新婚宅へいらっしゃい
第五期:未来を奏でる


昼下がり、教えてもらった住所を元にドアを叩く。鞄の中にはクランから押し付けられた土産と、小さな鉢植えを抱えている
ごめんください、テルプさんとアノチェセルさんの新しいお家はこちらで合ってますか?
遊びに来ていいとのことなので、遊びに来ちゃいました。うふふ。
お土産を色々預かっていますので、お邪魔なら渡すだけでもいいんです。どうかしら?
と、声をかけつつ新居を好奇心いっぱいに見回して

わ…!
く、クレメンティ!いらっしゃい!
扉を開けるなり破顔して。来客を心から喜んでいるようだ。
えへへ!き、来てくれて本当にありがとう!嬉しい!
じゃ、邪魔だなんてとんでもないよ!あ、あがって…!
中に招き入れて。小さな間取りだが掃除はいきわたっていて綺麗に片付けられている。
小さなリビングは床に近い位置で寛ぐタイプでフロアクッションと背の低いテーブルが置いてある。
一応ソファのようなボックスクッションも置いてあるようだ。
恐らくであるが夫の生活スタイルに合わせてくれているのだろう。
す、すわって…!
い、椅子の方がよかったらダイニングの方、案内するよ!

先にお土産、出しちゃいましょうか。
ええと、こちらがフェリクスさんから。ご実家で作られたチーズですって。
その他にも杏のジャムや輸入物の砂糖菓子だとか、
「新婚割引あり」と書き足された家具のカタログを机に並べ
ふふ、皆さんまだまだあなたたちのこと祝い足りないみたいね。

お茶をカップにいれながら、次々出されるお土産にひとつひとつ嬉しそうに反応をする。
わあ…!…フェリクス、牛乳ダメなのに…わざわざ持ってきてくれたんだ…。
えへへ…あ、ありがとう!
お祝いされている、あの気持ちが蘇ってくるようで。
特に家具のカタログはかなり嬉しいようだ。
まだ新居に越してきたばかりで何かと足りてないものがあるのだろう。

あの人、加工品は大丈夫って言ってましたから本当に牛乳嫌いなのかもわかりませんね…。
ミントティーを口に含み、ここにいない吟遊詩人がくしゃみをしそうなことをつぶやく
それで、わたしからは、これを…持っていた鉢植えを少し遠慮がちに差し出す
薬用サルビアですけど、育てるかしら。いらないのならいいのよ。
でもお料理で使えますし、ハーブって虫除けになるんですよ。悪い虫がつかないように、なんてね?

クレメンティからサルビアを渡されるとぱぁ!と顔を輝かせた。
わ…!セージ…だよね?
わ、私よく使うよ!そ、そっか、育てれば買わなくていいもんね…!
…あ、ありがとう…!
わ、悪い虫…?えへへ…だ、大丈夫だよ、テルプの事、信じてるもの。
自分の事だと思ってないぞ!

その後鉢植えに喜ぶ様子を見て、ホッと安心したようだ
うふふ、そうよ。強い植物だから、あまり細かく手入れもする必要ないですからね。
ついでに言えばセージには幸せな家庭を示す言葉が意味づけられているんです。
…受け取ってもらえてよかったわ。有効に活用して下さいね。

うん、ほ、ほんとにありがとう!
もう一度お礼を伝えると、にっこりと微笑んだ。
…く、クレメンティはどう?あ、あれから元気にしてる?
元気にしているからこそ遊びに来てくれているのだろうが、あまり突っ込んだ事も今はいえずに無難に尋ねる。

あら、わたしのお話ですか?
元気も元気…ですけど、施療院の仕事を辞めたせいか暇だなって思うことが多くなりましたね。
引越しの準備とか色々やることはあるんですけど、どうにも。と、苦笑して
まだ引越し先も決まってないんです。最初はオーラムかなって思ってたんですけど、
最近はイズレーンの方が薬を作るには向いているのかな、と思い始めて…
温泉よかったですし……。
話が脱線している…

そ、そっか…。
い、今まで忙しかった分、ゆ、ゆっくりしてて、いいと思う。
く、クレメンティは頑張り屋さんだもん…。
うん、わ、私もイズレーン、いいとおもう…!
神龍山に、登ったとき、め、珍しい薬草もいっぱい生えてたよ…。
あ、あそこで暮らすのは、結構、きついかもだけど…そこまででなくても、イズレーンは、いいと思う。
ひ、引越し決まったら、教えてね…!あ、遊びに行くから…!

