越えしたわんこさんがいましたよ…!でも膝はひとりじめるかもしれない…!
それがだめっぽくても、マスターに料理習ったり、強さを極める道へ!
強さがなんたるかを知り、死闘の末に隻眼になったりする!っょぃ。
クラン:ミセイコジンの民草
***

***
彼は小高い丘の上で、一人空を見上げていた。
***
生まれてきた事が罪だと言われ続けて……
故郷を出てから掴みかけた平穏も、あの風に全部流されて……
生きていていいって言ってくれた人は、次々いなくなって……
異世界に来てからは仲間を死なせない為に必死で……
あの小さな平穏の日々がずっと続いて欲しいと思ってから、
随分と時が経ってしまったような気がするな。
……俺はまた、取り戻せるかな。
もう皆いなくなったりしないかな。
自分が幸せに生きてもいいんだって、思える日が来るのかな……

こんちは! オレはメカ鈴木ディス! 貴様を喰うディス!!
***
パープル鈴木お面を被った彼は、
ヘルムお面を被った里の子供たちとごっこ遊びをしている。
「出たぞーメカ鈴木だー!」
「我らミセイコジン騎士団が成敗して切り分けてシチューにしてくれるー!」
***
甘いディス! メカ鈴木にシチューにできる部位はないディス!
絶望するがいいディス!! メカ鈴木ビーム!
***
殺傷能力の無い藍色の光を指先から出すマーリオ。
盛り上がっている彼らを、椅子に腰掛けて見守る老婦人がいた。
「異世界に来た時はどうなる事かと思ったけれど、
マーリオが楽しそうで良かったわ。
このまま人間らしい情緒を取り戻していけば、いつかきっと
呪いの印から解放される日も来るでしょう……」
***

色……微かな紫混じり。味……仄かな酸味。効果は……今のところ確認できず。
***
ミセイコジンの里には、未だまっとうに誇れる特産物というものが無い。
自分の身から取れる葉が安定供給できないのならと、
彼は薬草園で特産品にできそうな新種の開発を試みるようになった。
栽培が忙しいという理由から、見世物小屋稼業からも解放された。
しかし冒険者の仕事の方は続けている。
***
……ん、ハイナー? どうしたの……えっ、ドラゴンが出た……?
分かった、手が空いてて闘えそうな奴を連れていってバラしてくる。
ドラゴンか……肥料としてはどんな効果があるんだろう……
……おっと、そうだ。闘いの前に一杯、キメていこうかな。

ふう、いい汗かいたぁ。毛を剃るやつはなかなかいいね、
比較的ライトなお客さんにも安心してお勧めできるしさぁ。
***
彼は冒険者としての活動を続けながらも見世物小屋で、あるいは個別の客に
マニアックなショーを見せる仕事を時々やっている。
***
思う様ぶっ壊すのもスカッとして楽しいんだけど
こういう淫靡な世界が見える仕事も面白いし。
どっちもやめられないぜ、ヘヘヘ。
……あ、いらっしゃーい。見世物ですか? それとも雇用のお誘いですかー?
クラン:かげつきのクラン
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テルプ・シコラ
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アティルトにある、彼の新居にて。
仕事場を自宅近くに移したのは、丁度ふたりめの子供が生まれる頃だった。
正確にはふたりめとさんにんめ。
どうやら次は双子らしいと聞かされてすぐに、彼は現在の雇われ細工師の身から、独立を決めたのだ。
思い立ったら即行動。これは彼の長所である。……時に短所でもあるが。
まぁ今回の場合は良い選択だったと言えよう。
子育てで大変な時期に、出来るだけアノチェセルと共に居ることが出来たし、
家族との触れ合いの時間は彼の創作意欲をますます高めるものであったし。
4人めの。念願の男の子が生まれる頃には、彼の細工物はそこそこの値を付けられて、
アティルトの数件の店に並ぶ程にはなっていた。

工房はいつも歌で溢れていた。
トンテントンテンという金属音に合わせてだったり、外には聞こえぬほどの小さな鼻歌だったり、
その歌声は様々だったが、彼は自分の歌をそのままそこに残る「形」へと、形成しようとしている様に見えた。
優しく、暖かく、愛情に溢れたその作風は、彼の隣でいつも微笑む妻から、
そして家族から、もらったものなんだと、彼は語る。
願いを込めて。どうかこのうたが、貴方を幸せにしますように。
俺が優しい雨をもらったように、貴方にも、どうかあたたかな赦しが、もたらされますように。

いつか故郷の村に、寂しがりの神様の元へと還った時に、
俺達の中にあるたくさんの愛やしあわせやその他いろいろなものが
神様の心も満たせばいいと思う。
俺が幸せにしたかった全ての人の心まで、満たせばいいと思う。
それはずっと遠い先の物語だけれど。
愛する妻と、家族と、心から楽しい歌を歌い続ける。
ずっとずっと。彼のうたは、幸せに満ちているのだ。
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イラスト:かげつき