いいアイデアだ、と手を合わせて そうです、神龍山もいいところですね。
あんな神秘的なところじゃありませんけど、山には慣れている自負もありますし。
候補に入れておこうかしら。うふふ、ありがとうね。
その言葉の裏には「ひとりでひっそりと死ぬには丁度良い」という感情が混じっていたが、気づかれるわけにはいかないのだ
って、わたしばかり喋っててもあれですよね。アノチェセルさんは最近どうですか?
うふふ、前言った通り、惚気話をいっぱい聞かせて欲しいわ。

…へ?!の、惚気…話?うんと…うんと…。
な、何を話せばいいんだろうと、その迷いは話す事がないのではない、話す事が多すぎるのだ。
あ、あのね…。あ、朝起きても、ご、ご飯食べても、お、お洗濯してても、お、お風呂入っても…よる…眠る時も…ね…。
あ、愛してる人が、隣にいるって、す、凄く、凄く素敵…なんだ…。
わ、私、ま、毎日、どきどきしちゃって、し、心臓…もたないよ…。
思い出してかあぁぁと赤くなると俯いて。
想像以上に幸せで、ちょっぴり刺激的な生活のようだ。
彼女が慣れる日は来るのだろうか。
も、もし、動悸、このまま止まらなかったら、お、お薬…もらおうかな…。

いかにも語りつくせないという風で、その様子が愛らしく自然と顔も緩む
あらあら、お薬が必要なほどですか?
でもわたし、恋の病に効くものは持っていなくてよ。…お幸せそうで何よりです。

だ、だって…ほ、ほんとに、毎日どきどきするんだもの…。
両手をほっぺに当てて熱い頬を冷まそうと。
で、でも、そんなお薬あったら、く、クレメンティが真っ先に使ってるよね…。
ある人と一緒にいるときのクレメンティは、どんなお薬もきっと効かないんだろなと、そう思った

そうなんです?わたしなんか、自分の部屋だけでも手一杯ですよ。
孤児院での苦労が実になって、報われて。大変だったでしょうが、
あなたの今のあり方を見れば素敵なお家で育ったとわかりますよ。
アノチェセルさんみたいな甲斐甲斐しい奥様を持てて、テルプさんもさぞ嬉しいでしょうね。

噂をすれば影、とでも言うのだろうか。
丁度外から戻ってきたテルプの足音に、きっとアノチェセルが気が付くだろう。
ふーーー、ただいまー。
後ろで束ねていた髪を解きながら、扉を開ける。
ん、あれ、……クレメンティ、じゃん。いらっしゃい。

立ち上がる彼女にさすがの耳の良さだと感心して
テルプさん、噂をすれば。お邪魔しています。
大荷物で上がり込んですみませんね。夕方には帰りますので、それまでご辛抱ください。
くすくすと夫婦の時間を茶化すように挨拶をして

わー、何か色々! もらってる! ありがとねー!
そう言いながら、あちこち煤で汚れた服のまま、早速物色している。
こちらに越してきてからは、街の大きな金属工房に出入りしているらしい。
定番の品を作成しながら、空いた時間にオリジナルのアクセサリなどを作る。
最近やっと、片隅に自分の作品を置いてもらえるようになったのだ、などと、
仕事の話になれば自慢気に語るだろう。

まあ、お仕事を…歌ではなく工芸で?手に職をいくつも持たれているのね! 失礼なお話をしますけど、あなたってそういうこつこつ働くタイプには思えなかったので 少し意外です。うふふ、やっぱり彼女のため?恋は人を変えますね。

いやほんとに。こつこつ、なんて、自分でもまったく想像してなかったよ。
や、でも、……ちゃんと、地面に立っている感じがして、いいもんだなって思うよ。
そういう意味では、彼女のためっていうより、……彼女のおかげ、だな。
鼻の頭をぽりぽりと掻きながら、照れたように笑った。
あ、でも時々は、俺っちも勝手に広場とかで歌ってるんだぜ。

そういや、ねーさんトコは、クラン解散だってねぇ…。
一緒に冒険に行けないのは残念だけど……、フェリはどーすんだろ。
いよいよ歌一本で、やって行くのかな。
残念という言葉とは裏腹に、わくわく、きらきらした目で。

フェリクスさん…はそうですね、また歌と楽器で国を巡る生活になるんじゃないでしょうか。 アティルトに来た時には、アノチェセルさんとお仕事でご一緒することもあるでしょうね。 ふふ、世に聞く歌姫と親交があるだなんて、あの人も光栄でしょう。 …何か失礼なことを言ってましたら遠慮なく相談して下さいよ。シメます。

クレメンティとテルプが話している間に、アノチェセルは彼に冷たいお茶を淹れてくれるだろう。
…フェリクスなら、きっと歌だけでも十分、やっていけるよね…!
…い、一緒にお仕事できたらいいなあ…。
テルプは食べていく職業に歌を選ばなかったが、彼女は依頼されれば仕事として酒場に出向くらしい。
「アティルトの歌姫」などという、彼女からしたら恐れ多い通り名をもらっているのだそうで。
その噂から依頼がくるようだ。そんな話をして

いいね、フェリがこっち来たら、是非俺っちも一緒に、歌いたいよ。
アティルトに来たら絶対知らせろって言っておいてね。俺らン家に寄れとは言わないからさぁ。
新婚夫婦の家に、など。きっと死んでしまう。
まぁその姿を見ているのも少し面白さはあったりするのだが。

そうだ…テルプさん。少し、込み入ったお話をしたいのですけど。ご迷惑ですよね。
ダメもとで頼みたいことが、とアノチェセルの視線を気にしている。
断られても特に気にせず諦めるだろう

込み入った話をしたいというクレメンティの視線に気付いて
あ、わ、私、クレメンティのお茶淹れなおしてくる…!
こっそり気を遣って席を立った。
テルプが断ろうと話をしようとかかわりなく、ひとまずキッチンへと向かったようだ。

と、改まったようなクレメンティの言葉に。
……ん? 話? 俺っちに?
なんだろ。……何か困った事でもあった?
居住まいを正して、手に持っていたグラスを置いた。

厨房にいるであろうアノチェセルを申し訳なさそうに案じて
彼女に気を遣わせてしまったみたい。ごめんなさいね、すぐ済みます。確認だけですから…。
一呼吸置いて、真剣な表情で口を開く
…あなたの、忘れさせる歌。あれはまだできますか。
もしかしたら、私の記憶の一部を消してもらうようお願いするかもしれません。
今後の風向き次第、ではありますけど…。可能性は、複数想定するべきだと思って。
結婚式の時のフェリクスさんの歌とか、あなたの言葉を聞く限り、
もうそういうことに歌を使われるのは嫌かも、と、存じ上げてはいるんですが…、
……とにかく、今は。
私に頼まれてできるかできないかだけ、教えてもらえませんでしょうか。

───……。
少し、考えるような表情で。クレメンティが何か言葉を続けようとする前に、顔を上げて口を開く。
俺が、歌で食べて行かないと決めているのは…、
自分の幸せの為にね、歌を歌うと、俺っち駄目なんだ。
もっと、もっと、って。求めてしまう。俺は、欲深いから。
だけどね、この歌が…、忘却が、誰かを幸せにする事、俺は知ってるよ。
よく知ってる。俺がアノチェと出会うために、ここまで来れたのも、ぜんぶ。
それが無ければ、俺っち、きっとここに居なかったよ。

だから。貴方が望むなら。……いいよ?
静かに、低い声で。優しく微笑んだ。
ただ、条件。出していいかな。
「決して、それが終わりだと、思わないこと」
これは、この忘却は、もっと先へ歩むため、進むための、一休みだ。
あと、もう一点。
魔法を、かける時には、……アノチェセルも一緒に、歌うよ。
俺と彼女は、一心同体だから、ね。
それで、よければ、……いいよ。

そう…、そう。わかりました。条件を呑みましょう。
もとより、未来のための決断のつもりでした。
それに必ず忘れなければならないわけではありません。
彼女が…一緒というのは、少し心苦しいのですけれど。
それも、そもそも必要な事態に陥らなければいいだけのこと。
…ふふ、ごめんなさい、何が何だかわかりませんよね。でもまだ言いたくないんです。
これ、保険なんですよ。
もし最上の道が手に入らなかった時にわたしとあのひとがわらえるように、っていう。
なるべく、あなたたちの手助けを得なくても大丈夫なように、努力は尽くす所存よ。
そう宣言する頃にはいつもの笑顔を浮かべて