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天野輝樹
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イズレーンの地に構えた居にひとり。
暫くは神龍山に篭り、意識して自分を虐めるような修行ばかり繰り返していた天野だが、それでもまだ道は見えない。失った能力は大きく、以前のようなタンク職は難しそうで、かといって自分から攻撃を当てに行ける素早さも器用さも無く。道なき道というのは彼にとって非常に苦しいものらしく、ふと、高い空を見てため息をつく。

ただ、…昔むかし、一度失敗してしまった畑作りが、なかなか上手くいっている様だ。
以前ならば力を注げばすぐに実を結んだというのに、と、最初は四苦八苦していた天野であったが、……思い通りにならない自然の力を借りて、はじめてそれが収穫出来た時、彼は本当の大地の力というものに、触れた気がしたのだと語る。
そうやって振るう杖は、流れるように、逆らわぬように。
以前の様な無骨さと、決して折れぬ傲慢さは影を潜めて。
道無きまま、迷うように、天野輝樹は歩き出したばかりである。

ある日、小さな友と同居を、という話の流れになった。
彼が居を構えて最初に、……クラン員よりも真っ先に住所を知らせた友人は、
静かで、強くて、共に居ると落ち着いて、しかし楽しくて。
最初に、言い訳を考えた。例えば、自分にはやるべき事があるという事、いずれ道が違えるであろう事、共に在る時間が長ければ長いほど、いつか敵対した時に失うものが多い事。……そんな数々の言い訳は、彼にはもう存在しないのだ。

心のままに手を差し出した。
その時はじめて彼は。
嗚呼、自分はもう何も捨てなくて良いのだと。
小さな手を取って、少しだけ泣いたのだった。
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イラスト:かげつき

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赤坂天矢
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クランから、国を追われるような人間を出したという汚名と、それを自ら率先して止めにかかったという……名誉? が評価されたのか、あるいは単にややこしい奴はこいつにでも押し付けておけ、とでも思われたのか。
赤坂のクランには所謂「問題児」的な冒険者たちが放り込まれる事となった。

僕は今度は、可愛らしい女の子が良かったんです。むさくるしいから。
そう、しょぼくれて語る赤坂の横には、ガラの悪い、葉巻をくわえた筋肉質の男と、縦よりも横幅の方が長いのでは無いかと思うほどのぷよぷよした男だ。
また、男3人とか…

あァん? そりゃこっちのセリフだ。
何が悲しくてこんな奴らと組まなきゃいけねーんだ。この俺様が。
色っぽいねーちゃんでも、連れて来やがれってんだ
ヤニ臭い息を吐き出しながら毒付く男の名はダンテス。
赤と黒、2色に染め分けた髪型は、独特の……獣の耳の様な形で、頭の上にぴこりと揺れる。
けもみみ、だが、30代を超えたいうなればおっさん。けもみみオヤジ。
何なのだこの属性は、と眉間にシワを寄せる赤坂の横で、ぷよぷよ男がにっこりと笑う。

まぁまぁ、男でも、女でも、構わないよー?

お腹に入っちゃえば一緒だよー。
……味は大して変わらないからねぇ。
人の良さそうな笑みから、一転。口は左右に大きく裂けて、中には鋭い牙が並ぶ。
メティアという年齢不詳の男は、ひとたび戦闘になると、その大きな腹もバンダナで隠した額も、手も足も、その両目も、大きな口に変えて何もかもを飲み込んでしまうという恐ろしい男である。…何が恐ろしいって、その食欲が敵以外にも向くところだ。

あァ?
どう考えても、若い女の肉の方が美味そうだがな?

僕は、食べられれば味にはこだわらないなぁ。
……おじさんも、すっごく美味しそうだよー?

てめェこそ丸焼きにしたら美味そうな腹しやがって。 何だこの脂肪は。こんなんで動けンのかァ? メティアのたぷたぷしたお腹をぷよぷよぷよぷよと弄っている。

やーめーてーよーーー。

あ、ちょっとダンテスさん! タバコは拠点の外で吸ってくださいって言ったでしょ。
部屋が煙草臭くなるんですよ。
……いいですか? 珈琲というものは香りが生命なんです。
煙草の匂いなんかで部屋を汚さないでいただけます?

あァ? 指図すんじゃねーぞ、ガキが。リーダー面ァしやがって。 ここで一番偉いのが、誰か、教えてやろうか? あァん?

…………言うこと聞かないと!
茹で上げたパスタを、両手で抱えるほどの大皿に盛り付けて。
ごはん、抜きにしますからねっ!

…かーちゃんかよ…… 手持ちの金も無い。空腹には勝てないとばかりにげんなりした顔で葉巻をぐりぐりと消す

さ、ちゃんと手を合わせて。 食べ物に目を輝かせるメティアと、しぶしぶ従うダンテスと。

「「「 いただきます 」」」
美味そうに食事をする2人をにこにこと眺めて。
このふたりはどんな冒険をするのだろう。どんな出会いや別れがあるのだろう。
例え、いずれまた自分ひとりでここに取り残されたとしても、
そうやって変わっていく誰かを見守るのは、楽しいものだ、と。
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イラスト:かげつき

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玄関のかぼちゃは
あいかわらずこのクランに訪れる人を待っている
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おしまい