イラスト:かげつき

そ。どうしようもなくなったら、ね。おいで。
だけど貴女は、一番良い場所を、良い方法で目指せる人だと思うから、
ちゃんと未来を、見ているっていうのなら……、心配はしてないよ。
にっこりと、笑う。

うふふ、すっかり長居してしまいました。
あと一杯だけ頂いたら、お暇しましょうかね。邪魔でしょ?
今日は来てよかったわ。素敵なお家だし、何よりお二人が幸せそうで…
フェリクスさんにもたくさん土産話をしてあげましょう。多分死にますが。

話がある程度終わる頃にお茶を淹れなおして戻ってくる。
何の話かは、聞かなかった。
耳のいい彼女には微かに聞こえていたかもしれないけれど。
うん、フェリクスに、よ、よろしくいっておいてね!
土産話はともかくとして。

フェリクスなぁ…。血反吐はく程ダメージ受けなくてもいいのになぁ。 何かこう、聞いちゃいけない領域っぽくて踏み込めない闇だわぁ。 まぁ戻ったら、思う存分、話してやってよ。けらけらと笑っている。

ぼちぼち帰り支度をしようかというあたりで、「ああ!」と何かを思い出したようだ
そうですそうです、お聞きしようと思ってたんですけどすっかり忘れていました!
…お、お二人とも、お子様はいつごろまでとかの予定とか、
妊娠に関する質問とか、あります……?
ないなら別に、その、馬に蹴られたくもないので、いいのですけど、一応医者としてですね??

クレメンティが突然切り出した話に虚をつかれ。
……子供?
俺っち、出来ることならすぐにでも欲しいくらいなんだけど、
こればっかりは授かりものだしなぁ。
ノチェ、どう? どう思う?

へ!?に、妊娠…!?
テルプにも話を振られてうんうんと考える。
わ、私も、す、すぐにでも、欲しいよ。赤ちゃん。
はやく…築きたい…。
あ、あのね、…わ、私、だ、大体でしか、その、周期…し、しらないから…。
さ、最近、ね、そ、その、遅れてたりするし…。
そ、その、出来やすい、日、とか…。
そ、その…えと…。こ、こうしたほうが、出来るって、いうの、知ってるなら…しりたい…。
もじもじと女性特有の話を夫の前でするのは恥ずかしいようで、顔を赤らめながら尋ねた。

す、すぐにでも……本当にご夫婦になられたのねえ…。
今更実感したようで勝手にため息などついて、新妻の相談に乗る
ええとね、旦那様も知っておくべきだとわたしは思うので言いますけど、それはですね…
*色々説明をしたようですが内容は省略させていただきます*
…ともあれ、テルプさんが言うように授かりものですし。
人事を尽くして天命を待つしかできないものです。お若いのだし焦ることはないわ。
アティルトで有名な産婆さんを教えておくので、と少し街外れの住所を書いて渡そうと

……しゅーき?
基本知識からあまり無いらしく、クレメンティの説明にいちいち驚いたり固まったりしている。
ほ、ほぇー。女体の神秘……。
ありがと。勉強に、なったよ。あー、えと。
俺っちホント知らない事多くて、知らないうちにアノチェに大変な事押し付けてたりとか
きっとそーいう事いっぱいあると思うんだよね。
んだから、是非いろいろ、教えてください。……よろしくね!
クレメンティを見る目に、尊敬の眼差しが混じっている気がする!

クレメンティが語りだすと物凄く真剣に耳を傾けた。
メモまで取り出している!
…そ、そっかぁ…。
あ、ありがとう、さ、さすがお医者さんだね…!
す、凄く勉強になったよ…。
…お、おばさんもきっと、教えてくれようとしてくれたんだろうけど…。
わ、私がもう少し大人になったらって、思ってた…みたいで…。
わ、私も、お、おばさんにどう聞いたらいいのかなって、迷ってたの。
だ、だから、聞けてよかった…!
住所の書かれたメモを受け取って
ありがとう!えへへ、大事にとっておくね!

残っていたお茶を呷り、席を立つ
さて、それでは帰りますね。
わたし、まだしばらくはセリオンで暮らしてますけど引越し先が決まったらご連絡します。
フェリクスさんにも色々言っておきますね、うふふ。
ごきげんよう、早く子宝に恵まれることをお祈りしておきますね。

帰り支度をするクレメンティを玄関まで見送る。
…ありがとう、あ、遊びに来てくれて。
ほ、ほんとうに、嬉しかった…。
うん!ひ、引越し先決まったら連絡、まってるね!
き、気をつけて帰ってね!
姿が見えなくなるまで手を振った。

んじゃ、また。みんなによろしくー!
おみやげホントにありがと! じゃーねー♪
アノチェセルの横で、大きく手を振った。
-------------

どうも、こんにちはー。ミセイコジンのランドです。
こちらテルプさんとアノチェセルさんの御宅でしょうかー?
***
(あー、こんなまともなお客人の振る舞いなんてかなぐり捨てて密やかに侵入したいなァー、こっそり部屋に入って色々探したいなァア。個室に夜の日記とか置いてないかなー? あと道具とか。いけないいけない、僕はただのお客人。興奮を鎮めないとね、ヘヘヘヘ)
本心はまさしくケダモノではあるが、一応はそれを抑え込んでおくつもりらしい。
半獣人はにこやかな様子で何やら包みを抱えている。
***

さて、お邪魔しますよー。
この間は上等なタオルをどうもありがとうございました。
だからというわけでもないんですけど、ワタシらからも
お土産を持ってきたんです。邪魔なようなら燃やして貰って構いませんからね。
***
包みを適当な場所で開くと、いくつかの品物が表れた。
手書きのメモによる簡単な解説も添えてあるようだ。
***

ふぅ……あ、いえいえ。すみませんねー、ちょっと
思った以上に興奮が収まらな……じゃなくて、今日は調子が悪いみたいで。
長居してるうちに悪化しても良くないですし(ていうか絶対激化する、あー堪んない)、
これだけ置いて失礼させて頂きますね。
再三言いますけど邪魔なようならどうぞ遠慮なく燃やして下さいね。
では少々慌しいですけど僕はこれで。
◆置いていかれた土産物とメモの解説
・蜜シロップの瓶
「見た目は粘性のある深い黄金色の液体だけど特に人体に影響はないよ。爽やかな甘い味の蜜だから パンのお供や菓子の材料に使えると思う」
・粉末調味料の瓶
「海魚と海草をベースに、微かなキノコの風味も加えてあるダシです。結構塩気があるんで気をつけてください(お湯に溶くと簡易スープとして飲めます)」
・小さな白い石
「太陽の光を吸収する石だよ! くぼみに指を当てると、溜めた光が無くなるまでほのかに光るんだー。途中で止めたい時は同じように指を当ててね!」
・手錠とその鍵、縄、首輪
「家に入ってきた不審者を捕まえた時や、ちょっと背徳を感じてみたい夜の時間などにお使い下さい」

その場でお土産を確認しようとすると、もう出ていこうとするランドに
あ、もういっちゃうの…?
え?体調、わ、悪いの?大丈夫?や、休んでいく?
その誘いに乗ったらきっとランドは最後だろう。
慌ただしく出て行くランドを、ぽかん、としながらも見送って。
キッチンに包みを置くと簡単な解説を読み始めた。
・蜜シロップの瓶
あ、ちょうど、は、はちみつ切らしてたんだ…!
えへへ、あ、明日の朝、出してみよう…!
・粉末調味料の瓶
わあ、簡易スープになるんだ…!
あ、で、でも塩気もあるって…。
お、お魚料理するとき、つ、使ってみようかなあ…。
・小さな白い石
えへへ…これ、テルプ好きそう…!
よろこぶだろうな…。
・手錠とその鍵、縄、首輪
………。
つ、捕まえるのは、わかるけど…。
よ、夜の時間…って…。え…ど、どうやってこれ…え?
動揺している!
ど、どうしよう…、て、テルプに聞いたほうがいいのかな…。
その道具がテルプの懐に入ったかどうか、そして使われたかどうかは二人のみぞ知る。
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こんにちは、改めてご結婚おめでとうなんだよ!
式のときにはきちんとお祝いを用意できなかったから…
今更になっちゃったけど、持ってきちゃった
すっと差し出したのは少し重さのある箱…中には鋳鉄の鍋が入っている
4人分の煮物とかに使うのにちょうどいいサイズのおなべだよ。
二人分サイズも考えたんだけど…少し大きめが使いやすいよね

あ…!い、いらっしゃい!シアン!
えへへ、式、き、来てくれただけでも嬉しいんだよ…!
こ、こっちこそ、ありがとう!
わ、お、お祝いまで…!
な、なんだか嬉しくて照れくさいね…!
な、なんだろう…。よ、いしょ…。
重い箱を開ければとても良さそうな鍋だ。
大きめ…4人分というのがポイント高かったようで。
わ、わ、お鍋だ!あ、ありがとう!お、大きいの欲しかったんだ…!
こ、子供ができること、考えたら大きめのほうがいいもの…!
えへへ、ありがとう!
すごく喜んでいる!

それからと、リボンでくるりと飾られた大き目の軽い包みを差し出して
うんとね、これは枕なんだって…ルネッタがどうしてもって。
どうして2つじゃないのかは分からないんだけど…
ルネッタ曰く「これは枕としては使わないからいいんです」って。
枕なのになぁ…あ、でもすごくいい枕だよ!
カバーはルネッタの手作りだけど、手触りがよくてしっかりした布だから
お洗濯しても質は落ちないし…カバーは二種類用意してあるから洗い替えも安心だね。

包みを開ければそれは「Yes/No枕」だと分かるだろう…その意味を知るかは別として。
なお、替えカバーのほうは両面に「Yes」と記されている。
あ、あとね「もしかしたら不用かもしれません」っていってた…。
んもぅ…どうしてそんなの用意するんだろう。
なんだかごめんね。
でもどうしてもらしいし使いやすい枕はあって困らないだろうから、ね。

出てきた「Yes/No枕」と…替えの「Yes/Yes枕」に暫し固まっている!
あ…。うん…。
えと…。こ、これ…聞いたこと…あるよ。
だ、旦那さんへの、意思表示、なんだって…。
ど、どうしよう…こ、これ使ったら…て、テルプきっと…。の、Noとか出せないよ…。
悶々シュウシュウ顔から湯気を出して想像している。
で、でもた、確かにすごくいい枕だよ…!
あ、ありがとう!か、カバーは…えと、つ、使いたくなったら…使うね…。

部屋をふんわりと見渡して
素敵な…温かい雰囲気のおうちで離れがたいけど、そろそろ帰るね。
これからも毎日ふたりで仲良く過ごしてね…!
一礼して、どこかうれしそうな様子で帰っていった。

あ、もう行っちゃうの?
せ、せっかく持ってきてくれたのに、お、お茶も持て成せなくてごめんね…!
こ、今度はゆっくりみんなで遊びに来て…!
ど、ドーラの先生が二人、つ、つきっきりで歌を教えられるよ…って。
えへへ…。
ほ、本当にありがとう、気をつけて帰ってね…!
Yes/No枕を抱えたまま手を振って見送る。
その姿を旦那様に見られなければいいのだが。
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失礼するよ。改めて、お祝いの挨拶に。
結婚おめでとう。
それと、式のときは、ろくに準備ができなかったんでお祝いお品を。
うちの問題j・・・もとい、クランメンバーが、持ってけって言うんでな。
そういうと、50cmほどの大きさの甘鯛を差し出した。
・・・正直2人で食うにはちょっとでかいんだけど。
まあ、刺身だけじゃなくて、焼き物、鯛めし、色々使えるし、
縁起物だから受け取ってもらえると助かるよ。

あ!こ、こんにちは、くじら!
えへへ、あ、ありがとう…!
そ、そんな、来てくれただけで嬉しいのに…。
と、照れていると大きな鯛を差し出される。
…わ!お、おっきい…!
わあ、い、いろんな料理できちゃう…!
あ、ありがとう…!
う、嬉しい!て、テルプも喜ぶよ…!
わ、私はもう、あまり冒険には出られないけど、よ、よかったらアルバとまた一緒に冒険して…あげてもらえると、うれしいな。